【特集】認定高度保安実施事業者 — 5つの特例で「何が免除され、何が残るか」

2022年改正の新制度R7に甲・乙で同時出題 認定高度保安実施事業者は、高度な保安体制を国が認定し、その代わりに手続の一部を省く制度です。 出題の核心は「何が免除され、何が残るか」。特例が5つ並ぶため、まとめて覚えると必ず取り違えます。

1. どういう制度か

2022年(令和4年)のガス事業法改正で新設されました。保安の担い手不足とデジタル技術の進展を背景に、 高い保安レベルを自力で維持できる事業者には、国への手続を軽くしてよいという考え方の制度です。

認定を受けられるのはガス小売事業者だけではありません。4つの事業類型すべてに用意されています。

事業類型根拠条文呼び名
ガス小売事業者法34条の2認定高度保安実施ガス小売事業者
一般ガス導管事業者法71条の2(71条の3で準用)認定高度保安実施一般ガス導管事業者
特定ガス導管事業者法84条の2(84条の3で準用)認定高度保安実施特定ガス導管事業者
ガス製造事業者法104条の2(104条の3で準用)認定高度保安実施ガス製造事業者
読み方のコツ
条文の本体はすべてガス小売事業者の34条の2〜34条の13に書いてあり、他の3類型はそれを準用しているだけです。 つまり34条の2〜13を1回覚えれば4類型ぶんになります。試験では「一般ガス導管事業者」で出題されることが多いですが、中身は同じです。

2. 認定の入口と出口

認定の基準(法34条の3)— 2つの柱

第1号組織が、その業務遂行能力を持続的に向上させる仕組みを有すること(ほか省令の基準)
第2号保安の確保の方法高度な情報通信技術を用いたものであること(ほか省令の基準)

認定を受けられない者(法34条の4)

いずれも2年が基準です。

ガス工作物の使用を開始した日から2年を経過しない者
自らの責めに帰すべき事由でガスによる災害を発生させた日から2年を経過しない者
法令違反で罰金以上の刑に処せられ、執行を終わった日等から2年を経過しない者

更新(法34条の5・施行令5条)

ここが狙われます。法律は「5年以上10年以内において政令で定める期間ごと」としか書いていません。 実際の年数は施行令5条で「7年」と定められています。
つまり「7年ごとに更新」は正しい。法律だけ読んで「5年」「10年」と答えさせるのが引っかけの型です。

取消し(法34条の8)

災害を発生させたとき、災害の発生のおそれのある事故を発生させたとき、認定基準に適合しなくなったとき等に、経済産業大臣は認定を取り消すことができます。

3. 5つの特例 — 何が免除され、何が残るか

図1 認定を受けると何が変わるか — 5つの特例と、残る義務
通常のガス事業者 認定高度保安実施事業者 保安規程を定めたら 届出 届出 不要(保存+求めに応じ提出) 主任技術者の選任・解任を 届出 届出 不要(記録の作成・保存) 工事計画を 事前に届出 事前届出 不要(完成後30日以内に事後届出) 使用前に 登録検査機関の検査 機関の検査は不要/自主検査は必要 自主検査を 定期に実施 「定期に」は不要(省令の定めで実施) ※ さらに「保安の確保のための組織・方法の変更」は、認定事業者でも届出が必要(法34条の6)
条文対象免除されるもの残る義務
34条の9保安規程の制定・変更届出保存し、求められたら速やかに提出
34条の10ガス主任技術者の選任・解任届出選任・解任の記録を作成し保存
34条の11工事計画事前の届出完成後30日以内に事後届出
34条の12使用前検査登録検査機関の検査自主検査は必要(行った後でなければ使用不可)+記録の作成・保存
34条の13定期自主検査定期に」行うこと省令の定めるところにより実施
1行でまとめると
特例は「届出が記録に置き換わる」「事前が事後になる」「第三者検査が自力検査になる」の3種類しかありません。 検査や記録そのものが消える特例は1つもないのが、この制度の設計思想です。

4. 頻出のひっかけ(実際に問い合わせが来た箇所)

ひっかけ① 「保安規程の変更」と「組織・方法の変更」
特例で届出が要らなくなるのは保安規程(34条の9)です。
一方、保安の確保のための組織又は方法に変更があったときは、遅滞なく届出が必要(34条の6)。 認定の土台そのものが変わるためで、こちらは免除されません。
ひっかけ② 「使用前の自主検査」と「定期自主検査」
34条の12で免除されるのは登録検査機関による使用前検査だけ。条文は続けて 「自主検査を行つた後でなければ、当該ガス工作物を使用してはならない」と定めています。
「定期に行わなくてよい」のは定期自主検査(34条の13)の話で、別物です。
ひっかけ③ 工事計画の事後届出は「30日以内」
14日・20日に書き換える誤りが定番です。30日と覚えてください(34条の11)。
個数を答える問題では、正解番号だけでは検算できません。
令和7年度の出題は、正しい肢の組み合わせが変わっても合計が同じ「3個」になる構造でした。 「答えが合っているから自分の理解も合っている」とは限りません。肢ごとに条文で確かめる癖をつけてください。

5. 出題実績

制度が新しいため、出題は令和7年度が最初です。ただし甲種・乙種の両方で、しかも同一の5肢が使われました。

甲種 法令 R7問6(正しいものはいくつあるか)乙種 法令 R7問6(いずれも誤っているものの組合せ)
頻度が低いから捨てる、は危険です。
過去問9年分では2問しかありませんが、これは制度が2022年にできたばかりだから。 古くて出なくなった論点とは意味が正反対で、これから増える側です。 初出の年に甲乙同時に出したことからも、出題側が重視しているのが分かります。

6. 一問一答ドリル(全12問・ランダム出題)

記述が正しいか誤りかを判定してください。答え・理由・条文の出典が出ます。

次の記述は 正しい? 誤り?0 / 0

あわせて読む

法令3章 保安規程とガス主任技術者(34条の9・34条の10の土台)
法令2章 ガス事業の許可・運営
過去問題(9年分・全問解説) ・模擬試験 ・特集一覧

出典 ガス事業法(昭和29年法律第51号)第34条の2〜第34条の13、第71条の2・第71条の3、 第84条の2・第84条の3、第104条の2・第104条の3/ガス事業法施行令(昭和29年政令第68号)第5条。 条文はいずれも e-Gov 法令検索で確認しています(2026年7月時点)。
出題実績は当サイトの過去問データベース(9年・1,044問)に基づきます。
※法改正があった場合は本ページを更新します。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。