基礎理論 第7章 材料

基礎理論 第7章 材料 解説動画
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ガス工業設備の材料を扱います。応力とひずみの基本、応力ひずみ線図と許容応力、薄肉円筒の強度、炭素鋼の特性と不純物、特殊鋼の添加元素、温度帯別の材料選定、疲労破壊・クリープ・応力腐食割れ・低温脆性、高分子材料までを順番に学びます。基礎理論の最終章です。

乙種甲種兼用 / 全17節 / 学習目安: 60〜90分

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📍 はじめに

ガスタンク・配管・バルブはどんな材料でできているのか。なぜLNGタンクには低温に強い材料が必要で、高圧配管には強度の高い鋼が必要なのか。この章では、材料の性質と試験に出る数値・現象を整理します。


📚 テキスト解説

各節は次の構成で進みます。

– 🎯 一言で

– 📖 解説(乙種ベース)

– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)

– ⚡ 焦点ポイント

– 📝 過去問のひっかけ例


📑 この章の目次(全17節)
  1. 1. 応力の定義と3種類(引張・圧縮・せん断)σ = P/A
  2. 2. ひずみの定義(縦ひずみ・横ひずみ・せん断ひずみ)ε = λ/l
  3. 3. 応力ひずみ線図の特徴点(A比例限度〜F破断点)とフックの法則
  4. 4. 許容応力と安全率(安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力)
  5. 5. 薄肉円筒の強度(円周応力 σt = PD/2t、軸応力 σz = PD/4t)
  6. 6. 炭素鋼の基本特性(炭素量と引張強さ・伸びの関係)
  7. 7. 炭素鋼の不純物(リンPと硫黄Sが鋼に与える悪影響)
  8. 8. 特殊鋼と添加元素の効果(Ni・Mn・Cr・Mo・W)
  9. 9. 高温装置用材料(炭素鋼の使用限界450℃・特殊鋼の必要性)
  10. 10. 低温装置用材料(LNG・液体窒素対応材料と温度帯別選択)
  11. 11. 高圧装置用材料と腐食環境(応力腐食割れ対策材料)
  12. 12. 疲労破壊と耐久限度(繰り返し応力による破壊)
  13. 13. クリープ損傷(高温長時間の応力でひずみが時間とともに増大)
  14. 14. 応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼の最大の欠点)
  15. 15. 低温脆性(体心立方→脆性あり)と水素脆性・遅れ割れ
  16. 16. 高分子材料の種類と特徴(熱可塑性・熱硬化性・エラストマー・ゴム)
  17. 17. 高分子材料の特性(強度・クリープ特性・熱酸化・光劣化・環境応力割れ)

1. 応力の定義と3種類(引張・圧縮・せん断)σ = P/A

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

応力σ = P/A(力÷断面積)。引張応力・圧縮応力・せん断応力の3種類。単位はMPa(= N/mm²)。

📖 解説(乙種ベース)

同じ力で押しても、手のひらで押すのと画鋲の先で押すのとでは結果がまるで違う。材料に外力が加わると材料内部に「内力」が発生するが、危ないかどうかを決めるのは力そのものではない。その力がどれだけ狭い面積に集中しているかだ。この内力の強さを断面積で割ったものが応力である。

公式
σ = PA
σ: 応力 [MPa = N/mm²] P: 材料に加えた力 [N] A: 力に垂直な断面の面積(原断面積)[mm²]

応力は力の向きによって3種類に分かれる。①引張応力は材料を引っ張ることで生じる応力で、棒が伸びる方向に働く。②圧縮応力は材料を押しつぶすことで生じる応力で、棒が縮む方向。③せん断応力は材料を切るように力が加わることで生じ、断面がずれる方向に働く。

この引張と圧縮の区別は、後半の応力腐食割れ(引張応力では起こるが圧縮応力では起こらない)でも効いてくる。向きの違いが現象の有無を分ける場面がある、と覚えておきたい。

式が示すとおり、引張応力は力に比例し、断面積に反比例する。力が2倍なら σ が2倍、面積が2倍なら σ が1/2 になる。出題者は「断面積が大きいほど応力が大きい」と分母と分子をすり替えてくるが、画鋲の先を思い出せば迷わない。

最後に単位で足をすくわれないようにしたい。MPa = N/mm² = 10⁶ Pa であり、圧力と同じ次元をもつ。落とし穴は組み合わせにあって、kN と mm² を組み合わせると自動的に GPa になるので注意が必要だ。

覚える
MPa = N/mm² = 10⁶ Pa(圧力と同じ次元)。kN と mm² を組み合わせると GPa になる
🖼 図解
引張応力引張応力
🖼 図解
圧縮応力圧縮応力
🖼 図解
せん断応力せん断応力

⚡ 焦点ポイント

乙種では「σ = P/A を使って引張応力・せん断応力・断面積を計算する」問題が頻出。 / 「引張応力は力に比例し断面積に反比例する」は正文として覚える。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【頻出】 「断面積が大きいほど応力が大きい」は誤り。断面積が大きいほど応力は小さくなる(反比例)。
  • 乙種では「σ = P/A を使って引張応力・せん断応力・断面積を計算する」問題が頻出
  • 「引張応力は力に比例し断面積に反比例する」は正文として覚える

2. ひずみの定義(縦ひずみ・横ひずみ・せん断ひずみ)ε = λ/l

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

ひずみ ε = 変形量λ ÷ 元の長さl。無次元(単位なし)。伸縮方向が縦ひずみ、直角方向が横ひずみ。

📖 解説(乙種ベース)

応力が「どれだけ強く効いているか」なら、ひずみは「どれだけ変形したか」を表す。1mの棒が1mm伸びるのと、1cmの棒が1mm伸びるのとでは、同じ1mmでも意味がまるで違う。だから変形量そのものではなく、元の長さに対する割合で表す。

公式
ε = λl
ε: ひずみ(無次元、単位なし) λ: 変形量(伸び・縮み)[m または mm] l: 元の長さ [m または mm]

割合である以上、ひずみは無次元で単位をもたない。長さの単位をそろえれば同じ単位同士で割れるので、mで計算してもmmで計算しても答えは変わらない。ここは選択肢で頻繁に狙われる箇所で、「ひずみの単位は mm」とあればその時点で誤りと判断してよい。

ひずみも応力と同じく3種類ある。①縦ひずみ(軸ひずみ)は力の方向(伸縮方向)に生じるひずみ、②横ひずみは縦ひずみに対して直角方向に生じるひずみ、③せん断ひずみはせん断応力によって生じるひずみだ。

見落としやすいのが②である。粘土の棒を引き伸ばすと、伸びると同時に細くなる。材料を引っ張ると、伸びる方向(縦)にひずみが生じるだけでなく、それと直角な方向にも逆向きのひずみ(横ひずみ)が生じるのだ。つまり引っ張ると横は縮み、圧縮すると横は膨らむ。

覚える
ひずみは無次元(単位なし)。伸縮方向だけでなく直角方向(横ひずみ)にも生じる
🖼 図解
縦ひずみと横ひずみ縦ひずみと横ひずみ

⚡ 焦点ポイント

「ひずみは無次元(単位なし)」は選択肢でよく問われる。 / 「ひずみは伸縮方向だけでなく直角方向にも生じる」も正文として頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「ひずみの単位は mm」は誤り。ひずみは無次元(単位なし)。
  • 「ひずみは無次元(単位なし)」は選択肢でよく問われる
  • 「ひずみは伸縮方向だけでなく直角方向にも生じる」も正文として頻出

3. 応力ひずみ線図の特徴点(A比例限度〜F破断点)とフックの法則

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

A:比例限度フックの法則σ=Eε)、B:弾性限界、C/D:上/下降伏点、E:最大荷重点(引張強さ)、F:破断点。銅・高張力鋼は降伏点が明確に現れず0.2%耐力を使う。

📖 解説(乙種ベース)

乙種甲種ともに毎年のように問われるのが、軟鋼(低炭素鋼)の引張試験で得られる応力ひずみ線図だ。輪ゴムは軽く伸ばせば元に戻るが、引っ張りすぎると伸びきって戻らなくなる。鋼にも同じ境目があり、その境目に名前をつけて並べたのがこの線図である。

出発点は A:比例限度 だ。この点までフックの法則が成立し、応力とひずみがきれいな直線関係になる。

公式
σ = E × ε
σ: 応力 ε: ひずみ E: 縦弾性係数(ヤング率)[MPa] (応力はひずみに比例。比例限度Aまで成立)

A から F までの6点を順に押さえたい。

🖼 図解
応力ひずみ線図(A比例限度〜F破断点)応力ひずみ線図(A比例限度〜F破断点)
名称意味
A比例限度この点までフックの法則が成立する
B弾性限界この点まで応力を加えてもひずみはゼロに戻る(弾性変形の上限)
C降伏点降伏点のうち高い方。図では小さな山として D より高い位置にある
D降伏点強度設計に使う「降伏点」はこの D を指す
E最大荷重点この点の応力を「破壊強さ」「引張強さ」という。線図の最高点
F破断点材料が切断される点。応力は最大荷重点より小さい

用語を2つ押さえておく。弾性変形は外力を除くと元の形に戻る変形、塑性変形は外力を除いても残る永久変形だ。降伏点を超えると、外力を取り去っても元の形に戻らなくなる。

キーワード
塑性変形 — 外力を除いても残る永久変形。降伏点(D)を超えると生じる

出題者が好むのは E と F の関係である。線図の最高点は E であり、最大荷重重点の応力は破断点の応力より大きい。つまり材料は最も強い瞬間に切れるのではなく、いったん弱ってから F で切れる。「最大荷重点で破断する」という選択肢は誤りだ。

ではこの線図はすべての材料に当てはまるのか。銅・高張力鋼では応力ひずみ線図が弾性限界以上でなめらかな曲線となり、降伏点が明確に認められない。そこで代わりに「0.2%耐力」を使う。0.2%の永久ひずみを生じる応力 = 0.2%耐力 である。

⚡ 焦点ポイント

軟鋼のA〜F各点の名称と意味を確実に把握すること(特にD:降伏点、E:引張強さ)。 / 「降伏点を超えると塑性変形が生じる」「銅では降伏点が明確に認められない」は頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「最大荷重点で破断する」は誤り。破断はFであり、EよりFの応力は小さい(首なれ現象)。

4. 許容応力と安全率(安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力)

💡 図の見方:基準強さを安全率で割ったものが許容応力で、実際に働く応力はさらにその下に収めるという上下関係を縦の応力スケールで示した図。難所は分子の基準強さで、常温静荷重なら降伏点、高温ならクリープ限度、繰返しなら疲労限度と使用状況で読み替える点(「安全率は小さいほど安全」は誤り)。

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

許容応力 = 基準強さ(破損限度)÷ 安全率。安全率は大きいほど余裕がある設計。使用状況で基準強さが変わる。

📖 解説(乙種ベース)

材料が壊れる応力ぎりぎりで設計する技術者はいない。橋に「10t まで」と表示があるのは、10t で落ちるからではなく、落ちる荷重よりずっと手前で線を引いているからだ。構造物の強度設計では、各部材に働く応力が許容応力を超えないように設計しなければならない。

許容応力は、材料の基準強さ(破損限度)を安全率で割って決める。裏返せば、安全率(安全係数)は材料の基準強さ ÷ 許容応力だ。安全率が大きいほど許容応力は小さくなり、設計に余裕がある(より安全)。「安全率は小さいほど安全」という逆向きの選択肢に注意したい。

公式
許容応力 = 基準強さ(破損限度)安全率  安全率 = 材料の基準強さ許容応力
安全率が大きいほど許容応力は小さくなり安全側になる (ガス事業法では安全率として 3.5 や 4.0 が使われる)

難所は分子の「基準強さ」のほうだ。これは材料に一つ決まった値ではなく、使用状況によって「明確な材料の強さを示す点」が変わる。同じ鋼でも、常温で静かに支えるのか、高温で長時間支えるのか、揺すられ続けるのかで、危険の現れ方が違うからである。

🖼 図解
基準強さ・許容応力・使用応力の上下関係基準強さ・許容応力・使用応力の上下関係
使用状況基準強さ(破損限度)
①延性材料が常温で静荷重を受けるとき降伏点 または 耐力0.2%耐力
②脆性材料が常温で静荷重を受けるとき破壊強さ
③材料が高温で静荷重を受けるときクリープ限度 または クリープ破壊応力
④材料が繰返し応力を受けるとき疲労限度(疲れ限度)

計算そのものは割り算一つで済む。降伏点 280 MPa、安全率 4.0 の場合、許容応力 = 280 / 4.0 = 70 MPa となる。

覚える
安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力(大きいほど安全)。高温ならクリープ限度、繰返しなら疲労限度が基準強さ

🟦 甲種プラスα

甲種では計算問題として出題

⚡ 焦点ポイント

「許容応力 = 基準強さ / 安全率」の式を覚え、3つの量のうちどれかを求められるようにする。 / 「延性材料では降伏点が基準強さ」「高温ではクリープ限度」「繰返しでは疲労限度」の対応を整理。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「安全率は小さいほど安全」は誤り。安全率は大きいほど安全余裕がある(許容応力が小さくなる)。

5. 薄肉円筒の強度(円周応力 σt = PD/2t、軸応力 σz = PD/4t

重要度: 乙C / 🟦 甲B

🎯 一言で

薄肉円筒の内圧Pによる応力:円周応力(フープ応力)σt = PD/2t、軸応力 σz = PD/4t。円周応力は軸応力の2倍。

📖 解説(乙種ベース)

フランクフルトを焼くと、輪切りのように切れるのではなく決まって縦に裂ける。ガス工作物では容器・配管など円筒構造が多く、内圧を受けた薄肉円筒にも同じことが起こる。なぜ縦に裂けるのか——応力の大きさが方向によって違うからだ。

内圧によって生じる応力は3方向ある。①円周応力 σt(フープ応力)は円筒の円周方向(胴を割ろうとする方向)に発生し、②軸応力 σz は円筒の軸方向(端面を引き裂こうとする方向)に発生する。③半径応力 σr は半径方向に生じるが、薄肉では無視できる。

公式
σt = P × D2t  σz = P × D4t = σt2
P: 内圧(外部との圧力差)[MPa] D: 円筒の内径 [mm] t: 円筒壁の肉厚 [mm] (薄肉円筒。円周応力は軸応力の2倍)

式を見比べれば分母が 2t と 4t——薄肉円筒では円周応力が軸応力の2倍となる。だから破損はまず円周方向(縦に割れる)から起こりやすい。ソーセージが縦に裂けるのはこのためだ。σt と σz を逆に覚えると、計算も正誤判断もまとめて崩れる。

比例関係も押さえておきたい。円周応力・軸応力ともに内圧P・内径Dに比例し、肉厚tに反比例する。同じ内圧なら、太い管ほど、そして薄い管ほど危ないということになる。

覚える
大きいのは円周方向。σt = PD/2t、σz = PD/4t で、σt は σz の2倍

🟦 甲種プラスα

「円周応力は軸応力の2倍」は乙種甲種ともに頻出の正文

甲種では σt と σz の式を直接書かせる問題が出る

🖼 図解
薄肉円筒の応力(円周方向は軸方向の2倍)薄肉円筒の応力(円周方向は軸方向の2倍)

⚡ 焦点ポイント

「円周応力は軸応力の2倍」は乙種甲種ともに頻出の正文。 / 甲種では σt と σz の式を直接書かせる問題が出る。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • σt と σz を逆に覚えないこと。大きい方(2倍)が円周方向(フープ)σt。

6. 炭素鋼の基本特性(炭素量と引張強さ・伸びの関係)

重要度: 乙B / 甲B

🎯 一言で

炭素鋼は鉄+炭素の合金。炭素量↑→引張強さ・硬度↑、伸び・絞り↓。C≦0.30%:低炭素鋼、0.30〜0.45%:中炭素鋼、0.45%以上:高炭素鋼。

📖 解説(乙種ベース)

炭素鋼は鉄(Fe)に主な合金元素として炭素(C)だけを含む鋼で、構造材として最も広範に使用される。設計者にとっての要点はただ一つ、炭素をどれだけ入れるかで性格が変わることだ。せんべいは硬いが割れやすく、餅は柔らかいがよく伸びる——鋼にも同じトレードオフがある。

炭素量が増えると引張強さ・硬度は増加し、伸び・絞りは小さくなる。つまり強くなるが脆くなる。「炭素量が増えると伸びも増える」という選択肢は、この逆方向の関係を突いた定番の誤りだ。両方が同時に良くなることはない。

炭素量による分類は3段階で、境目の数値がそのまま問われる。

🖼 図解
炭素量と引張強さ・伸び炭素量と引張強さ・伸び
分類炭素量主な用途
低炭素鋼(軟鋼)C ≦ 0.30%圧延鋼材・配管材・鋼鋳物。容器・配管・貯槽・熱交換器に多用
中炭素鋼0.30〜0.45%機械部品・構造材
高炭素鋼C ≧ 0.45%工具・ばねなど

代表的な機械的性質も押さえておく。炭素鋼の一般的な引張強さは約390〜980 N/mm²、一般的な伸びは約30%4%で、炭素量が多いほど伸びは小さい。強さの幅と伸びの幅が、ちょうど逆向きに並んでいる点に注目してほしい。

もう一つの境目が引張強さ 490 MPa だ。引張強さが 490 MPa 未満の炭素鋼が一般的に広く使われる。490 MPa 以上は高張力鋼と呼ばれ、少量の合金元素を添加して強化した鋼である。

覚える
C≦0.30%:低炭素鋼/0.30〜0.45%:中炭素鋼/0.45%以上:高炭素鋼。炭素量↑で引張強さ・硬度↑、伸び・絞り↓

⚡ 焦点ポイント

「炭素量が増えると引張強さ・硬度が増し、伸び・絞りが小さくなる」は頻出の正文。 / 低炭素鋼の炭素量「0.30%以下」という数値も覚えておく(高炭素鋼は0.45%以上)。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「炭素量が増えると伸びも増える」は誤り。炭素量↑で伸び↓(逆)。

7. 炭素鋼の不純物(リンPと硫黄Sが鋼に与える悪影響)

💡 図の見方:リンは硬さ・引張強さを増す代わりに伸びを減らし、延性→脆性の遷移温度を著しく高めるため低温側で問題になり、硫黄は結晶粒界を弱めて熱間加工中の割れを招くため高温側で問題になる、という担当温度域の違いを示した図。「リンは引張強さを下げる」は誤りで、下がるのは伸びの方という点が頻出の引っかけ。

重要度: 乙B / 甲B

🎯 一言で

リン(P):硬さ・引張強さ↑、伸び↓、延性→脆性の遷移温度を大きく上げる(低温脆性悪化)。硫黄(S):結晶粒界を弱め、熱間加工中に割れやすくし機械的強度↓。

📖 解説(乙種ベース)

炭素鋼には不純物としてリン(P)・硫黄(S)・銅(Cu)・ヒ素(As)・スズ(Sn)などが含まれる。これらは鋼の性質に悪影響を与えるため、できるだけ少ない方が望ましい。とりわけ試験に出るのがリンと硫黄で、悪さの仕方がまったく違う。

リンは厄介な二面性をもつ。良い面として硬さ・引張強さを増すが、その代わりに伸びを減らす(靭性低下)。筋肉はついたのに、寒い日に折れやすくなった体のようなものだ。

悪影響の本命は温度のほうにある。リンは延性→脆性の遷移温度(低温脆性が起こる温度)を著しく高めるため、低温で使う材料にとって特に問題になる。加えて、鋼塊中に偏析(成分が偏る現象)を起こさせやすい。「リンは引張強さを下げる」は誤りで、下がるのは伸びのほうだ。

硫黄の悪さは、逆に高温側に出る。結晶粒界を弱くするため、熱間加工(高温での加工)中に割れを発生させやすい(赤熱脆性)。機械的強度も低下させる。なお硫黄は鋼中では硫化物の形で含まれている。

覚える
リン=低温側の敵(遷移温度を上げて低温脆性を悪化)/硫黄=高温側の敵(結晶粒界を弱め熱間加工中に割れ)

ここで鉄そのものの結晶構造にも触れておく(参考)。純鉄は910℃で結晶構造が変わる変態点をもつ。910℃以下は体心立方構造(α鉄)、910℃以上は面心立方構造(γ鉄、オーステナイト)だ。

キーワード
フェライト — 炭素を固溶したα鉄。同じく炭素を固溶したγ鉄をオーステナイトという

🟦 甲種プラスα

「リンは伸びを減らし、遷移温度を上昇させる(低温脆性を悪化)」は甲種頻出

フェライト=α鉄にCを固溶」「オーステナイト=γ鉄にCを固溶」も甲種で出る

🖼 図解
リンPは低温側の敵・硫黄Sは高温側の敵リンPは低温側の敵・硫黄Sは高温側の敵

⚡ 焦点ポイント

「リンは伸びを減らし、遷移温度を上昇させる(低温脆性を悪化)」は甲種頻出。 / 「硫黄は結晶粒界を弱くし、熱間加工中に割れを起こしやすい」も正文として頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「リンは引張強さを下げる」は誤り。引張強さは増やす(ただし伸びが減る)。

8. 特殊鋼と添加元素の効果(Ni・Mn・Cr・Mo・W)

重要度: 乙B / 甲C

🎯 一言で

Ni・Mn→オーステナイト生成元素(耐低温性・靭性向上)。Cr・Mo・W→フェライト生成元素(耐食・耐熱・高温クリープ強さ向上)。

📖 解説(乙種ベース)

炭素鋼にニッケル(Ni)・クロム(Cr)・マンガン(Mn)などを加えた鋼を特殊鋼という。添加元素は無数にあるように見えて、試験に出る限りでは2つのグループに分かれる。冬タイヤと夏タイヤのように、どちらの環境向けかで役割がはっきり分かれているのだ。

オーステナイト生成元素が Ni(ニッケル)・Mn(マンガン)——寒さ担当である。オーステナイト組織を安定させ、焼入れ性を大きくし、強さと靭性を高める。決め手は衝撃値の遷移温度を下げること、つまり耐低温性が向上する点だ(Niを添加すると低温脆性が起こりにくくなる)。

もう一方のフェライト生成元素が Cr(クロム)・Mo(モリブデン)・W(タングステン)——熱と腐食の担当になる。フェライト組織を安定させ、フェライトに固溶して硬く強くする。出題者はこの2グループを入れ替えて「Niはフェライト生成元素」と書いてくるので、元素はグループごと覚えるのが安全だ。

各元素には固有の効果もある。

🖼 図解
添加元素の2グループ添加元素の2グループ
元素固有の効果
Cr(クロム)鉄より酸化しやすい(酸化膜が緻密で保護膜になる)。大気中・高温での耐酸化性・耐熱性を高める。5〜6%以上含有で水素脆性が起こりにくい
Mo(モリブデン)高温クリープ強さを高める効果が大きい。焼入れ性を著しく改善し、焼戻し脆さを防止する
W(タングステン)炭化物(WC, W₂C)となり鋼を極めて硬くする。Moとほぼ同様の性質

こうして性格を調整した結果、特殊鋼は用途によって耐熱鋼・耐食鋼・耐摩耗鋼・高張力鋼・低温用鋼などに分けられる。

覚える
オーステナイト生成=Ni・Mn(耐低温性・靭性)/フェライト生成=Cr・Mo・W(耐食・耐熱・高温クリープ強さ)

⚡ 焦点ポイント

「オーステナイト→Ni・Mn、フェライト→Cr・Mo・W」の分類を確実に覚える。 / 「Ni添加で耐低温性が増す」「Cr添加で耐酸化性・耐熱性が向上」「Mo添加で高温クリープ強さ向上」も頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「Niはフェライト生成元素」は誤り。NiはオーステナイトをCr・Mo・Wがフェライトを生成。

9. 高温装置用材料(炭素鋼の使用限界450℃・特殊鋼の必要性)

💡 図の見方:ガス工業でいう高温(350℃超)の領域で、炭素鋼が約450℃で頭打ちになり、その先はSUS430・SUS304(850℃)、SUS310S(1050℃)といった耐熱鋼に置き換わることを温度バーで示した図。450℃を境に線を引く理由は黒鉛化現象(鉄中の炭素が炭化物から遊離して黒鉛になる)で強度が著しく低下するためで、「炭素鋼は高温でも使用できる」は誤り。

重要度: 乙C / 甲C

🎯 一言で

炭素鋼の使用限界は約450℃。それ以上では黒鉛化現象で強度が著しく低下するため、Mo鋼・Cr-Mo鋼・ステンレス鋼などの特殊鋼を使用。

📖 解説(乙種ベース)

ガス工業での「高温」とは350℃を超える温度域を指す。安価で扱いやすい炭素鋼にも、この領域には定年がある。炭素鋼は450℃程度までが使用限界で、それより高い温度では使えない。

ではなぜ450℃で線を引くのか。450℃以上では黒鉛化現象が起こり、強度が著しく低下するからだ。黒鉛化とは、鉄中の炭素が炭化物から遊離した黒鉛になる現象をいう。鋼を強くしていた炭素が、別の姿になって役に立たなくなる、と考えるとよい。

覚える
炭素鋼の使用限界は約450℃。それ以上では黒鉛化現象で強度が著しく低下する

そこで特殊鋼の出番になるが、高温装置材料に求められるのは強度だけではない。①化学的性質は耐酸化性・耐食性(高温雰囲気ガスに対して)、②機械的性質は高温強度(引張強さ・クリープ強さ)と靭性、③物理的性質は線膨張率・密度が小さく熱伝導率が大きいこと、④製造性は溶解・鋳造・加工・溶接が容易であることだ。

実際に使われるのは Mo鋼、Cr-Mo鋼、Ni-Cr-Mo鋼、ステンレス鋼、Ni合金、Co合金である。前節で Cr・Mo が熱の担当だったことを思い出せば、この顔ぶれには納得がいく。

代表的な耐熱鋼は、上限温度とセットで覚えたい。

🖼 図解
高温装置用材料の使用上限温度高温装置用材料の使用上限温度
系統鋼種上限温度・特徴
オーステナイト系SUS304(18Cr-8Ni)850℃まで繰り返し加熱に耐える
SUS310S(25Cr-20Ni)1050℃まで耐える(炉材・排ガス浄化装置用)
SUS316(16Cr-12Ni-2Mo)SUS304より耐食性が高い
フェライトSUS430(18Cr)850℃までの耐酸化用部品

🟦 甲種プラスα

甲種ではSUS310Sが耐熱鋼として用いられることも問われる

⚡ 焦点ポイント

「炭素鋼の使用限界は450℃」「450℃以上では黒鉛化現象で強度低下」は頻出の正文。 / 「高温装置にはクリープ強さが大きいことが要求される」も正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「炭素鋼は高温でも使用できる」は誤り。450℃を超えると強度が著しく低下する。

10. 低温装置用材料(LNG・液体窒素対応材料と温度帯別選択)

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

普通炭素鋼はLNG貯槽に不適。9%Ni鋼は液体窒素(-196℃)に使えるが3.5%Ni鋼は不可。オーステナイト系ステンレス・アルミニウムは低温材料に適する。

📖 解説(乙種ベース)

輪ゴムを液体窒素に浸してからハンマーで叩くと、ゴムは粉々に割れる。低温は材料の性格そのものを変えてしまう——これが低温装置用材料の出発点だ。だから氷点下で使用する低温用材料には、常温とは別の条件が課される。

求められる性質は4つある。①低温において脆性破壊を起こさない(低温脆性がない)、②低温において十分な強度を持つ、③溶接性・加工性が良い、④内容物に対して耐食性がある。なかでも①が最優先で、これを満たせない材料は強度が足りていても使えない。

その典型が普通の炭素鋼である。普通の炭素鋼板は液化天然ガスLNG)貯槽の内壁材料として使用できない。低温脆性が起こり、急激に脆くなるためだ。

覚える
普通炭素鋼はLNG貯槽に使えない。9%Ni鋼は液体窒素(-196℃)に使えるが3.5%Ni鋼は不可

基準になる温度は2つ。LNG-162℃、液体窒素が-196℃だ。使える材料はこの2点を境に3つの帯へ分かれる。どの帯にLNGと液体窒素が入るかを意識しながら、次の表を読んでほしい。

温度帯別の推奨材料

🖼 図解
低温装置用材料の温度帯マップ低温装置用材料の温度帯マップ
温度帯使用可能材料注意
-101℃まで炭素鋼(SiやAlのキルド鋼)・低合金鋼(NiやCr、Mn添加)
-101℃-196℃9%Ni鋼(特別な熱処理を施したもの)3.5%Ni鋼は液体窒素(-196℃)には使用できない
-196℃以下面心立方晶のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304など)・銅および銅系合金・アルミニウムおよびAl系合金

実機で何が使われているかも押さえておきたい。LNG気化器・LNGタンクには9%ニッケル鋼、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。さらに低い液体窒素(-196℃)では、オーステナイト系ステンレス、Al合金などになる。

逆に使えない側も明確だ。フェライト鋼は低温脆性を起こすため、低温材料としては不適当である。9%Ni鋼も万能ではなく、「どんな低温でも使える」わけではない。-196℃以下では、面心立方晶のオーステナイト系ステンレス鋼などに切り替える必要がある。

🟦 甲種プラスα

甲種では気体の沸点と材料の組み合わせが出る(i-ブタン/プロパン→炭素鋼Alキルド)

⚡ 焦点ポイント

「普通炭素鋼はLNG貯槽に使えない」「3.5%Ni鋼は液体窒素に使えない」は非常に頻出。 / 「オーステナイト系ステンレス鋼・アルミニウムは低温材料に適する」も正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「9%Ni鋼はどんな低温でも使える」は誤り。-196℃以下にはオーステナイト系が必要。

11. 高圧装置用材料と腐食環境(応力腐食割れ対策材料)

💡 図の見方:高圧装置の材料は場面ごとに答えが変わる、という仕分けの図。低温では脆性破壊、常温では経済性、腐食環境では応力腐食割れが判断の軸になる。「高圧設備には必ずオーステナイト系ステンレス鋼」と言い切る選択肢は誤りで、環境によってはフェライト系が適切。

重要度: 乙C / 甲C

🎯 一言で

高圧装置では低温高圧→脆性破壊に注意。常温高圧→高張力鋼(板厚削減)。応力腐食割れ対策→高純度フェライト系または二相ステンレス鋼。

📖 解説(乙種ベース)

高圧装置材料の選定では、温度・圧力・腐食環境を総合的に考慮する必要がある。天気予報を見て服を選ぶのに似ていて、気温だけ見ても、雨だけ見ても正解にはならない。ここでは温度域と腐食環境の2軸で整理する。

まず低温高圧材料(液化ガス設備など)。ここで怖いのは脆性破壊で、起きると装置全体の破壊から人命への危険が生じる。鋼材の脆性破壊は低温になるほど起こりやすいため、衝撃試験などで材料の靭性を確認する必要がある。

常温高圧材料では話が変わり、経済性が前面に出る。炭素鋼または経済性を考慮して高張力鋼を使用する。高張力鋼を使用すると軟鋼に比べて板厚を減らせるため、軽量化・コスト削減につながる。

腐食性雰囲気での選定は、さらに個別の判断になる。腐食性雰囲気ガスには硫化水素・塩化水素・炭酸ガス・アンモニア・水素などがあり、液体では各種の酸・アルカリ類が問題になる。材料選定は温度・圧力・濃度・流速・使用期間などを考慮して決定する。

中でも応力腐食割れが問題になる場合は、材料の系統ごと変える。高純度フェライト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼(フェライト・オーステナイト系)を使用する。「高圧設備には必ずオーステナイト系ステンレス鋼」と言い切る選択肢は誤りで、環境によってはフェライト系のほうが適切になる。

覚える
高張力鋼は軟鋼より板厚を減らせる/応力腐食割れ対策=高純度フェライト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼
🖼 図解
高圧装置の材料選定を分ける低温・常温・腐食環境の3場面高圧装置の材料選定を分ける低温・常温・腐食環境の3場面

⚡ 焦点ポイント

「高張力鋼を使うと板厚を減らせる」「応力腐食割れ対策→高純度フェライト系または二相ステンレス」は正文。 / 「ステンレス鋼または二相ステンレス鋼が使用されることがある」も正文として頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「高圧設備には必ずオーステナイト系ステンレス鋼を使う」は誤り。腐食環境によってはフェライト系の方が適切。
  • 「高張力鋼を使うと板厚を減らせる」「応力腐食割れ対策→高純度フェライト系または二相ステンレス」は正文
  • 「ステンレス鋼または二相ステンレス鋼が使用されることがある」も正文として頻出

12. 疲労破壊と耐久限度(繰り返し応力による破壊)

重要度: 乙B / 甲C

🎯 一言で

繰り返し応力による破壊を疲労破壊という。静的破壊応力より低い応力でも破壊が起こる。鉄鋼材料ではある応力振幅以下(耐久限度)なら無限回の繰り返しに耐える。

📖 解説(乙種ベース)

針金は一度引っ張っただけでは切れないが、同じ場所を何度も折り曲げれば手で切れる。材料に繰り返し荷重(応力の変動)を加え続けると、静的な破壊応力よりはるかに小さな応力で破壊する。この現象を疲労破壊という。

種明かしをすると、犯人は目に見えない亀裂だ。繰り返し応力によって材料内部に微小な亀裂が発生・伝播し、最終的に破断に至る。一回ごとのダメージは測りようもないほど小さいのに、回数が積み重なると致命傷になる。

特徴は3つある。①繰り返し応力の大きさが静的破壊応力以下、降伏点より小さい応力でも破壊する。②延性材料でも、目に見えるような塑性変形なしに突然破壊する。③応力振幅(変動の幅)が大きいほど、破壊までの繰り返し数が少ない。

実務で怖いのは②だ。延性材料なら大きく変形してから壊れるはず——その常識が通じず、前触れなく破断する。「延性材料は疲労破壊しない」という選択肢は、この直感への裏切りを逆手に取ったものである。

では防ぎようがないのか。鉄鋼材料では、ある応力振幅以下であれば無限の繰り返し数でも破断しない。この限界応力振幅を「耐久限度(疲労限度)」といい、設計では繰返し荷重を受ける部材の基準強さとして疲労限度を使う。

キーワード
耐久限度(疲労限度) — これ以下の応力振幅なら無限回の繰り返しに耐える限界値。繰返し荷重を受ける部材の基準強さに使う

その応力振幅とは、繰り返し荷重による最大応力と最小応力の差の半分をいう。応力振幅が小さいほど寿命が長くなる。

🖼 図解
疲労破壊(繰り返し応力)のイメージ疲労破壊(繰り返し応力)のイメージ

⚡ 焦点ポイント

「繰り返し応力による破壊現象を疲労破壊という」は正文。 / 「静的破壊応力よりはるかに小さい応力で破壊することがある」も正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「延性材料は疲労破壊しない」は誤り。延性材料でも塑性変形なく突然疲労破壊することがある。

13. クリープ損傷(高温長時間の応力でひずみが時間とともに増大)

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

クリープ:高温で長時間一定応力をかけるとひずみが時間とともに増大し引張強さより小さい応力で破壊。応力大・温度高いほど顕著。クリープ限度以下では停止。

📖 解説(乙種ベース)

本を詰めた棚板は、置いた日には真っすぐでも、何年か経つと真ん中がたわんでくる。荷重は変わっていないのに、時間だけが変形を進めたのだ。金属材料を高温において長時間一定の応力を加えておくと、これと同じことが起こる。

ひずみが時間とともに増加し、引張強さよりはるかに小さな応力で破壊する。この現象を クリープ という。特徴は3つで、①応力が大きいほど、温度が高いほど顕著に現れる、②室温設計では問題にならないが高温設備では必ず考慮が必要、③引張強さより小さい応力でも長時間で破壊に至る。

覚える
クリープ=高温・長時間・一定応力でひずみが増大。応力が大きいほど、温度が高いほど顕著

進み方には段階がある。第1期(初期クリープ)はひずみ速度が減少していく段階、第2期(定常クリープ)はひずみ速度がほぼ一定の段階、第3期(加速クリープ)はひずみ速度が急増して破断に至る段階だ。設計寿命を決めるのは、いちばん地味な第2期である。

キーワード
定常クリープ(第2期) — ひずみ速度がほぼ一定で進む段階。設計上最も重要な区間

高温でも無条件に進むわけではない。高温においても、ある応力以下ではある時間後にクリープが停止するようになる。この限界の応力を「クリープ限度」といい、実用的には「10,000時間1%のひずみを生じる応力」などで定義される。

材料側の手当てとしては、炭素鋼にモリブデン(Mo)を添加すると、高温クリープ強さを高める効果が大きい。なお「クリープは高温でしか起こらない」と言い切ると誤りだ。高分子材料は常温でもクリープが生じる(節17)。

🟦 甲種プラスα

甲種では「クリープ損傷(高温長時間の応力でひずみが時間とともに増大)」の本文の概念をより深く理解した上で、応用問題への対応が問われます。本文の数式・概念をしっかり押さえてください。

🖼 図解
クリープ曲線の3期クリープ曲線の3期

⚡ 焦点ポイント

「高温で長時間一定応力を加えるとひずみが増大する現象をクリープという」は頻出正文。 / 「クリープは応力が大きいほど、温度が高いほど顕著」も正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「クリープは高温でしか起こらない」は誤り。高分子材料は常温でもクリープが生じる。

14. 応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼の最大の欠点)

重要度: ★ 乙A / 甲C

🎯 一言で

引張応力+腐食環境で局部亀裂が発生・破断する現象。圧縮応力では起こらない。オーステナイト系ステンレス鋼が塩化物含む溶液で起こりやすい。

📖 解説(乙種ベース)

ステンレス鋼は錆びない——そう思い込んでいると足をすくわれる。内部に引張応力があるオーステナイト系ステンレス鋼を、塩化物を含む溶液中やアルカリ溶液中で使用すると、全面腐食が起こらなくても局部的に亀裂が発生し、引張強さ以下の応力で破断する。この現象を「応力腐食割れ」という。

厄介なのは、表面が一見きれいなまま進むことだ。全体が均一に減る全面腐食なら肉厚を測れば気づけるが、こちらは局部的な亀裂として内部へ潜っていく。引張応力・腐食環境・材料の3つが重なったときにだけ起こる、という条件も見落としやすい。

特徴は4つある。①引張応力によって起こるが、圧縮応力では起こらない。②応力が高いほど割れやすい。③割れを生じない限界応力は存在しない。④割れは応力に対して直角方向に、枝分かれしながら成長する。木の根が地中で枝分かれして伸びるように、内部で広がっていく。

注目したいのは③だ。疲労破壊には耐久限度という「これ以下なら無限に耐える」線があったが、応力腐食割れにはそれがない。応力を下げれば時間は稼げても、安全な下限は保証されないのである。

発生しやすい条件も押さえておく。溶液の塩素イオン濃度が約50ppmを超える場合、沸点近くの高温、そして熱交換器や凝縮器では極めて短時間で割れることがある。

覚える
引張応力では起こるが圧縮応力では起こらない。割れを生じない限界応力は存在しない

工業用水など応力腐食割れを起こす環境は多く存在するため、これがオーステナイト系ステンレス鋼の使用上最も大きな欠点とされている。対策は材料の切り替えで、高純度フェライト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼(フェライト・オーステナイト系)を使用する。

🖼 図解
応力腐食割れの3条件と割れ方応力腐食割れの3条件と割れ方

⚡ 焦点ポイント

「引張応力では起こるが、圧縮応力では起こらない」は最頻出の正文。 / 「オーステナイト系ステンレス鋼は応力腐食割れを起こすことがある」も正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「圧縮応力でも応力腐食割れが起こる」は誤り。引張応力に限定される。
  • 「引張応力では起こるが、圧縮応力では起こらない」は最頻出の正文
  • 「オーステナイト系ステンレス鋼は応力腐食割れを起こすことがある」も正文

15. 低温脆性(体心立方→脆性あり)と水素脆性・遅れ割れ

重要度: 乙C / 🟦 甲B

🎯 一言で

低温脆性:温度↓→遷移温度以下で急に脆くなる。体心立方晶(フェライト鋼)は脆性あり、面心立方晶(オーステナイト系・Al・Cu)は脆性なし。

📖 解説(乙種ベース)

冷蔵庫から出したチョコレートは、常温のものより硬い。ところが曲げようとすると、粘らずにパキッと折れる。硬いことと粘り強いことは別物だ——金属でも同じことが起こる。

金属材料は温度が下がると引張強さ・硬度は増すが、靭性(じんせい)が低下し、ある温度以下で急に脆くなり小さな衝撃でも破壊される。この現象を低温脆性という。脆くなる温度の境界を「遷移温度」という。「低温になると強度が下がる」は誤りで、下がるのは靭性のほうだ。

起こるかどうかは結晶構造で決まる。低温脆性が起こるのは体心立方晶の材料で、フェライト鋼(炭素鋼・低合金鋼)が代表格である。ほかに六方晶(Zn・Mg)、斜方晶(Sb)の金属も脆性を示す。

一方、低温脆性が起こらないのは面心立方晶の材料だ。オーステナイト系ステンレス鋼、Al・Cu・Ni・Ag・Pb などの面心立方晶金属がこれにあたる。前節の低温装置用材料でこれらが選ばれていた理由が、ここでつながる。

覚える
体心立方晶(フェライト鋼)は低温脆性あり/面心立方晶(オーステナイト系・Al・Cu)は低温脆性なし

低温とは別に、水素が引き起こす割れが2つある。ひとつが遅れ割れだ。溶接部近傍に生じる割れのうち、溶接後・室温に冷却された後、長期間経過してから生じる割れを遅れ割れ(水素脆性)という。過飽和になった水素が応力の高い部分に拡散集積し、割れに至る。

溶接直後の検査で異常がなくても後から割れる——だから「遅れ」割れと呼ばれる。遅れ割れが起こりやすい条件は、組織が硬い・水素量が多い・拘束応力が多いの3つだ。

もうひとつが高温・高圧下の水素脆性である。水素が高温・高圧で鋼中の炭素と反応してメタンを生成し、鋼材を脆くする現象で、反応は Fe₃C + 2H₂ → CH₄ + 3Fe と書ける。クロムを5〜6%以上含有するクロム鋼・ステンレス鋼では起こりにくい。

🟦 甲種プラスα

甲種では「低温脆性(体心立方→脆性あり)と水素脆性・遅れ割れ」の本文の概念をより深く理解した上で、応用問題への対応が問われます。本文の数式・概念をしっかり押さえてください。

🖼 図解
低温脆性と遷移温度低温脆性と遷移温度

⚡ 焦点ポイント

フェライト鋼(体心立方晶)は低温脆性を起こす」 / 「オーステナイト系ステンレス・Al・Cuなど(面心立方晶)は低温脆性が認められない」は頻出正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「金属は低温になると強度が下がる」は誤り。引張強さは低温で増加する(靭性は低下する)。

16. 高分子材料の種類と特徴(熱可塑性熱硬化性・エラストマー・ゴム)

重要度: ★ 乙C / 🟦 甲A

🎯 一言で

高分子材料:プラスチック(熱可塑性熱硬化性)+エラストマー(ゴム)。金属より軽く耐食性高い。熱可塑性は加熱→軟化→冷却→固化。熱硬化性は成形一回限り。

📖 解説(乙種ベース)

高分子材料は大きく、プラスチックとエラストマー(ゴム)に分かれる。プラスチックはさらに熱可塑性熱硬化性の2つだ。この分かれ方は、ロウソクと目玉焼きの違いだと思えばよい。ロウは何度でも溶かして固め直せるが、焼いた卵は二度と生卵に戻らない。

🖼 図解
高分子材料の分類ツリー高分子材料の分類ツリー
分類代表材料
熱可塑性樹脂PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PPS
熱硬化性樹脂EP(エポキシ樹脂)、PUR(ポリウレタン)、PF(フェノール樹脂)
エラストマー(ゴム)NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)

金属と比べた長所と短所ははっきりしている。長所は、軽い(比重0.9〜2.0)こと、熱伝導率が小さいこと、酸への耐食性が優れていること。短所は、耐熱性が低いことと強度が低いこと(引張強さは金属より1桁低い)だ。

熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度または融点まで加熱すると軟化し、冷えると固化する(繰り返し成形可能)。ここでいうガラス転移温度とは、非晶質部分の分子鎖が回転・振動を始める温度で、超えると剛性・粘度が低下する。ポリエチレンは都市ガス導管材料として使用される(耐腐食性・軽量)。

対する熱硬化性樹脂は、硬化剤・架橋剤で分子が三次元的に結合した樹脂で、加熱するとさらに三次元化が進む。反応は不可逆的で、成形は原則一回しか行えない(再成形不可)——焼いた卵と同じだ。エポキシ樹脂は配管・容器・ポンプなどの内面コーティング・ライニング材料として多用される。

覚える
成形が一回限りなのは熱硬化性樹脂不可逆)。熱可塑性樹脂は加熱すれば繰り返し成形できる

ゴム(エラストマー)は2種類が問われる。NBR(ニトリルゴム)は永久変形・耐摩耗・耐油性に優れるが耐候性は低い。EPDM は耐候性・対溶剤性・耐無機薬品性に優れ、温水シール材として使用される。

🟦 甲種プラスα

熱可塑性樹脂はガラス転移温度以上で軟化する」「熱硬化性樹脂の成形は一回限り」は甲種頻出

⚡ 焦点ポイント

熱可塑性樹脂はガラス転移温度以上で軟化する」「熱硬化性樹脂の成形は一回限り」は甲種頻出。 / 「高分子材料は金属より熱伝導率が小さい・酸への耐食性が高い」は正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「熱可塑性樹脂は成形が一回限り」は誤り。一回限りなのは熱硬化性樹脂。熱可塑性は繰り返し成形できる。

17. 高分子材料の特性(強度・クリープ特性・熱酸化・光劣化・環境応力割れ)

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

高分子材料の引張強さは金属より小さく(20〜100MPa)。常温でもクリープが生じる。劣化機構:熱酸化劣化・光劣化・環境応力割れ。

📖 解説(乙種ベース)

ベランダの洗濯ばさみは、何年か使ううちに白っぽくなり、ある日ぱきっと折れる。買った日には柔らかかったはずのプラスチックが、日光と時間で別物になっていたわけだ。高分子材料では、この「時間とともに変わる」性質が設計の主役になる。

まず機械的特性を金属と比べておく。

項目高分子材料の値
引張強さ20〜100 MPa(金属材料より約1桁低い)
比重0.9〜2.0(金属の1/8〜1/4程度)
伸び非常に大きい(ポリプロピレンで200〜700%
弾性率(ヤング率)金属より低い

金属と決定的に違うのがクリープだ。高分子材料は常温でもクリープが生じる点が金属と大きく異なる。クリープ破壊とは、一定応力がかかった状態で時間が経つと亀裂が発生して破壊することで、温度が高いほど顕著になる。クリープ破壊までの時間は、応力が小さいと長くなる。

逆向きの現象もある。応力緩和は、一定のひずみ下で応力が時間とともに低下する現象で、クリープの逆にあたる。ボルト締め付けなどで問題になる——締めたはずのボルトが、締め具合はそのままで力を失っていく。

覚える
高分子材料のクリープは常温でも生じる(金属との最大の違い)。応力緩和はその逆で、ひずみ一定・応力低下

劣化の機構は3つある。①熱酸化劣化は、高温・長時間使用で熱と酸素によって分子鎖が切断される現象で、色相変化・表面に微細な亀裂・破断伸び(衝撃強度)の低下として現れる。②光劣化は、紫外線によって化学結合エネルギー以上のエネルギーを吸収し、分子鎖が切断・分解する現象だ。こちらも熱酸化劣化と同様の外観変化(色相変化・微細な亀裂・破断伸び低下)を示す。

③環境応力割れは、応力と環境要因(化学物質)の相互作用で亀裂が発生する現象である。溶剤・油・界面活性剤などが原因になる。厄介なのは事前予測が困難な点で、個々のケースで事前に確認が必要になる。

🟦 甲種プラスα

「高分子材料のクリープは常温でも生じる」は甲種頻出の正文(金属との違い)

⚡ 焦点ポイント

「高分子材料のクリープは常温でも生じる」は甲種頻出の正文(金属との違い)。 / 「クリープ破壊までの時間は応力が小さいと長くなる」も正文。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 「高分子材料は金属より引張強さが高い」は誤り。高分子材料の引張強さは金属より約1桁低い。

🔢 計算問題のための準備

主要式:

– 応力 σ = P/A(力÷断面積、単位 Pa or N/mm²)

– ひずみ ε = λ/L(変形量÷元の長さ、無次元)

フックの法則 σ = Eε(比例範囲、Eはヤング率)

– 薄肉円筒の円周応力 σt = PD/2t、軸応力 σz = PD/4t

– 安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力(常に1以上)

主要金属のヤング率(GPa): 鋼=200、アルミ=70、銅=120、チタン=110

炭素鋼の使用温度範囲: 約−10℃450℃(これを超えると特殊鋼が必要)

計算問題で失点する最大の原因は単位ミス。代入前に「絶対圧か?」「絶対温度か?」「単位は揃っているか?」を必ず確認。

🧮 計算例題(過去問を解き切る)

この章の内容が本試験でどう問われるか、実際の過去問で「立式→計算→答え」まで通しで確認しましょう。まず自分で解いてから「解き方をみる」を開くのがおすすめです。

🧮 解き切り例題①(令和6年度 乙種 問15)

ある延性材料の試験片について、常温で引張試験を行ったところ、降伏点での引張応力が450MPaであった。この材料を許容応力90MPaで使用するときの安全係数として、最も近い値はどれか。

(1) 0.2 (2) 0.5 (3) 2 (4) 5 (5) 10

▶ 解き方をみる(まず自分で立式してから!)
  1. 安全係数の定義: S=基準強さ(降伏点応力)÷許容応力
  2. S=450÷90
  3. S=5

✅ 答え: (4) 5

⚠ よくあるミス: 式を逆にして90÷450=0.2を選んでしまう(安全係数は必ず1以上!)

🧮 解き切り例題②(令和5年度 乙種 問15)

ある金属材料に一定の力を加えた。引張応力が200kPa、原断面積Aが100cm²のとき、力(kN)として最も近い値はどれか。

(1) 0.02 (2) 2 (3) 200 (4) 20000 (5) 2000000 [kN]

▶ 解き方をみる(まず自分で立式してから!)
  1. 応力の定義: σ=F/A → F=σ×A
  2. 単位をSIに揃える: σ=200kPa=200×10³N/m²、A=100cm²=0.01m²
  3. F=200×10³×0.01=2000N
  4. F=2kN

✅ 答え: (2) 2kN

⚠ よくあるミス: 面積の単位換算(cm²→m²は1/10000)ミス/NとkNの取り違え

🗒️ 3分で復習(章末まとめ)

🎯 全節 一言まとめ

  • 節1 応力の定義と3種類(引張・圧縮・せん断)σ = P/A: 応力σ = P/A(力÷断面積)。引張応力・圧縮応力・せん断応力の3種類。単位はMPa(= N/mm²)。
  • 節2 ひずみの定義(縦ひずみ・横ひずみ・せん断ひずみ)ε = λ/l: ひずみ ε = 変形量λ ÷ 元の長さl。無次元(単位なし)。伸縮方向が縦ひずみ、直角方向が横ひずみ。
  • 節3 応力ひずみ線図の特徴点(A比例限度〜F破断点)とフックの法則: A:比例限度フックの法則σ=Eε)、B:弾性限界、C/D:上/下降伏点、E:最大荷重点(引張強さ)、F:破断点。銅・高張力鋼は降伏点が明確に現れず0.2%耐力を使う。
  • 節4 許容応力と安全率(安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力): 許容応力 = 基準強さ(破損限度)÷ 安全率。安全率は大きいほど余裕がある設計。使用状況で基準強さが変わる。
  • 節5 薄肉円筒の強度(円周応力 σt = PD/2t、軸応力 σz = PD/4t): 薄肉円筒の内圧Pによる応力:円周応力(フープ応力)σt = PD/2t、軸応力 σz = PD/4t。円周応力は軸応力の2倍。
  • 節6 炭素鋼の基本特性(炭素量と引張強さ・伸びの関係): 炭素鋼は鉄+炭素の合金。炭素量↑→引張強さ・硬度↑、伸び・絞り↓。C≦0.30%:低炭素鋼、0.30〜0.45%:中炭素鋼、0.45%以上:高炭素鋼。
  • 節7 炭素鋼の不純物(リンPと硫黄Sが鋼に与える悪影響): リン(P):硬さ・引張強さ↑、伸び↓、延性→脆性の遷移温度を大きく上げる(低温脆性悪化)。硫黄(S):結晶粒界を弱め、熱間加工中に割れやすくし機械的強度↓。
  • 節8 特殊鋼と添加元素の効果(Ni・Mn・Cr・Mo・W): Ni・Mn→オーステナイト生成元素(耐低温性・靭性向上)。Cr・Mo・W→フェライト生成元素(耐食・耐熱・高温クリープ強さ向上)。
  • 節9 高温装置用材料(炭素鋼の使用限界450℃・特殊鋼の必要性): 炭素鋼の使用限界は約450℃。それ以上では黒鉛化現象で強度が著しく低下するため、Mo鋼・Cr-Mo鋼・ステンレス鋼などの特殊鋼を使用。
  • 節10 低温装置用材料(LNG・液体窒素対応材料と温度帯別選択): 普通炭素鋼はLNG貯槽に不適。9%Ni鋼は液体窒素(-196℃)に使えるが3.5%Ni鋼は不可。オーステナイト系ステンレス・アルミニウムは低温材料に適する。
  • 節11 高圧装置用材料と腐食環境(応力腐食割れ対策材料): 高圧装置では低温高圧→脆性破壊に注意。常温高圧→高張力鋼(板厚削減)。応力腐食割れ対策→高純度フェライト系または二相ステンレス鋼。
  • 節12 疲労破壊と耐久限度(繰り返し応力による破壊): 繰り返し応力による破壊を疲労破壊という。静的破壊応力より低い応力でも破壊が起こる。鉄鋼材料ではある応力振幅以下(耐久限度)なら無限回の繰り返しに耐える。
  • 節13 クリープ損傷(高温長時間の応力でひずみが時間とともに増大): クリープ:高温で長時間一定応力をかけるとひずみが時間とともに増大し引張強さより小さい応力で破壊。応力大・温度高いほど顕著。クリープ限度以下では停止。
  • 節14 応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼の最大の欠点): 引張応力+腐食環境で局部亀裂が発生・破断する現象。圧縮応力では起こらない。オーステナイト系ステンレス鋼が塩化物含む溶液で起こりやすい。
  • 節15 低温脆性(体心立方→脆性あり)と水素脆性・遅れ割れ: 低温脆性:温度↓→遷移温度以下で急に脆くなる。体心立方晶(フェライト鋼)は脆性あり、面心立方晶(オーステナイト系・Al・Cu)は脆性なし。
  • 節16 高分子材料の種類と特徴(熱可塑性・熱硬化性・エラストマー・ゴム): 高分子材料:プラスチック(熱可塑性熱硬化性)+エラストマー(ゴム)。金属より軽く耐食性高い。熱可塑性は加熱→軟化→冷却→固化。熱硬化性は成形一回限り。
  • 節17 高分子材料の特性(強度・クリープ特性・熱酸化・光劣化・環境応力割れ): 高分子材料の引張強さは金属より小さく(20〜100MPa)。常温でもクリープが生じる。劣化機構:熱酸化劣化・光劣化・環境応力割れ。

⚡ 全節 焦点ポイント

  • 節1: 乙種では「σ = P/A を使って引張応力・せん断応力・断面積を計算する」問題が頻出。 / 「引張応力は力に比例し断面積に反比例する」は正文として覚える。
  • 節2: 「ひずみは無次元(単位なし)」は選択肢でよく問われる。 / 「ひずみは伸縮方向だけでなく直角方向にも生じる」も正文として頻出。
  • 節3: 軟鋼のA〜F各点の名称と意味を確実に把握すること(特にD:降伏点、E:引張強さ)。 / 「降伏点を超えると塑性変形が生じる」「銅では降伏点が明確に認められない」は頻出。
  • 節4: 「許容応力 = 基準強さ / 安全率」の式を覚え、3つの量のうちどれかを求められるようにする。 / 「延性材料では降伏点が基準強さ」「高温ではクリープ限度」「繰返しでは疲労限度」の対応を整理。
  • 節5: 「円周応力は軸応力の2倍」は乙種甲種ともに頻出の正文。 / 甲種では σt と σz の式を直接書かせる問題が出る。
  • 節6: 「炭素量が増えると引張強さ・硬度が増し、伸び・絞りが小さくなる」は頻出の正文。 / 低炭素鋼の炭素量「0.30%以下」という数値も覚えておく(高炭素鋼は0.45%以上)。
  • 節7: 「リンは伸びを減らし、遷移温度を上昇させる(低温脆性を悪化)」は甲種頻出。 / 「硫黄は結晶粒界を弱くし、熱間加工中に割れを起こしやすい」も正文として頻出。
  • 節8: 「オーステナイト→Ni・Mn、フェライト→Cr・Mo・W」の分類を確実に覚える。 / 「Ni添加で耐低温性が増す」「Cr添加で耐酸化性・耐熱性が向上」「Mo添加で高温クリープ強さ向上」も頻出。
  • 節9: 「炭素鋼の使用限界は450℃」「450℃以上では黒鉛化現象で強度低下」は頻出の正文。 / 「高温装置にはクリープ強さが大きいことが要求される」も正文。
  • 節10: 「普通炭素鋼はLNG貯槽に使えない」「3.5%Ni鋼は液体窒素に使えない」は非常に頻出。 / 「オーステナイト系ステンレス鋼・アルミニウムは低温材料に適する」も正文。
  • 節11: 「高張力鋼を使うと板厚を減らせる」「応力腐食割れ対策→高純度フェライト系または二相ステンレス」は正文。 / 「ステンレス鋼または二相ステンレス鋼が使用されることがある」も正文として頻出。
  • 節12: 「繰り返し応力による破壊現象を疲労破壊という」は正文。 / 「静的破壊応力よりはるかに小さい応力で破壊することがある」も正文。
  • 節13: 「高温で長時間一定応力を加えるとひずみが増大する現象をクリープという」は頻出正文。 / 「クリープは応力が大きいほど、温度が高いほど顕著」も正文。
  • 節14: 「引張応力では起こるが、圧縮応力では起こらない」は最頻出の正文。 / 「オーステナイト系ステンレス鋼は応力腐食割れを起こすことがある」も正文。
  • 節15: 「フェライト鋼(体心立方晶)は低温脆性を起こす」 / 「オーステナイト系ステンレス・Al・Cuなど(面心立方晶)は低温脆性が認められない」は頻出正文。
  • 節16: 「熱可塑性樹脂はガラス転移温度以上で軟化する」「熱硬化性樹脂の成形は一回限り」は甲種頻出。 / 「高分子材料は金属より熱伝導率が小さい・酸への耐食性が高い」は正文。
  • 節17: 「高分子材料のクリープは常温でも生じる」は甲種頻出の正文(金属との違い)。 / 「クリープ破壊までの時間は応力が小さいと長くなる」も正文。

📛 頻出ひっかけ・誤答パターン(過去問の実データ 34件分析)

この章で実際に出題された誤り選択肢を類型化しました。傾向:正負・方向の逆転14件 / 用語のすり替え11件 / 数値の取り違え5件 / 定義の混同2件。

  • 正負・方向の逆転(基R7問14)
    誤】常温では発生しない
    正】常温でも発生する
  • 用語のすり替え(基R7問14)
    誤】メタン: 炭素鋼(Alキルド)
    正】メタン(沸点約-162℃)には9%Ni鋼・オーステナイト系ステンレス・Al合金等の極低温用材料を用いる
  • 数値の取り違え(基R6問14)
    誤】σt=PD/(4t)、σz=PD/(2t)
    正】σt=PD/(2t)、σz=PD/(4t)
  • 定義の混同(基R2問14)
    誤】元に戻る変形を塑性変形
    正】元に戻る変形を弾性変形
  • 因果関係の誤り(基R5問14)
    誤】基準強さ(破損限度)と安全係数(安全率)の積
    正】基準強さ(破損限度)を安全係数(安全率)で割った値
  • 適用範囲の拡大解釈(基R1問15)
    誤】黒鉛化現象によって強度が著しく低下しないこと
    正】黒鉛化現象による強度低下は450℃以上の高温で炭素鋼に生じるもので、低温装置材料に要求される性質とは異なる
  • 正負・方向の逆転(基R5問15)
    誤】組織が軟らかいほど
    正】組織が硬いほど
  • 用語のすり替え(基R7問15)
    誤】赤外線
    正】紫外線
  • 数値の取り違え(基R6問14)
    誤】σt=PD/(4t)
    正】σt=PD/(2t)
  • 定義の混同(基R2問14)
    誤】破断するまでにほとんど塑性変形を伴わない材料である
    正】延性材料とは破断するまでに大きな塑性変形を伴う材料である(塑性変形をほとんど伴わないのは脆性材料)
  • 正負・方向の逆転(基R4問15)
    誤】応力が小さいほど顕著
    正】応力が大きいほど顕著
  • 用語のすり替え(基R6問14)
    誤】破損限度
    正】耐久限度

📝 関連過去問

この章の知識が問われる過去問題リスト(全14問)。

ℹ️ 乙種・甲種は別の試験です。同じ問番号(例: 基問10)であっても、乙種と甲種では出題される問題内容は異なります。各年度・種別ごとの本文は 乙種過去問 / 甲種過去問 ページから確認してください。

乙種(8問)

令和7年: 基問14 / 基問15

令和6年: 基問14 / 基問15

令和5年: 基問14 / 基問15

平成27年: 基問14 / 基問15

甲種(6問)

令和7年: 基問14 / 基問15

令和6年: 基問14 / 基問15

令和5年: 基問14 / 基問15

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