
消費機器の動作原理を支える「燃焼」を扱う章です。ガスの性質と比重、理論空気量・燃焼排ガス、発熱量(LHV/HHV)、ノズル噴出量とウォッベ指数、着火温度・燃焼範囲・燃焼速度、伝熱、熱効率、燃焼方式の分類までを学びます。
乙種・甲種兼用 / 全12節 / 学習目安: 30〜60分
💡 このページの読み方
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📍 はじめに
消費機器(コンロ・湯沸器・ふろがま等)が安全かつ効率よく動くためには、ガスがどう燃えるかの基本を押さえる必要があります。この章では、燃焼の物理化学を消費機器の文脈で再整理します。
📚 テキスト解説
各節は次の構成で進みます。
– 🎯 一言で
– 📖 解説(乙種ベース)
– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)
– ⚡ 焦点ポイント
– 📝 過去問のひっかけ例
📑 この章の目次(全12節)
1-1. ガスの性質と比重
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
都市ガスの成分・比重・発熱量の基本値
📖 解説(乙種ベース)
ヘリウム風船は手を離すと天井に貼りつき、水を入れた風船は床に落ちる。ガスも同じで、空気より軽いか重いかで、漏れたときの居場所が変わる。その軽重を表す物差しが比重だ。都市ガスの基本値は、まずここから押さえたい。
現在の都市ガスは13Aと12Aの2種類に統一されている(2010年3月)。ではPA13Aはどうか。PA13Aガス(プロパン・エアー13Aガス)だけは比重が1より大きい。名前が13Aと似ているだけに、ここが最頻出のひっかけになる。
| ガス | 比重 | 発熱量 | 空気中での居場所 |
|---|---|---|---|
| 13A | 0.64 | 45.0 MJ/m³N | 空気より軽く天井側 |
| 12A | 0.67 | 41.9 MJ/m³N | 空気より軽く天井側 |
| PA13A | 1.35(1より大) | 約63 MJ/m³N | 空気より重く床側 |
比重の値は空気を基準にした割り算から出る。メタンCH₄の比重なら、分子量16÷空気の質量28.8=0.56。空気より軽いという結論が、計算からもそのまま出てくる。
この数値は暗記のためだけのものではない。ガスの比重はノズルからの噴出量に大きく影響する。のちの節で扱う噴出量の式に、この比重がそのまま入ってくる。
🟦 甲種プラスα
甲種では「ガスの性質と比重」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
ガスの比重と滞留位置(空気=1を境に上か下か)⚡ 焦点ポイント
比重は空気を1とした相対値。比重1より大は空気より重くなり滞留しやすい(LP系)。プロパン・ブタンを空気で希釈したPA13Aは比重1より大。13A・12Aは比重1より小(軽い)。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「PA13Aの比重は1より小さい」→×(1より大きい)。「比重が大きいほど噴出量は多い」→×(反比例)。
1-2. ガスの燃焼と理論空気量
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
完全燃焼・不完全燃焼・理論空気量・空気比・酸素当量
📖 解説(乙種ベース)
会議の資料を出席予定の人数ぴったりで刷ると、たいてい足りなくなる。燃焼の空気も同じで、理論上ちょうどの量では燃え残る。ガスの燃焼は可燃成分が酸素と結合する酸化反応(発熱反応)であり、酸素が足りるかどうかが結果を分ける。
燃焼反応が最後まで完結した状態が完全燃焼。空気不足等で反応途中に中間生成物(一酸化炭素等)を発生する状態が不完全燃焼だ。中間生成物をCO₂と思い込むと選択肢に足をすくわれる。生じるのは一酸化炭素等——酸素が足りず、燃え切れなかった証拠である。
ここが急所だ。理論空気量はあくまで理論上の最小量で、実際には20〜40%の過剰空気が必要になる(理論空気量だけでは完全燃焼不可)。その“多めの度合い”を数値にしたのが空気比である。
空気ではなく酸素だけを数えたものが酸素当量、すなわちガス1m³Nを完全燃焼させるのに必要な酸素量だ。値は燃焼式のO₂係数がそのまま教えてくれる。CH₄+2O₂→CO₂+2H₂O だからメタンCH₄の酸素当量は2 m³N/m³N。同じ読み方をすれば、C₃H₈+5O₂→3CO₂+4H₂O からも必要な酸素が読み取れる。
理論空気量と過剰空気(空気比の構成)⚡ 焦点ポイント
過剰空気があっても完全燃焼すれば排ガスにCOは含まれない。空気比>1のとき:過剰空気あり(完全燃焼に向かう)。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「理論空気量だけで完全燃焼できる」→×(20〜40%の過剰空気が必要)。「不完全燃焼の中間生成物はCO₂」→×(一酸化炭素CO等)。
1-3. 燃焼排ガス
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
理論燃焼排ガス量・湿り排ガス・乾き排ガスの定義
📖 解説(乙種ベース)
洗濯物の重さは、濡れたまま量るか乾かしてから量るかで変わる。燃焼排ガスもまったく同じで、水分を含めて数えるか除いて数えるかで量が変わる。この数え方の違いが、そのまま用語の違いになっている。
基準になるのが理論燃焼排ガス量(理論排ガス量)で、理論空気量と混合して燃焼した生成物をいう。成分は3つある。①燃焼により生成した炭酸ガスと水蒸気、②都市ガス中の不燃成分、③供給空気中の窒素だ。燃えていない不燃成分や窒素まで数に入れる点に注意したい。
では実際の燃焼ではどうなるか。過剰空気(20〜40%)が入るため、排ガスには燃焼に使われなかった酸素も含まれる。理論の状態より成分が1つ増える、と押さえればよい。
乾き燃焼排ガス量 — 燃焼による水蒸気及び空気中の湿分を除いたもの
「乾き排ガスには水蒸気が含まれる」という選択肢が最頻出だが、除いたものが乾きなので誤りである。乾き<湿りという包含関係で覚えれば取り違えない。
成分の有無は燃料でも変わる。水素を燃焼させた場合、水蒸気は発生するが二酸化炭素は発生しない。炭素を持たないからだ。逆に炭化水素の燃焼ガス中には必ず二酸化炭素と水蒸気が含まれる。
燃焼排ガスの構成(湿り排ガスと乾き排ガス)⚡ 焦点ポイント
乾き排ガスは湿り排ガスから水分を除いたもの(乾き<湿り)。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「乾き排ガスには水蒸気が含まれる」→×(除いたもの)。「水素燃焼でCO₂発生」→×(H₂Oのみ発生)。
1-4. 発熱量(総発熱量と真発熱量)
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
総発熱量・真発熱量・潜熱の関係
📖 解説(乙種ベース)
同じ商品でも、税込表示と税抜表示では数字が違う。ガスの発熱量にも表示が2つあり、どちらを指しているかで値が変わる。発熱量とは、標準状態のガス1m³Nを完全燃焼した時に発生する熱量(MJ/m³N)のことだ。
違いを生むのは、燃焼で生じた水蒸気の扱いである。真発熱量(低発熱量)は、燃焼で発生する熱量から水蒸気の持つ熱量(潜熱)を引いたもの。総発熱量(高発熱量)は、水蒸気が凝縮して水に戻ると仮定してその潜熱を加えたものだ。
足し算の形を見れば、大小関係は考えるまでもない。炭化水素を含むガスの総発熱量は真発熱量より大きい。帯の全体が総発熱量、潜熱を差し引いた残りが真発熱量——この絵で固定しておきたい。
使い分けも問われる。供給ガスの発熱量は一般に総発熱量で表す(真発熱量より大きい)。「供給ガスは真発熱量で表す」「総発熱量のほうが小さい」という逆転が、出題者の常套手段である。
総発熱量=真発熱量+潜熱の関係⚡ 焦点ポイント
総発熱量基準の熱効率<真発熱量基準の熱効率(分母が大きいため)。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 「供給ガスの発熱量は真発熱量で表す」→×(総発熱量)。「総発熱量は真発熱量より小さい」→×(大きい)。
1-5. ノズル噴出量とインプット・ウォッベ指数
重要度: ★ 乙A / 甲A
🎯 一言で
ノズル噴出量式Q=kD²√(P/d)、インプットI=Q×H、ウォッベ指数WI=H/√d
📖 解説(乙種ベース)
霧吹きは、口を細くするほど霧が細かくなり、押す力を強めるほど勢いが増す。ガス機器のノズルも同じ理屈で、どれだけのガスが出るかは口径と圧力で決まる。その関係を表したのがノズル噴出量の式だ。
式の形から3つの関係が読み取れる。噴出量はノズル口径の2乗に比例、ガス圧力の平方根に比例、ガス比重の平方根に反比例する。比重は分母の平方根の中にいる——「比重に比例する」と書かれていたら、その時点で誤りだ。
ただし機器の火力を決めるのは流量そのものではない。流量と発熱量の積、すなわちインプット(ガス機器が単位時間に消費する熱量)である。式で追うと I=Q×H=kD²√P·(H/√d)=kD²√P·WI となり、末尾に現れた H/√d のかたまりがウォッベ指数だ。
だからWIの等しいガス同士は、同じ機器に同じ圧力で入れれば同じ火力になる。ウォッベ指数がガスの互換性判定に使われるのはこのためだ。逆に、供給ガスの圧力や組成が変化するとガス機器のインプットも変化する。
ノズル噴出量とウォッベ指数⚡ 焦点ポイント
WIが大きい→インプット大(同一P・Dでも多くの熱を供給)。ウォッベ指数はガスの互換性判定に使用。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「ノズル噴出量はガス比重に比例する」→×(比重の平方根に反比例)。「インプットはウォッベ指数の平方根に比例」→×(WIに比例)。
1-6. 着火温度と火炎温度
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
着火温度の数値・メタンの特異性・理論火炎温度と実際の火炎温度
📖 解説(乙種ベース)
火を近づけても、温度が足りなければ燃え始めない。着火温度とは、ガスが酸素と接触すると同時に、反応が起こる最低温度のことだ。供給ガスの着火温度は空気中で550〜600℃——まずこの幅を基準として持っておきたい。
ガス別の値は表で押さえる。空気中と酸素中を並べて見ると、1つだけ様子の違うガスがあることに気づくはずだ。
炎の最高温度の位置と、理論火炎温度・実際の火炎温度の差| ガス | 着火温度(空気中/酸素中) |
|---|---|
| 水素 | 530/450℃ |
| メタン | 645/645℃ |
| プロパン | 510/490℃ |
| ブタン | 490/460℃ |
種明かしをしよう。他のガスは酸素中の方が20〜40℃低いのに、メタンは空気中と酸素中で着火温度が変わらない(645℃)。声援がどれだけ増えても記録の変わらない選手のようなもので、この特異性がそのまま出題の的になる。しかも燃焼ガスの中でメタンの着火温度が一番高い。
燃えたあとの温度にも2種類ある。理論火炎温度とは、ガスが理論空気量の空気と混合し、熱が全て外部に放散せず燃焼生成物だけを加熱するとした時の温度だ。現実の炎は放射・伝導により熱が逃げるため、実際の火炎温度は理論火炎温度より低い。
実測値も覚えておきたい。テストガス(メタン90%・ブタン10%)の炎の最高温度は約1,400℃で、位置は内炎のわずか上方である。
⚡ 焦点ポイント
着火温度は発生熱量と放散熱量の平衡で決まる。発生熱量<放散熱量の場合は燃焼継続しない。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「メタンの着火温度は酸素中で低くなる」→×(645℃で変わらない)。「実際の火炎温度は理論火炎温度より高い」→×(低い)。
1-7. 燃焼範囲(爆発範囲)とル・シャトリエの式
💡 図の見方:図の見方:テストガス(メタン90%・ブタン10%)の炎で最高温度が出るのは内炎のわずか上方で約1,400℃、という位置と数値を左の炎の断面で示した図です。右の2本の棒は、熱が外部に逃げない前提で計算した理論火炎温度に対し、放射・伝導で熱が逃げる実際の火炎温度は必ず低くなることを高さで表しているので、「実際の方が高い」という選択肢はここで切れます。
重要度: ★ 乙A / 甲A
🎯 一言で
燃焼範囲の数値・ル・シャトリエの式・温度/圧力/不活性ガスの影響
📖 解説(乙種ベース)
味噌汁は、味噌が少なすぎても多すぎても成立しない。ガスと空気の混合も同じで、薄すぎれば火はつかず、濃すぎても燃えない。燃焼範囲(爆発範囲)とは、ガスと空気の混合割合のうち燃焼が起こる範囲であり、下限と上限で表す。範囲の外側では、火種があっても燃えない。
| ガス | 燃焼範囲(空気中の濃度) |
|---|---|
| 水素 | 4.0〜75.0% |
| メタン | 5.0〜15.0% |
| プロパン | 2.1〜9.5% |
| ブタン | 1.6〜8.4% |
混合ガスの燃焼限界は、成分ごとの限界から計算で出せる。使うのがル・シャトリエの式だ。
範囲は固定値ではなく、条件で伸び縮みする。温度が上昇すると燃焼範囲が広がる(下限↓上限↑)。圧力が高い場合も燃焼範囲が広がる。「温度上昇で狭まる」という逆向きの記述が最頻出のひっかけである。
逆に狭める働きをするのが不活性ガスだ。不活性ガス(CO₂・N₂・H₂O等)を混合すると燃焼範囲が狭くなる。中でもCO₂はH₂OやN₂に比べて燃焼範囲を狭くする効果が大きい。効き方の順序は熱の吸いやすさで決まり、比熱の大きい不活性ガスほど効果大となる。
狭まり方には偏りがある。不活性ガス混合時、燃焼下限はあまり影響を受けないが上限は著しく低下する。両端が同じように縮むと思い込むと、この非対称で取りこぼす。
燃焼範囲の帯グラフ⚡ 焦点ポイント
燃焼範囲はガスの種類・温度・圧力・混合不活性ガスの種類と量で変わる。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「温度上昇で燃焼範囲が狭まる」→×(広がる)。「N₂よりCO₂の方が燃焼範囲を狭くする効果が大きい」→○。「圧力一定でも温度上昇で下限も上限も広がる」→○。
1-8. 燃焼速度と最大燃焼速度
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
燃焼速度の定義・最大燃焼速度・MCP・各ガスの比較
📖 解説(乙種ベース)
行列の先頭がどれだけ速く進むかを想像してほしい。炎にも同じような進行の速さがある。燃焼速度とは、燃焼が継続する際、火炎が火炎面に直角な方向に未燃焼混合ガスの方へ移動する速度をいう。火がまだ燃えていないガスを食べ進む速さだ。
この速度は一定ではない。燃焼速度はガスの成分・空気との混合割合・混合ガスの温度・圧力等によって異なる。中でも温度の効きは覚えやすく、温度が高くなるほど燃焼速度は速くなる。
では混合割合を変えていくとどうなるか。一次空気率がある値のときに燃焼速度は最大となり、この値を最大燃焼速度という。最大燃焼速度はガス固有の物性値であり、山の頂上の位置も高さもガスごとに決まっている。
大きさの順位もそのまま問われる。最大燃焼速度は 水素>CO>エチレン>エタン>プロパン>ブタン>メタン の順だ。都市ガスの主成分であるメタンが最下位という点が急所で、プロパンの最大燃焼速度はメタンより大きい。
さらに遅くする方法もある。メタンに不活性ガス(窒素・炭酸ガス)を混合すると最大燃焼速度はメタンより小さくなる。燃えない相手が混ざれば、火の進みは鈍る。
この物性値を制度に載せたものがMCPである。燃焼速度指数ともいい、ガス事業法でガスの組成から計算で求める最大燃焼速度の近似値を指数化したものだ。
一次空気率と燃焼速度(最大となる位置の違い)⚡ 焦点ポイント
燃焼速度は逆火・リフティング等の現象やガスの互換性に対して重要なファクター。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「最大燃焼速度はメタンが最も大きい」→×(水素が最大)。「プロパンの最大燃焼速度はメタンより小さい」→×(大きい)。
2-1. 伝熱(伝導・対流・放射)
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
熱の伝わり方3種類:伝導・対流・放射(輻射)の特徴と計算式
📖 解説(乙種ベース)
鍋を火にかけると、取っ手がじわじわ熱くなり、湯が渦を巻いて回り、離れた顔まで熱く感じる。台所で同時に起きているこの3つが、そのまま伝熱の3形態だ。熱の伝わり方を伝導・対流・放射(輻射)に分けて追っていく。
伝導は、熱が物体の内部を通って高温側から低温側へ移る現象である。伝導熱量は Q=λA(T₁-T₂)/l で表され、λが熱伝導率、Aが面積、lが厚さだ。厚い壁ほど熱は通りにくく、熱伝導率の小さい材料ほど熱を止める。
熱伝導率の大小は 金属>ガラス>水>グラスウール>空気 の順で、金属の熱伝導率は気体より大きい。代表値を並べると、その差は一万倍以上に開く。
| 材料 | 熱伝導率 [W/(m·K)] |
|---|---|
| 銅 | 372 |
| アルミ | 203 |
| 鉄 | 35〜58 |
| ガラス | 0.58〜1.35 |
| 水 | 0.58 |
| グラスウール | 0.035 |
| 空気 | 0.026 W/(m·K) |
対流は、流体が加熱されて軽くなり物質移動が起こり熱が移動する現象で、流体特有の伝熱現象である。「固体特有」と書かれていたら誤り。比重差により自然に対流が起こるものが自然対流、外力により強制的に対流を起こすものが強制対流だ。
放射(輻射)は、熱が電磁波の形で中間物質媒体なしに直接伝達される現象をいう。媒体が要らない点が決定的な違いで、ここを「媒体が必要」とすり替える選択肢が定番だ。入射する放射熱を全て吸収する物体を黒体(完全黒体)といい、放射率ε=1.0となる。
最後に電磁波の種類を1つ。物の加熱に効果ある電磁波は赤外線で、可視光線より波長が長い。紫外線と入れ替えるのが、よくある書き換えである。
伝熱の3形態(伝導・対流・放射)⚡ 焦点ポイント
断熱材は熱伝導率が小さいものが好ましい。空気の熱伝導率は非常に小さい(断熱効果)。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 「対流は固体特有の伝熱現象」→×(流体特有)。「黒体の放射率は0.5」→×(1.0)。「加熱に効果ある電磁波は紫外線」→×(赤外線)。
2-2. 熱効率
重要度: 乙C / 甲C
🎯 一言で
熱効率の定義・代表的ガス機器の熱効率値・総発熱量基準と真発熱量基準の違い
📖 解説(乙種ベース)
グラスにビールを注いでも、飲めるのは泡を除いた分だけだ。ガス機器も同じで、投入した熱の全部が仕事をするわけではない。どれだけが役に立ったかを示す指標が熱効率である。
分母を分解すれば、効率を上げる方向も見えてくる。入熱量は有効熱量と損失熱量の和だから、損失熱量が小さいほど熱効率は高い。逃げる熱をどれだけ減らせるかが、機器設計の勝負どころになる。
機器ごとの実力値は幅で覚える。いずれも総発熱量基準の値だ。
| 機器 | 熱効率(総発熱量基準) |
|---|---|
| コンロ | 45〜56% |
| 湯沸器 | 75〜95% |
| ふろがま | 70〜80% |
| FFストーブ | 80〜90% |
コンロだけが際立って低い、と覚えておくと数値の入れ替えに気づきやすい。
最後に基準の話。一般にガス機器の熱効率は総発熱量基準で表される。では基準を変えるとどうなるか。真発熱量基準の熱効率>総発熱量基準の熱効率——分母が小さいため大きい値になるからだ。同じ機器でも、基準しだいで数字が変わる。
熱効率(入熱=有効熱+損失)⚡ 焦点ポイント
瞬間湯沸器の熱効率はこんろより高い(75〜95%)。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 「総発熱量基準の熱効率は真発熱量基準より大きい」→×(小さい)。「こんろの熱効率は75〜95%」→×(45〜56%)。
3-1. 燃焼方式の分類
💡 図の見方:上の列は一次空気の多い順、下の列は炎温度の高い順で、同じ4方式を並べ替えただけの図です。結び線が交差するのが急所で、一次空気が最も多い全一次空気式は炎温度では3番目(950℃)にすぎず、最高はブンゼン式の1,300℃です。「炎温度が最も高いのは一次空気が最も多い方式」「最も高いのは赤火式」という選択肢は、この交差を思い出せば切れます。
重要度: 乙B / 甲B
🎯 一言で
4種類の燃焼方式(赤火式・セミブンゼン式・ブンゼン式・全一次空気式)の比較
📖 解説(乙種ベース)
ホットケーキは粉と水を先に混ぜてから焼く。もし混ぜずに焼けば、外側からしか火は通らない。ガスの燃焼も同じで、空気をいつ混ぜるかで炎の姿がまるごと変わる。燃焼方式はガスと空気が混合する場所やあらかじめ混合する一次空気の量で大別される。
その4種類が、赤火式・セミブンゼン式・ブンゼン式・全一次空気式である。あらかじめ混ぜる一次空気が0%の赤火式から100%の全一次空気式まで、その割合の順に並ぶ。割合が上がるほど炎は青みを増し、短くなっていく。下の表で、炎色・炎の長さ・炎温度がどう動くかを追ってほしい。
赤火式と全一次空気式の炎の対比
セミブンゼン式の炎
ブンゼン式の炎の構造
燃焼方式―一次空気の多い順と炎温度の高い順は一致しない| 方式 | 一次空気 | 二次空気 | 炎色 | 炎の長さ | 炎温度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 赤火式 | 0% | 100% | 赤黄 | 長い | 900℃ |
| セミ・ブンゼン式 | 30〜40% | 70〜60% | 青 | やや長い | 1,000℃ |
| ブンゼン式 | 40〜70% | 60〜30% | 青緑 | 短い | 1,300℃ |
| 全一次空気式 | 100% | 0% | −(セラミックや金網の表面で燃える) | − | 950℃ |
並べ方を2つ覚えれば、表は頭の中で再現できる。炎温度(高い順)は ブンゼン式(1,300℃)>セミブンゼン式(1,000℃)>全一次空気式(950℃)>赤火式(900℃)。一次空気が最も多い全一次空気式が最高ではない、という点がここでの急所だ。
一方、炎の長さ(長い順)は 赤火式>セミブンゼン式>ブンゼン式>全一次空気式。こちらは一次空気が多いほど短いという素直な並びで、温度の順とは一致しない。この食い違いが出題者の狙い目になる。
4方式以外の燃焼にも名前がついている。その他燃焼としてパルス燃焼・触媒燃焼・濃淡燃焼・ブラスト燃焼が挙げられる。
⚡ 焦点ポイント
炎温度はブンゼン式(一次空気40〜70%)が最高の約1,300℃(全一次空気式は約950℃とかえって低い)。炎の長さは一次空気が多いほど短い。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「炎温度が最も高いのは赤火式」→×(ブンゼン式1,300℃)。「全一次空気式は炎色が青緑」→×(セラミック/金網表面で燃える)。
3-2. 赤火式燃焼の特徴
重要度: ★ 乙A / 甲A
🎯 一言で
赤火式燃焼(拡散燃焼式)の特徴:逆火なし・リフティングあり・すす発生等
📖 解説(乙種ベース)
ろうそくの炎を思い浮かべてほしい。芯から出た可燃分は、あらかじめ空気と混ぜられてはいない。周りの空気が自分から寄ってきて燃える。赤火式燃焼はこれと同じで、ガスをそのまま大気中に噴出して燃焼させる方法であり、拡散燃焼式とも呼ばれる。
燃焼に必要な空気はすべて周囲の大気から拡散によって供給される。空気が寄ってくるのを待つ以上、反応は急げない。だから燃焼速度は極めて遅く、炎は長く伸びて赤黄色になり、炎の温度は比較的低く約900℃にとどまる。
この遅さは設計にも効いてくる。燃焼速度が遅いので燃焼室を小さくできない。小さくすると不完全燃焼になるからだ。「赤火式は燃焼室を小さくできる」と書かれていたら逆である。
逆火とリフティングの扱いが非対称なのが最大の急所だ。赤火式が逆火することはない。一次空気を使わず、バーナー内に混合気がないため、炎が入り込む先そのものがないからだ。ところが、バーナー内圧が高過ぎるとリフティングを起こす。片方だけが起こる。
炎の見え方にも理由がある。炎の赤い輝きは、ガス中の炭化水素の一部が分解し炭素分子が分離して赤熱して生じる。そしてその炎が冷たい物質の表面に接触するとすすが発生する。赤い炎とすすは、同じ現象の表と裏だと考えればよい。
逆火とリフティングの対比⚡ 焦点ポイント
逆火=炎が燃焼口より内部に入り込む現象。リフティング=炎がバーナー口から離れる現象。赤火式は逆火しない(一次空気なし=混合気なし)が、リフティングは起こる。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「赤火式は逆火しやすい」→×(逆火しない)。「赤火式は燃焼室を小さくできる」→×(大きくする必要あり)。「赤火式でリフティングは起こらない」→×(バーナー内圧が高すぎると起こる)。
🔢 消費機器の重要数値・設備の整理
主要計算式と数値:
– ノズル噴出量: Q = K × A × √(2gh/ρ)(ベルヌーイ応用)
– ウォッベ指数: WI = HHV / √比重(同じWI ≒ 同じ火力)
– ル・シャトリエの式(混合燃焼範囲): 100/L = Σ(xi/Li)
– 13Aの主要数値: HHV ≒ 45 MJ/m³、WI ≒ 52、燃焼速度MCP ≒ 35
燃焼範囲(空気中の体積%):
| ガス | 下限 | 上限 |
|---|---|---|
| メタン | 5.0 | 15.0 |
| プロパン | 2.1 | 9.5 |
| ブタン | 1.6 | 8.4 |
| 水素 | 4.0 | 75.0 |
燃焼方式の分類:
– 赤火式(拡散燃焼): 燃焼速度遅い、すす発生しやすい
– セミブンゼン式: 一次空気あり、中間
– ブンゼン式(予混合燃焼): 燃焼速度速い、青色火炎
消費機器科目では、機器の方式・設置基準・安全装置の作動原理の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・方式・原理を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。
🗒️ 3分で復習(章末まとめ)
🎯 全節 一言まとめ
- 節1-1 ガスの性質と比重: 都市ガスの成分・比重・発熱量の基本値
- 節1-2 ガスの燃焼と理論空気量: 完全燃焼・不完全燃焼・理論空気量・空気比・酸素当量
- 節1-3 燃焼排ガス: 理論燃焼排ガス量・湿り排ガス・乾き排ガスの定義
- 節1-4 発熱量(総発熱量と真発熱量): 総発熱量・真発熱量・潜熱の関係
- 節1-5 ノズル噴出量とインプット・ウォッベ指数: ノズル噴出量式Q=kD²√(P/d)、インプットI=Q×H、ウォッベ指数WI=H/√d
- 節1-6 着火温度と火炎温度: 着火温度の数値・メタンの特異性・理論火炎温度と実際の火炎温度
- 節1-7 燃焼範囲(爆発範囲)とル・シャトリエの式: 燃焼範囲の数値・ル・シャトリエの式・温度/圧力/不活性ガスの影響
- 節1-8 燃焼速度と最大燃焼速度: 燃焼速度の定義・最大燃焼速度・MCP・各ガスの比較
- 節2-1 伝熱(伝導・対流・放射): 熱の伝わり方3種類:伝導・対流・放射(輻射)の特徴と計算式
- 節2-2 熱効率: 熱効率の定義・代表的ガス機器の熱効率値・総発熱量基準と真発熱量基準の違い
- 節3-1 燃焼方式の分類: 4種類の燃焼方式(赤火式・セミブンゼン式・ブンゼン式・全一次空気式)の比較
- 節3-2 赤火式燃焼の特徴: 赤火式燃焼(拡散燃焼式)の特徴:逆火なし・リフティングあり・すす発生等
⚡ 全節 焦点ポイント
- 節1-1: 比重は空気を1とした相対値。比重1より大は空気より重くなり滞留しやすい(LP系)。プロパン・ブタンを空気で希釈したPA13Aは比重1より大。13A・12Aは比重1より小(軽い)。
- 節1-2: 過剰空気があっても完全燃焼すれば排ガスにCOは含まれない。空気比>1のとき:過剰空気あり(完全燃焼に向かう)。
- 節1-3: 乾き排ガスは湿り排ガスから水分を除いたもの(乾き<湿り)。
- 節1-4: 総発熱量基準の熱効率<真発熱量基準の熱効率(分母が大きいため)。
- 節1-5: WIが大きい→インプット大(同一P・Dでも多くの熱を供給)。ウォッベ指数はガスの互換性判定に使用。
- 節1-6: 着火温度は発生熱量と放散熱量の平衡で決まる。発生熱量<放散熱量の場合は燃焼継続しない。
- 節1-7: 燃焼範囲はガスの種類・温度・圧力・混合不活性ガスの種類と量で変わる。
- 節1-8: 燃焼速度は逆火・リフティング等の現象やガスの互換性に対して重要なファクター。
- 節2-1: 断熱材は熱伝導率が小さいものが好ましい。空気の熱伝導率は非常に小さい(断熱効果)。
- 節2-2: 瞬間湯沸器の熱効率はこんろより高い(75〜95%)。
- 節3-1: 炎温度はブンゼン式(一次空気40〜70%)が最高の約1,300℃(全一次空気式は約950℃とかえって低い)。炎の長さは一次空気が多いほど短い。
- 節3-2: 逆火=炎が燃焼口より内部に入り込む現象。リフティング=炎がバーナー口から離れる現象。赤火式は逆火しない(一次空気なし=混合気なし)が、リフティングは起こる。
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