テキスト
LNGが都市ガスになるまで
受入設備
アンローディングアーム
- LNG船(海上)とLNG基地(陸上)の配管を接続するもの。
- ジョイント(継ぎ目):360°回転するスイベルジョイント
- 材質:一般的にオーステナイト系ステンレス鋼
リターンガスブロア
- LNG受け入れ時にLNG船内のタンクの内圧を一定に保つため、BOGをLNG貯蔵(陸上)からLNG船(海上)に送るもの。
LNG貯槽(タンク)
- LNGを貯蔵しておくため低温靭性の材料が用いられる
- タンクの外部との熱の出入りを防ぐ構造
- 保冷剤には熱伝導率&吸水率が低いことが求められる
- 地上式(4種類)、地中式(1種類)、地下式(1種類)の計6種類
PC式平底円筒形貯槽(地上式)
- 外部との熱の出入りを防ぐため内槽と外層の間には、断熱材(パーライト)と不活性ガス(窒素)が充填
- タンクの外側にPC(プレストレストコンクリート)の防液堤
金属二重殻式平底円筒形貯槽(地上式)
- 内槽と外槽の間に断熱材と不活性ガス
- タンクの周辺に防液堤
- 窒素ガスの圧力変化を吸収するブリージングタンクがある
その他の地上式タンク
常圧断熱式円筒形貯槽 | 真空断熱式円筒形貯槽 |
内外槽の間は断熱材と不活性ガス | 内外槽の間は断熱材のみで真空 |
現地での組立により大きな貯槽とすることが可能 | 工場での組み立てのため容量は制限される |
サテライト基地でも用いられる |
地中式(ピットイン)貯槽
- 構造と材質は金属二重殻式平底円筒形貯槽と同様
- LNGはポンプバレルにて受入・払出
メンブレン式コンクリート平底円筒形貯槽(地下式)
- 断熱材の内側にメンブレンというステンレス製の板を設置
- メンブレンはコルゲーションという波型の加工がされており、LNGの動きによる熱収縮に対応
- LNGはポンプバレルにて受入・払出
BOG処理設備
- LNGの受け入れ時等に発生するBOGを処理する設備
(LNG貯槽内の内圧の上昇の防止のため)
BOG圧縮機
- BOGを圧縮して高圧化する設備(液化・圧送等のため)
往復式(レシプロ式) | 遠心式(ターボ型) | 回転式スクリュー型 | |
仕組み | シリンダ内のガスをピストンの往復運動で圧縮 | 羽根車の遠心力により圧縮 | ローターの回転に伴う容器内の体積の変化により圧縮 |
ガス流量による圧力変化 | あまり変化なし 吐出管を絞ると圧力上昇 |
変化するが限度あり | 変化するが広範囲にわたりほぼ一定 |
ガス比重による圧力上昇 | ほぼなし | 比例して上昇 | ほぼなし |
サージング | なし | あり | なし |
効率 | 高い | 低い | 高い |
容量調整 | 段階的に可能 クリアランス弁等を使用 |
比較的容易 流量を絞るとサージングの可能性 |
容易に連続調整可 スライド弁を使用 |
振動 | 大きい | 小さい | 小さい |
脈動 | あり | なし | なし |
据付面積 | 大きい | 小さい | 小さい |
その他特徴 | スナッバタンク要 | 低温仕様なし |
サージング
- 少ない流量で運転した際に吐出圧力や流量が不安定になり、騒音や振動により設備が運転できなくなる現象のこと。圧縮機やポンプで注意が必要。
LNGポンプ
- 製造設備の様々な箇所で次のようなポンプが使用される
各種ポンプ組の仕みと特徴
容積式ポンプ | 非容積式ポンプ(ターボ式) | |||
往復 | ロータリー | うず巻き | 斜流 | 軸流 |
シリンダー内のピストン運動等 | ケース内の軸の回転 | 羽根車の回転による遠心力 | うず巻きと軸流の中間 | 羽根車の回転による揚力 |
付臭ポンプや薬注ポンプで使用(容量を正確制御) | 幅広い用途で使用 | |||
サージングなし | サージングあり | |||
吐出量が脈動する | 吐出量の脈動はほとんどない | ガス製造所で最も主流 据付面積が小 |
ポンプのキャビテーション
- ポンプでは羽根車付近が低圧となり、気泡が発生しやすい。その気泡が羽根車の高圧部分で押しつぶされることにより騒音や振動が生じ、ポンプの効率低下や吐出量の減少につながる。
ポンプのキャビテーション対策
- 気泡抑止のため、羽根車付近の圧力を飽和蒸気圧以上にする
- 有効吸込ヘッドを必要有効吸込ヘッドより大きくする
- 吸込配管をなるべく太く短くし、付属物を少なくする
気化器
- LNGを液体から気体へ気化させる設備
ベースロード用
- 主に長時間稼働することを想定。設備費が高く運転費が低いものが多い
- オープンラック式、シェルアンドチューブ式が該当
ピークシェービング用
- 起動・停止を頻繁に行うことを想定。運転費が高く設備費が低いものが多い
- サブマージド式が該当
オープンラック式気化器
- パネル状になった伝熱管(フィンチューブ)内をLNGが流れ、パネルの外面を流れる海水との熱交換により気化するもの
- パネルの材質アルミ二ウム合金、海水と接する面は防食対策としてアルミ亜鉛合金が溶射されている
- 膜沸騰や飛沫同伴への注意が必要
膜沸騰:LNGが沸騰し、蒸気膜が形成され、熱伝達性能が低下する現象
飛沫同伴:LNGが完全に気化されずに飛沫となって出ていく現象
シェルアンドチューブ式気化器
- プロパンや温水と熱交換
- 温水式のものはサテライト基地等で使用される
サブマージド式気化器
- 水槽の中にLNGの管(熱交換器)を沈め、燃焼ガスによる水温上昇と水流で気化させるもの(水中燃焼を利用)
エアフィン式気化器
- 大気(空気)との熱交換で気化されるもの。(省エネルギー)
- 主にサテライト基地で用いられる
- 空気中の水分がチューブの表面に着霜、着氷すると効率がさがる
長時間運転すると解氷作業が必要となる
気化器を複数持ち、切り替えながら運転させることで性能回復させる - 周囲の空気を霧状にすることも
→冷気を拡散させるファンをつける、敷地境界との距離を十分にとる
LNG配管
- 低温靭性に優れた材料
- 原則として溶接継手構造、ただしメンテナンスのが容易に行えるよう必要に応じてフランジ継手部を設ける
- 運転開始時、メンテナンス時のためベント・ドレン排出装置を設ける
- 液封の恐れのあるところには異常圧力防止措置(圧力逃し弁) を講ずる
- 熱収縮、熱膨張を考慮し必要に応じ配管ループを設ける
LNG出荷
- LNGの受入~貯蔵の後、LNG(液体のまま)として出荷される場合もある
内航船出荷
- 1次基地から2次基地へ船で輸送
ローリー出荷
- トラックの貯槽に充填して輸送
- 主にサテライト基地への出荷に用いられる
ガスホルダー
- ガスを貯蔵しておき需要変動に対して製造能力が不足する際に供給する
- 停電等で一時的な製造支障、供給支障の際に供給する
- 需要地近辺に設置することで導管輸送量を補完する
球形ガスホルダー
- 最高使用圧力が高圧・中圧・低圧すべて建設が可能
- プレス加工した鋼材を球体に溶接して作られる
- 容積は球形の幾何容積ではなく、貯蔵ガス量の大気における容積
- 表面積が少ないので円筒形ガスホルダーに比べ単位貯蔵ガス量あたりの使用鋼材量が少ない
円筒形ガスホルダー
- 最高使用圧力が中圧・低圧のものが建設可能
- 小容量のガス貯蔵に適している
- 構造が比較的シンプルでコンパクトなため運搬・据付が容易
動画コンテンツ
ミニテスト
第1問
第2問
第3問
第4問
第5問
第6問
第7問
第8問
第9問
過去問題
第1問
都市ガスの製造設備に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)エアフィン式気化器は、まわりの空気が冷却され空気中の湿分が霧状となることがあるため、敷地境界までの距離を十分とるか、冷気を拡散するためのファンを設ける等の対策が必要になる。
(2)オーステナイト系ステンレス鋼をLNG配管に使用する場合は、極低温によって生じる熱収縮を吸収するため、必要に応じ配管ループ等を設ける。
(3)LPGは、常温で加圧することで容易に液化貯蔵が可能であり、一般的に加圧式の貯槽としては、円筒形貯槽と球形貯槽が用いられる。
(4)LNGローリーから貯槽へのLNGの受入作業には、基地側に設けられた加圧蒸発器を用いる場合と、LNGローリー側に設けられた加圧蒸発器を用いる場合もある。
(5)真空断熱式円筒形LNG貯槽は、PC(プレストレストコンクリート)式平底円筒形LNG貯槽とほぼ同じ構造であり、LNG貯槽と防液堤を一体化した貯槽である。
第2問
都市ガスの製造設備に関する次の記述のうち、いずれも誤っているものの組み合わせはどれか
(イ)オープンラック式LNG気化器は、サブマージド式LNG気化器と比較して運転費が安いため、ベースロード用に用いられることが多い。
(ロ)円筒形ガスホルダーは、表面積が少ないので球形ガスホルダーに比べ、単位貯蔵ガス量あたりの使用鋼材量が少ない。
(ハ)LNG配管は、必ず溶接継手構造とし、フランジ部を設けてはならない。
(二)LNGサテライト基地用ローディングアームは、金属パイプとスイベルジョイントを組み合わせたものであり、各スイベルジョイントを支点として自由に動くことができる。
(ホ)LNGローリーは、二重殻式横置円筒型の超低温容器が固定されており、内槽は低温じん性の高いステンレス鋼が使用されている。
(4)ロ、ホ(5)二、ホ
第3問
BOG圧縮機に関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか
(1)回転式スクリュー型圧縮機は、圧力が変化してもガス流量はほぼ一定である。
(2)回転式スクリュー型圧縮機は、脈動がほとんど発生しない。
(3)遠心式圧縮機は、ガスの組成や比重による吐出圧力の変化がほとんどない。
(4)往復式レシプロ型圧縮機は、サージングが発生する。
(5)往復型レシプロ型圧縮機は、機械的接触部分が多く、摩耗による効率の低下がある。
(4)ハ、二(5)ハ、ホ
第4問
LNG配管に関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか
(イ)配管材料は、低温靭性に優れた材料を用いる。
(ロ)配管は、原則としてフランジ継手構造とする。ただし、メンテナンスが容易に行えるように必要に応じ溶接継手部を設ける。
(ハ)熱収縮、熱膨張を考慮し、必要に応じ配管ループ等を設ける。
(二)弁により液が配管中に封じこめられるおそれのあるところには、必要に応じ液の異常圧力降下を防ぐための措置を講ずる。
(ホ)運転開始時又はメンテナンス時に管内部の流体(液体又はガス)が容易に置換できるように、ベンド装置やドレン排出装置を設ける。
(4)ハ、ホ(5)二、ホ
第5問
都市ガスの製造設備に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)BOG再液化設備の直接混合方式では、電力削減効果を得られるが、LNG貯槽内のLNGの濃縮対策には有効ではない。
(2)エアフィン式気化器は、運転費が低廉でベースロード用として使用されるが、長時間運転すると空気中の水分が伝熱管の表面に氷となって付着し、連続運転時間に制約が生ずる。
(3)LNGポンプは、軸受に過大なスラスト荷重がかからないようにするため、バランス機構を設けている。
(4)玉形弁(グローブ弁)は、弁体が弁座面に垂直に開閉する形状で、流れの方向に変化がなく、流体の圧力損失が小さい。
(5)大口径のLNG配管においては、直接低温液を導入することにより配管の上下方向に温度分布が生じ、上下の熱収縮差によりボーイング現象が発生する。
第6問
製造所で使用されるポンプに関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか
(イ)往復ポンプは、正確に容量を制御する場合に適しており、吐出量が脈動することはほとんどない。
(ロ)斜流ポンプは、遠心力と羽根の揚力によって圧力を生じるものである。
(ハ)うず巻きポンプは、他の型式のポンプに比べ軽量であり、据付面積をとらない。
(二)ポンプの性能曲線図は、ポンプの規定回転数における吐出量、全揚程、ポンプ効率、軸動力等の関係を示すものである。
(ホ)キャビテーションを防止するためには、有効吸込みヘッドを必要有効吸込みヘッドより小さくする必要がある。
(4)ハ、二(5)ハ、ホ