
製造所の保安・防災管理を扱う章です。保安規程・管理組織・防災基本(平常時・災害時)、レイアウト規制・予防設備、監視・連絡設備・拡大防止設備までを整理します。論述問題の主軸の一つ。
乙種・甲種兼用 / 全3節 / 学習目安: 30〜60分
💡 このページの読み方
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📍 はじめに
LNG基地は災害が起きると影響が大きい施設です。だから、平常時から「予防」「監視」「拡大防止」の3層で備えています。この章はガス主任論述で「防災」をテーマにする際の核となります。
📚 テキスト解説
各節は次の構成で進みます。
– 🎯 一言で
– 📖 解説(乙種ベース)
– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)
– ⚡ 焦点ポイント
– 📝 過去問のひっかけ例
6-1. 保安・防災管理(保安規程・管理組織・防災の基本)
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
ガス事業法に基づく保安規程の作成・届出義務、保安管理組織の構成、防災の基本方針(未然防止・極小化・早期復旧)と災害対策の目標を理解する。
📖 解説(乙種ベース)
製造所で誰が保安の責任を負い、非常時に誰がどう動くのか。これを事業者ごとに文書で決めさせるのが保安規程である。ガス事業法は、ガス工作物の工事・維持・運用の保安を確保するため、これを作成して「届け出る」ことを求めている。試合前に提出する野球のポジション表のようなものだ。
ここで一つ、確実に押さえるべき区別がある。保安規程は届出であって、認可を受けるものではない。国のお墨付きをもらう手続きではなく、決めた内容を届け出る手続き——出題者はこの一語をすり替えてくる。
では、そこに何を書くのか。保安規程に定めるべき事項は次の9つである。「人を決める」「行為を決める」「記録を残す」の順に並んでいると見ると、頭に入りやすい。
| 項 | 保安規程に定めるべき事項 |
|---|---|
| ① | 職務・組織(業務を管理する者の職務・組織) |
| ② | ガス主任技術者の代行者(旅行・疾病・その他事故で職務ができない場合) |
| ③ | 保安教育(工事・維持・運用に従事する者への教育) |
| ④ | 巡視・点検・検査 |
| ⑤ | 運転又は操作 |
| ⑥ | 災害など非常時の措置 |
| ⑦ | 保安に関する記録 |
| ⑧ | 保安規程違反者に対する措置 |
| ⑨ | その他保安に関し必要な事項 |
規程を作っても、動かす組織がなければ紙で終わる。だから保安規程に基づき、事業所区分に応じた適正な保安管理組織を整備する。ポジション表と同じで、各役職員の責任権限と、縦横の情報連絡・意思疎通を明確にしておくことが要になる。
ガス主任技術者は、原則として保安統括者、保安管理者(管理者を置かない製造所等では保安主任者)、保安企画推進員から選任される。注意したいのは「原則として」の一語だ。絶対の条件ではないので、言い切る選択肢は疑ってよい。
そして選任されたガス主任技術者は、組織内での役割に関わらず、ガス工作物の工事・維持・運用の保安の監督を行う。肩書きが変わっても監督の職責は変わらない、という建て付けである。
次は保安教育。ここに直感への裏切りがある。災害事故の原因の多くは、装置・制御機器の故障ではなく「人為的なもの」なのだ。だから教育内容は保安意識の高揚・誤操作防止・応急措置・事故例の教育等が柱となり、実習訓練として応急措置訓練・防消火訓練を行う。
防災の考え方そのものは、時間軸で3原則に整理されている。事故が起きる前・起きた瞬間・起きた後の三段構えだと捉えればよい。
この3原則を災害対策の基本的な目標に落とすと4つになる。①災害による被害の予防、②二次災害の防止、③従業員・家族の安否確認及び安全の確保、④ガス製造設備被害の早期復旧である。並びには意味があり、②二次災害の防止が最重要とされる。
最後が日常の防災活動だ。非常時に動けるかどうかは、平常時に何を積んでおいたかで決まる。
| 区分 | 日常の防災活動 |
|---|---|
| 定める | 災害種類ごとに防災マニュアルを定め、周知徹底・定期的な見直し |
| 訓練する | 緊急措置訓練等をマニュアルに基づいて定期的に実施 |
| 備える | 保安設備等の整備・点検、復旧資材・道工具・車両・生活必需品の備蓄 |
| つなぐ | 工事会社との協力体制確認、資材輸送ルート確保、原料・燃料の手配等 |
🟦 甲種プラスα
・乙種Cランクだが甲種Bランク
甲種受験者は保安規程の記載事項も整理すること 保安規程
保安管理組織の階層図⚡ 焦点ポイント
「保安規程は届け出る」(認可ではなく届出)は頻出 / ガス主任技術者の選任ルート(保安統括者・保安管理者・保安企画推進員)を整理
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 ・保安規程の「届け出る」と「認可を受ける」を混同しないこと(届出のみ) ・「災害事故の原因は機器故障が多い」は誤り(人為的なものが大部分) ・ガス主任技術者の選任は「原則として」保安統括者等から。絶対条件ではない ・防災の基本は「未然防止だけ」ではなく、極小化・早期復旧も含む3原則
6-2. 保安設備(レイアウト規制・予防設備)
💡 図の見方:同じ放散処理設備でも、ベントスタックは放散したガスが周囲へ及ぼす障害の防止が課題、フレアースタックはふく射熱への対策が課題、と守るべき相手が違うことを対比した図です。左に炎が無く、右にだけ炎と広がる波線がある点が見分けの手がかりです。試験ではこの2つの課題を入れ替えた選択肢が出るので、絵の違いごと結び付けて覚えてください。
重要度: ★ 乙A / 甲A
🎯 一言で
保安設備のレイアウト規制(離隔距離・保安区画・防液堤内外制限)と、事故の未然防止のための予防設備(安全弁・インターロック・防爆・保安電力等)を理解する。
📖 解説(乙種ベース)
製造所の保安は、装置を並べる前の「配置」から始まる。危険なものを離して置き、火気から遠ざけ、防災作業のスペースを空けておく——これがレイアウト規制だ。保安設備はこれを含めて4つに分類される。①レイアウト規制、②予防設備(安全弁・インターロック・防爆・保安電力等)、③監視・連絡設備、④拡大防止設備である。
柱になるのが離隔距離である。対象はガス発生器・ガスホルダー・BOG圧縮機・LNG貯槽等で、事業場境界や保安物件(学校・病院等)までの距離を最高使用圧力・能力毎に規定する。ここが引っかけどころだ。全てのガス工作物が対象なのではなく、技省令6条で対象設備が限定されている。
距離にかかわる規制は、これを含めて4本ある。設備どうしの距離、火気設備との距離、そして防液堤まわりの制限だ。条番号ごと表で押さえたい。
放散処理設備 ベントスタックとフレアースタックの違い| 規定(技省令) | 内容 |
|---|---|
| 6条:離隔距離 | ガス発生器・ガスホルダー・BOG圧縮機・LNG貯槽等が対象。事業場境界・保安物件(学校・病院等)までの距離を最高使用圧力・能力毎に規定 |
| 6条7項:貯槽・ガスホルダー間距離 | 液化ガス用貯槽相互間・ガスホルダー相互間・液化ガス用貯槽とガスホルダー相互間(貯槽形式や直径による) |
| 11条:火気設備との距離 | 可燃性ガス又は液化ガスを通ずるガス工作物と火気設備(ボイラー等)との距離 |
| 38条2項:防液堤内外の設置設備の制限 | 防液堤外面から防災作業のために必要な距離の内側には、防災活動に支障のない設備以外は設置禁止 |
配置で距離を稼いだら、次は事故そのものを起こさない仕掛けである。予防設備は、いわば設備に打つ予防接種だ。異常が起きてから慌てるのではなく、起きない状態・起こせない状態をあらかじめ作り込んでおく。
その代表が安全弁である。高圧・中圧のガス又は液化ガスを通ずるガス発生設備・ガスホルダー・製造設備の容器等に設置する。では低圧設備はどうか。圧力上昇防止装置(爆発戸・水封器等)でも可とされ、安全弁が必須ではない。
低温の貯槽には、もう一段の備えがある。液化ガス用低温貯槽では、安全弁に加えて負圧防止措置(真空安全弁・他の貯槽からのガス導入配管等)を講じる(技省令17条、35条)。圧力は上がる側だけでなく、下がる側にも危険があるということだ。
ここは適用範囲がそのまま問われる。インターロックは「全てのガス工作物」ではなく、特定事業所の高圧設備の計装回路が対象——この限定を外した選択肢が定番だ。残る予防設備③〜⑨も、条文と対象をひも付けて表で押さえたい。
| 予防設備(技省令) | 内容・対象 |
|---|---|
| ③流出防止措置(31条3項) | 気化装置・接続配管等:液化ガスが液体のまま気化装置から流出することを防止 |
| ④逆流防止装置(30条) | ガスの通ずる部分に直接液体・気体を送入する装置を有する製造設備に設置。逆止弁等の設置 |
| ⑤保安電力等(21条) | 製造設備を安全に停止させるための措置等、保安上重要な設備への電力確保。保安上重要な設備=非常用照明・保安通信・防消火設備・ガス漏れ検知警報装置・緊急遮断装置等。停電時の保安電力源=買電(保安電力として措置されたもの)・自家発電・蓄電池。自家発電の原動機はディーゼル機関・ガスタービン等(液体燃料とガスの切替可能なデュアルフューエル型も使用) |
| ⑥ガスが滞留しない構造(9条) | ガス工作物を設置する室は漏えい時にガスが滞留しない構造。例:2方向以上の開口部を持つ構造 |
| ⑦電気設備の防爆構造(10条) | 設置場所の状況と当該ガス又は液化ガスの種類に応じた防爆性能が必要 |
| ⑧静電気除去措置(12条) | 液化ガスを通ずるガス工作物が対象 |
| ⑨放散処理設備 | ベントスタック(周囲への障害防止)・フレアースタック(ふく射熱への対策) |
取り違えやすいのは⑧と⑨だ。静電気除去措置の対象は「全ガス工作物」ではなく、液化ガスを通ずる設備に限られる。放散処理設備は、ベントスタックが周囲への障害防止、フレアースタックがふく射熱への対策——守るべき相手が違う。
保安物件との離隔(レイアウト規制)⚡ 焦点ポイント
「インターロック=特定事業所の高圧設備・計装回路」の適用範囲が頻出 / 「安全弁=高圧・中圧に設置必須。低圧は爆発戸等でも可」の区分を整理
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 ・インターロックは「全てのガス工作物」ではなく「特定事業所の高圧設備」 ・安全弁は低圧設備には必須ではない(圧力上昇防止装置で代替可) ・静電気除去措置は「全ガス工作物」ではなく「液化ガスを通ずる」設備のみ ・フレアースタックはふく射熱対策が必要。ベントスタックとの違いに注意 ・離隔距離は「全てのガス工作物が対象」ではなく技省令6条で対象設備が限定
6-3. 保安設備(監視・連絡設備・拡大防止設備)
重要度: ★ 乙A / 甲B
🎯 一言で
監視・連絡設備(計測装置・保安通信・計器室)と拡大防止設備(遮断装置・防液堤・緊急停止装置・防消火設備・耐熱措置)を理解する。
📖 解説(乙種ベース)
事故は起こさないのが一番だが、それでも起きたときにどう気づき、どう伝えるか。監視・連絡設備は、この「気づく」と「伝える」を担う設備群である。
まず計測装置。製造設備のガス又は液化ガスを通ずる設備の損傷を防止するため、使用の状態を計測または確認できる適切な装置を設置する(技省令18条)。異常な状態を検知して知らせる警報装置、ガスが滞留するおそれのある場所を見張るガス漏えい検知警報設備が、これに続く。
伝える側の要が保安通信設備だ。災害時にまず詰まるのは電話回線である——だからこそ、渋滞しにくい手段を持っておく必要がある。
| 設備(技省令) | 内容 |
|---|---|
| ①計測装置(18条) | 製造設備のガス又は液化ガスを通ずる設備の損傷を防止するため、使用の状態を計測または確認できる適切な装置を設置 |
| ②保安通信設備 | 製造所又は供給所に緊急時の迅速な通信を確保するための通信設備を設置。加入電話・専用電話・無線電話通信設備等。災害時等の回線渋滞時に有効なのは衛星携帯通信・災害時優先電話(衛星携帯電話は衛星携帯電話同士であれば回線の渋滞が少ない) |
| ③警報装置 | ガス又は液化ガスを通ずる設備の損傷に至るおそれのある状態を検知し警報 |
| ④ガス漏えい検知警報設備 | 製造所のガスが滞留するおそれのある場所に設置。ガスの漏えいを検知し警報 |
| ⑤計器室(23条) | 特定事業所に設置する計器室は、緊急時においても当該ガス工作物を安全に制御できるものであること |
要注意は最後の計器室だ。求められているのは、平常時に数字を眺める部屋であることではない。緊急時においても安全に制御できること——この条件つきで特定事業所に置く部屋である。
気づいて伝えたら、次は広げないことだ。拡大防止設備は、事故発生後の拡大最小化を受け持つ。船の隔壁と同じで、浸水そのものは止められなくても、区画を閉じてしまえば船は沈まない。
閉じる役が遮断装置である。ガスホルダーや液化ガス用貯槽では、ガス又は液化ガスの送出管又は受入管を速やかに遮断する装置を設ける。その他の製造設備では、ガス又は液化ガスの流出及び流入を速やかに遮断する装置となる(技省令26条、36条)。
受け止める役が防液堤だ。液化ガス用貯槽からの液化ガス流出時の災害を防止するもので、設置義務には規模の線引きがある。全ての貯槽に要るわけではない、という点が狙われる。
残る3つは、止める・消す・耐えるだ。緊急停止装置はガス発生設備について、緊急時に迅速・安全にガスの発生停止とガスの処理ができることを求める(技省令27条)。防消火設備は散水設備・水消火栓・固定式放水銃・ウォーターカーテン設備・消防車に加え、屋外給水施設・泡消火設備・粉末消火設備・消火器等が並ぶ。
最後が耐熱措置である(技省令37条)。対象は液化ガス用貯槽・高圧のガスホルダー・支持物。周辺での火災による輻射熱等に耐えられるよう、断熱材で被覆するか散水設備を設置する。隣で火が出ても、こちらが破れなければ災害は連鎖しない。
災害拡大防止の設備(防液堤・散水・遮断)⚡ 焦点ポイント
「計器室=特定事業所・緊急時でも安全に制御」の条件は頻出 / 「衛星携帯通信=回線渋滞が少ない」は災害通信の有効手段として出題される
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 ・「防液堤の設置義務は全液化ガス貯槽」は誤り。1,000t以上(特定事業所は500t以上)が条件 ・計器室は「緊急時でも制御できる」必要あり→単なる計測室ではない ・衛星携帯通信は「一般電話回線より常に優れる」ではなく「回線渋滞時に有効」 ・拡大防止設備は「事故を防ぐ」ではなく「事故後の拡大を最小化」するための設備 ・フレアースタックはふく射熱対策が必要(周囲への障害はベントスタックの問題)
🔢 製造の重要数値・設備の整理
保安・防災の3層構造(論述で頻出):
1. 予防設備: 漏えい防止・着火防止
2. 監視設備: ガス検知・遠隔監視
3. 拡大防止設備: 防液堤・スプリンクラー・緊急遮断
保安設備の代表例:
– 漏えい検知器: 可燃性ガス検知器、紫外線検知器
– 緊急遮断弁(ESV): 異常検出時の自動遮断
– 防液堤: 貯槽外周(漏えい液の拡散防止)
– 散水・散気: 拡散したガスを希釈
– 不活性ガス封入: タンク内の酸素遮断
論述定型(防災):
– 平常時: 設備保全・点検・教育・訓練
– 事故発生時: 通報・初動対応・周辺住民への連絡
– 復旧: 原因究明・対策・再発防止
製造科目では、設備名・型式・運転条件の数値・原料の物性値の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・設備名を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。
🗒️ 3分で復習(章末まとめ)
🎯 全節 一言まとめ
- 節6-1 保安・防災管理(保安規程・管理組織・防災の基本): ガス事業法に基づく保安規程の作成・届出義務、保安管理組織の構成、防災の基本方針(未然防止・極小化・早期復旧)と災害対策の目標を理解する。
- 節6-2 保安設備(レイアウト規制・予防設備): 保安設備のレイアウト規制(離隔距離・保安区画・防液堤内外制限)と、事故の未然防止のための予防設備(安全弁・インターロック・防爆・保安電力等)を理解する。
- 節6-3 保安設備(監視・連絡設備・拡大防止設備): 監視・連絡設備(計測装置・保安通信・計器室)と拡大防止設備(遮断装置・防液堤・緊急停止装置・防消火設備・耐熱措置)を理解する。
⚡ 全節 焦点ポイント
- 節6-1: 「保安規程は届け出る」(認可ではなく届出)は頻出 / ガス主任技術者の選任ルート(保安統括者・保安管理者・保安企画推進員)を整理
- 節6-2: 「インターロック=特定事業所の高圧設備・計装回路」の適用範囲が頻出 / 「安全弁=高圧・中圧に設置必須。低圧は爆発戸等でも可」の区分を整理
- 節6-3: 「計器室=特定事業所・緊急時でも安全に制御」の条件は頻出 / 「衛星携帯通信=回線渋滞が少ない」は災害通信の有効手段として出題される
📝 一問一答(過去問ランダム)
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