論述の出題傾向分析(過去9年・全36問)

この記事の結論
  1. 9年間、出題テーマが1つも増えていない。法令9・製造3・供給4・消費2で全36問が説明できる
  2. 法令は上位5テーマで76%を占める
  3. 消費は業務用と家庭用が交互。令和2年度以降6年連続で崩れていない
  4. 供給は4年周期で一巡している。令和3〜6年度で一巡し、令和7年度から二巡目に入った
  5. 足切りは20点だけではない。法令面・ガス技術面のどちらかが0点だと不合格

ガス主任技術者試験の論述は、情報が少なく対策しにくい科目です。そこで 日本ガス機器検査協会(JIA)が公表している公式試験問題平成29年度〜令和7年度(9年分・全36問)を、当サイトで独自に分類・集計しました。

0. まず、合格条件を正確に

論述は70点満点ですが、足切りが二重にかかっています

総合マークシート230点+論述70点=300点満点で180点以上
論述 全体20点以上(70点満点)
論述 法令0点でないこと(35点満点)
論述 ガス技術0点でないこと(35点満点)

※マークシート側にも科目別の足切りがあります(法令25点/基礎15点/ガス技術30点)。

⚠ 「0点がないこと」が独立した条件

論述全体で20点を超えていても、どちらかの面が白紙なら不合格になります。 公式の問題冊子にも「答案用紙は白紙であっても必ず提出」と明記されています。

裏を返せば、部分点を拾いにいけば足切りは越えられる設計です。 論述は高得点を狙う科目ではなく、まず両面を埋める科目だと考えてください。

1. 試験の形

試験時間60分(2問で)
法令1問・必須。選択の余地なし
ガス技術製造・供給・消費の3問から1問を選択
配点法令35点+ガス技術35点=70点
答案用紙1枚両面。法令=白色面/ガス技術=緑色面
基礎理論論述では出題されない

1問あたり30分。考えている時間はほとんどありません。 思い出す作業を30分に収める必要があります。

2. 9年間、テーマが増えていない

科目テーマ数9年分の出題
法令917小問
製造39問
供給410小問
消費29問

令和7年度も、新しいテーマは1つも出ませんでした。

4問すべてが過去8年に前例のある主題の再出題でした。 これが論述対策の前提になります。範囲は事実上、閉じています。

3. 法令:9テーマ、上位5つで76%

テーマ出題数出た年度
保安規程(目的・内容・定めるべき事項)3H30・R4・R6
ガス事業者の保安責務/規制の態様3H29・R3・R7
ガス主任技術者制度3H29・R5・R7
保安業務規程2R1・R4
消費機器に関する調査2H30・R6
ガス工作物の維持及び運用1R1
経済産業大臣による命令(措置命令)1R2
供給条件の説明(保安に関するもの)1R2
熱量等の測定義務1R5

上位5テーマで13/17小問=76%。

💡 令和7年度で分かったこと

令和7年度は「保安責務+ガス主任技術者制度」の組み合わせでした。 これは平成29年度とまったく同じ組み合わせで、8年ぶりの再登場です。

さらに「保安責務」はH29 → R3 → R7 と、きれいに4年おきに出ています。

📌 法令論述の実態

出題は「〜に関する規定の要点を述べよ」という形にほぼ統一されています。 条文に書いてある事項を列挙できるかを見ており、考察は求められていません。 つまり暗記が直接点になる、論述で最も対策しやすい部分です。

とくに「保安規程に定めるべき事項」は省令に項目が列挙されており、 書き出せた項目数がそのまま点になる構造になっています。

4. 製造:3テーマのまま

テーマ出題数出た年度
防災・災害対応(地震/津波/停電/気象警報)4R1・R2・R5・R6
ガスの品質管理(熱量・燃焼性/付臭/不純物)3H29・R4・R7
設備保全と経年劣化2H30・R3

令和7年度は品質管理の3回目。熱量・燃焼性・付臭という定番の枠組みでしたが、 「バイオガスを導管注入する際の不純物」という新しい題材が加わりました。

💡 テーマは固定、題材は更新される

骨格(品質管理の3要素)を押さえたうえで、カーボンニュートラル関連 (バイオガス・水素・メタネーション)の動向を一通り知っておくと、 こうした変化球に対応できます。

5. 供給:4年周期で一巡している

テーマ出題数出た年度答案の割り方
自社工事(導管埋設工事)の事故防止3H29・R3・R7着手前/土木/配管
地震対策3H30・R1・R5平常時(設備)/緊急/復旧
他工事による導管損傷の防止2R2・R6日頃/照会後〜着手前/施工中
ガス漏えい対応・緊急時保安体制2H30・R4体制整備/受付・出動/現場措置

並べると周期が見える

R3自社工事
R4漏えい対応
R5地震対策
R6他工事
R7自社工事

令和3〜6年度で4テーマが一巡し、令和7年度で二巡目の先頭に戻っています。

さらに「自社工事の事故防止」はH29 → R3 → R7 と完全に4年おき。 令和7年度の設問は、着手前/土木工事/配管工事の3段階に分けて答えさせる形で、 令和3年度とほぼ同じ構成でした。

📌 供給は「時間軸で3つに割る」

4テーマすべてが時系列で分けて答える形式になっています。 上の表の「答案の割り方」の列がそれです。

どのテーマが来ても、時間軸で3つに割れば骨格が作れます。

6. 消費:交互出題が9年目も崩れなかった

H29業務用 H30家庭用 R1家庭用 R2業務用 R3家庭用 R4業務用 R5家庭用 R6業務用 R7家庭用

令和2年度以降、6年連続できれいに交互になっています (崩れたのは平成30年度・令和元年度の2年だけ)。

⚠ ただし、まだ仮説です

6年連続の交互は偶然でも起こりえます(コイン投げで6回続く確率は約3%)。 「交互だから次は業務用」と決め打ちして、片方だけ捨てるのは危険です。

順番を意識しつつ、両方を準備するのが正しい使い方です。

消費の「型」は9年間まったく変わっていない

対象が業務用でも家庭用でも、聞かれることは毎年同じでした。

(1)事故の発生原因・事故の形態
(2)ガス小売事業者が事故防止のために実施/留意すべき事項

9年9回すべてがこの2部構成。例外なし。

そして直近4年(R4・R5・R6・R7)は、後半の観点まで指定されています

観点 周知 / 調査(点検) / 改善対策

この3語が4年連続で設問文に明示されています。 答案の見出しを試験前から決めておけます。

7. 設問の細分化=書きやすくなっている

平成29年度令和7年度
法令「〜の内容を述べよ」(1)(2)、さらに①②に細分
供給4項目を列挙(1)(2)(3)+(ア)(イ)に細分
消費「原因と留意事項を述べよ」(1)(2)+観点3つを明示

近年ほど、小問に分かれて「何を書くか」が指定されます。 受験者にとっては有利な変化です。「何を書けばいいか分からない」状態が減り、 指定された枠を埋めれば形になります

⚠ 裏を返すと

枠を埋め残すと減点が明確になります。(1)(2)(3)と指定されたら、必ず3つとも書く。 分からない項目でも見出しだけ立てて一般論を置けば、白紙よりはるかにましです。

8. 準備すべきものは、これで全部

法令(必須・全員)

優先度A(76%を占める5テーマ)
① 保安規程 ② ガス事業者の保安責務/規制の態様 ③ ガス主任技術者制度
④ 保安業務規程 ⑤ 消費機器に関する調査

優先度B(各1回)
⑥ ガス工作物の維持及び運用 ⑦ 経済産業大臣による命令
⑧ 供給条件の説明(保安) ⑨ 熱量等の測定義務

ガス技術(1つ選ぶ)

選ぶ科目準備するテーマ
製造防災・災害対応(最頻出)/ ガスの品質管理 / 設備保全と経年劣化
供給自社工事の事故防止 / ガス漏えい対応・緊急時保安体制 / 地震対策 / 他工事による損傷防止
消費業務用厨房の事故 / 家庭用機器の事故(どちらも「原因」→「周知・調査・改善対策」の型)

💡 どれを選ぶか

準備の軽さでは消費。対象2つ、型1つ、9年間変わっていません。
供給は4テーマですが「時間軸で3つに割る」型が共通なので、実質は覚え方ひとつ。
製造は3テーマですが、防災の範囲が年ごとに動き、題材も更新されます。

ただし実務で馴染みのある分野を選ぶのが最優先です。 論述は具体例が書けるかで差がつきます。

9. 30分の使い方

時間やること
〜3分設問の指定((1)(2)(3))を答案に見出しとして先に書く
〜8分各見出しの下に、書く要素を単語で並べる
〜27分単語を文にしていく
〜30分空欄が残っていないか確認。白紙の見出しを作らない

見出しを先に書くのは、0点を防ぐためです。 時間切れでも見出しと単語が残っていれば、白紙にはなりません。

10. この分析の限界

⚠ 読むときの注意

  • 9年分の傾向であり、来年の予告ではありません
  • 周期性(§5)・交互性(§6)はいずれも仮説です。9年は規則を確定するには短く、1回崩れれば前提が変わります
  • 周期を根拠に「今年は出ない」と判断して捨てないでください。この分析は優先順位づけに使うもので、範囲を削るためのものではありません
  • テーマ分類は当サイトの独自基準です。公式の分類ではありません
  • 法改正があればテーマは動きます。とくに法令は改正の影響を直接受けます
  • 採点基準は公表されていません。「何を書けば何点」は誰にも分かりません

次に読む

論述ガイド(分野別の対策ページ)
法令論述 ・製造論述 供給論述 ・消費論述
過去問題(9年分・マークシート全問解説)模擬問題・模擬試験

出典・作成方法
一次資料は 日本ガス機器検査協会(JIA)が公表している試験問題 (甲種・乙種共通「論述」/平成29年度〜令和7年度)のみです。 テーマの分類・集計・傾向の読み取りは、すべて当サイトによる独自の作業です。 設問文の転載は行っていません。特定の対策講座・市販教材の解説や解答例は参照していません。
分析日:2026年7月20日