製造 第4章 熱量管理と燃焼性

製造 第4章 熱量管理と燃焼性 解説動画
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都市ガスの熱量(発熱量)・燃焼性(ウォッベ指数MCP)の管理を扱う章です。ガスの相互互換性を保つための増熱・希釈、3つの熱量調整方式、熱量・比重・特殊成分の測定方法までを学びます。

乙種甲種兼用 / 全3節 / 学習目安: 30〜60分

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📍 はじめに

13Aガスはどの会社のどの地域でも同じ性能で燃えなければ、需要家のガス機器が安全に動きません。それを保証するのが熱量・燃焼性の規格管理です。この章では、その指標と調整方法を整理します。


📚 テキスト解説

各節は次の構成で進みます。

– 🎯 一言で

– 📖 解説(乙種ベース)

– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)

– ⚡ 焦点ポイント

– 📝 過去問のひっかけ例


4-1. 熱量と燃焼性(ウォッベ指数MCP

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

ガスの熱量(総発熱量真発熱量)とウォッベ指数WI、燃焼速度MCPの定義と計算方法を理解する。

📖 解説(乙種ベース)

ガス機器のノズルは、蛇口と同じで穴の大きさが決まっている。その決まった穴から出るガスが、どれだけの熱を運んでくるか。それは発熱量だけでは決まらない——軽いガスほど勢いよく噴き出すからだ。だから熱量と燃焼性は、複数の指標を組み合わせて管理する。

出発点は発熱量の2つの定義である。総発熱量(高発熱量)は燃焼後の水蒸気の蒸発潜熱を含む発熱量、真発熱量(低発熱量)は水蒸気の蒸発潜熱を含まない発熱量だ。含むか含まないかの差がそのまま潜熱分なので、両者の関係は引き算で書ける。

公式
真発熱量総発熱量 − 水蒸気の蒸発潜熱
総発熱量:蒸発潜熱を含む 真発熱量:含まない (潜熱の分だけ総発熱量のほうが大きい)

ここで引く向きを逆にした選択肢が繰り返し出る。「総発熱量は凝縮潜熱を真発熱量から差し引いて求める」——引かれる側が入れ替わっている。潜熱を含むほうが大きい、と決めておけば向きで迷わない。

次がウォッベ指数WI)だ。ノズルから単位時間に噴出する熱量の目安で、発熱量Hを比重sの平方根で割って求める。

公式
WIH√s
H:ガスの総発熱量(MJ/m³) s:ガスの比重(空気=1の無次元値。密度ではない)

なぜ割るのが比重の平方根なのか。軽いガスほどノズルから速く噴き出し、同じ発熱量でも運ばれる熱量が増えるからだ。したがってWIが同じであれば、器具の燃焼特性(火力)はほぼ同等になる。この性質ゆえに、ガス種切替・熱量調整の適否判断に使用される。日本では13A(都市ガス標準)でWI = 52.7±4.2 MJ/m³である。

では火力が同じなら、燃え方まで同じか。そうはならない。燃え広がる速さを表す指標が燃焼速度(MCP:Maximum Combustion Potential)で、ガスクロマトグラフ法による成分組成から、各成分ガスの燃焼速度係数の加重平均で計算する。

MCP値が大きいほど燃焼速度が速く、逆火・黄炎のリスク評価に使用される。火力と速さは別物——だから両方をまとめて見る道具が要る。それがWIMCP図(燃焼性図)で、ガスの燃焼特性が適正範囲内かを確認する。2つの指標を軸にとった地図の上で、安全な区画に収まっているかを見るわけだ。

覚える
WI=熱量と比重の合成指標(火力)/MCP=燃焼速度。役割を取り違えない
🖼 図解
総発熱量と真発熱量総発熱量と真発熱量
🖼 図解
ウォッベ指数のイメージ(WI=H/√s)ウォッベ指数のイメージ(WI=H/√s)

⚡ 焦点ポイント

真発熱量総発熱量 − 蒸発潜熱」の式は確実に暗記 / WI計算式(H/√s)はほぼ毎年出題。√の中が比重である点に注意

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 ・「√sはガスの密度」と混同しやすいが、sは比重(空気=1の無次元値) ・総発熱量と真発熱量の大小関係:総発熱量 > 真発熱量(潜熱分だけ大きい) ・MCPとWIを混同しないこと。MCPは燃焼速度、WIは熱量・比重の合成指標

4-2. ガスの熱量調整(増熱・希釈・3方式)

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

LNG主体ガスへのLPG増熱・空気希釈の方法と、熱量調整3方式(ガス-ガス・液-ガス・液-液)の特徴を理解する。

📖 解説(乙種ベース)

コーヒーが濃すぎれば湯を足し、薄ければ豆を足す。LNG主体ガスの熱量管理も、やっていることは同じだ。足りなければ濃いものを混ぜ、多すぎれば薄めて規格の幅に収める。前者がLPGによる増熱、後者が空気による希釈である。

まず増熱。目的は、熱量不足時にLPGを混合して熱量(WI)を上げることだ。ただし混ぜれば済む話ではない。WIMCP図で燃焼性が適正範囲内に入るかを確認する必要がある。火力を合わせても、燃焼速度が枠を外れれば使えないからだ。

もう一つ欠かせないのが露点管理である。LPGの炭化水素成分が液化する温度(露点)以下にならないよう管理する。せっかく混ぜた成分が導管の中で液に戻れば、供給の支障になる。増熱時に確認するのは熱量・燃焼性・露点の3点——比熱ではない。

覚える
LPG増熱時に確認するのは 熱量・燃焼性・露点 の3点(比熱ではない)

逆に熱量が過剰なときは、空気混合による希釈でWIを下げる。ここで問われるのが「では燃焼速度はどうなるのか」だ。答えは、MCPはほとんど変化しない。空気はMCPに影響しないためである。WIだけが動いてMCPは動かない——この非対称が定番の出題点になる。

ただし空気を混ぜる以上、酸素が入り込む。そこで酸素濃度管理が必要になり、高圧供給時は4%未満に維持する。この閾値は別の数値に書き換えられやすいので、「高圧供給時・4%未満」を条件ごと覚えたい。

増熱・希釈のどちらにせよ、LPGをどの相状態で混ぜるかによって方式は3つに分かれる。設備コスト・ランニングコスト・留意点の組み合わせで比較していこう。

熱量調整方式の比較(甲A乙B)

🖼 図解
ガス−ガス熱量調整方式ガス−ガス熱量調整方式
🖼 図解
液−ガス熱量調整方式液−ガス熱量調整方式
🖼 図解
液−液方式と凍結対策液−液方式と凍結対策
方式原理(相状態)設備コストランニングコスト留意点
①ガス-ガス方式LNGLPGをそれぞれ気化させて混合高温熱源が必要。調整範囲が広い
②液-ガス方式気化したNG(ガス)の顕熱を利用してLPG(液体)を気化・混合低(LPG専用気化器が不要)NG温度により運転範囲の制限を受ける場合があり、LPG混合量の制限またはNGの予熱が必要
③液-液方式LNGLPGを液体のまま混合した後、まとめて気化最も低いLPG中の不純物(メタノール等)が低温で凍結するリスクあり→閉塞対策が必要

🟦 甲種プラスα

甲種では3方式の詳細比較まで必須

⚡ 焦点ポイント

3方式の特徴比較は表形式で整理すると記憶しやすい / 「液-ガス方式でLPG専用気化器が不要」は頻出ポイント

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 ・増熱→WI上昇、希釈→WI低下。混乱しないよう整理 ・液-ガス方式は「LPGが気体」ではなく「LPGを液体から気化させる」方式 ・液-液方式の欠点は「低コスト」ではなく「凍結リスク」であることに注意 ・甲種では3方式の詳細比較まで必須。乙種は方式名程度でよい

4-3. 熱量・比重の測定と特殊成分分析

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

ガスクロマトグラフ法の原理・構成・検出器3種の特徴、比重測定方法、硫黄・H₂S・NH₃などの特殊成分分析を理解する。

📖 解説(乙種ベース)

ガスの熱量も比重も、成分組成が分かれば計算で出せる。ではその組成をどう測るのか。主役がガスクロマトグラフ(GC)法である。

原理は、固定相(充填剤)と移動相(キャリアガス)の相互作用で成分を分離すること。マラソンの集団を思い浮かべてほしい。スタート時はひと塊でも、コースとの相性で走者ごとに速度差がつき、ゴールでは順番に分かれて到着する。GCでは充填剤との親和性がその「相性」にあたり、混合ガスは成分ごとに時間差をつけて出てくる。

キーワード
固定相と移動相 — 固定相=分離管に詰めた充填剤、移動相=試料を運ぶキャリアガス。両者の相互作用の差が分離を生む

運び役のキャリアガスには条件がある。He・N₂・Arなど純度99.99%以上が必要だ。運搬役に余計なものが混じれば、測りたい成分の信号が濁ってしまう。ここに酸素を紛れ込ませた選択肢が、繰り返し出題される。

装置の構成は、注入口 → 分離管(カラム) → 検出器 → 記録計。入れて・分けて・測って・記録する、という一本道である。この最後から2番目、検出器の選び方が実務でも試験でも要になる。

検出器3種の比較

🖼 図解
ガスクロマトグラフの原理ガスクロマトグラフの原理
検出器原理対象物質感度
①TCD(熱伝導度型検出器)試料とキャリアガスの熱伝導度の差を検出有機化合物・無機化合物(ほぼ全物質)低い(汎用型)
FID(水素炎イオン化型検出器)水素炎中でイオン化したときの電流を検出有機化合物のみ(炭化水素に高感度)高い
③FPD(炎光光度型検出器)炎中で特定元素が発する光を検出硫黄化合物・リン化合物(付臭剤の分析に使用)高い

3種の検出器は、感度と守備範囲が引き換えの関係にある。TCDは感度が低い代わりにほぼ全物質を拾い、FIDは有機化合物に限られる代わりに高感度、FPDは硫黄・リンに絞ることで付臭剤の分析を担う。「TCDは感度が低い」とだけ覚えると、汎用型という長所を落としてしまう。

比重の測定方法

比重の測り方は3通りある。①ガスクロ法は成分組成から計算で算出する方法。②ブンゼン-シリング法は流出速度比を利用する方法。③比重瓶法は試料ガスと乾燥空気を比重瓶に充填し秤量して比重を算出する方法である。名称が耳慣れないぶん、原理とセットにしておくと混同しにくい。

覚える
比重測定3法=①ガスクロ法(組成から計算)②ブンゼン-シリング法(流出速度比)③比重瓶法(秤量)

特殊成分分析(甲B乙C)

最後が特殊成分分析だ。分析対象は硫黄全量・硫化水素(H₂S)・アンモニア(NH₃)で、JIS規格に基づく方法で実施する。ガス中の不純物を確かめるための項目である。

ここで分析法の名前まで押さえておきたい。過去問は 「どのガスをどの方法で測るか」の組合せで崩してくるからだ。 硫化水素メチレンブルー吸光光度法アンモニアインドフェノール吸光光度法。 どちらも発色させて色の濃さで量を測る方法で、青い色素の名前と対象ガスの組合せで覚えると入れ替えに強くなる。 硫黄全量には過塩素酸バリウム沈殿滴定法・ジメチルスルホナゾⅢ吸光光度法・イオンクロマトグラフ法がある。

もう一つ、GCのキャリアガスの種類が繰り返し問われる。 使えるのはヘリウム・窒素・アルゴン・水素——いずれも 試料と反応しない不活性ガスである(純度99.99%以上)。 酸素はキャリアガスに使えない。 運び役が試料を燃やしてしまっては分析にならない、と考えれば理屈で思い出せる。

対象分析方法
硫化水素(H₂S)メチレンブルー吸光光度法
アンモニア(NH₃)インドフェノール吸光光度法
硫黄全量過塩素酸バリウム沈殿滴定法/ジメチルスルホナゾⅢ吸光光度法/イオンクロマトグラフ法
GCのキャリアガスヘリウム・窒素・アルゴン・水素(酸素は不可

🔑 覚える

硫化水素=メチレンブルー/アンモニア=インドフェノール/ キャリアガスは不活性ガス酸素は使えない

ただし、すべてのガスに課されるわけではない。天然ガスプロパンブタン等を主成分とするガス、または専用導管で大口需要家に直接供給するガスは分析免除となる。ガスの種類による免除と、供給形態による免除の2つがある、と整理しておけばよい。

⚡ 焦点ポイント

検出器3種はそれぞれの検出原理・対象物質・感度の組合せを表で暗記 / FPD=付臭剤分析用というキーワードで覚える

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 ・TCDは「感度が低い」が「汎用性は高い」という二面性を混同しないこと ・FIDは「無機化合物は検出できない」点が引っ掛けになりやすい ・比重測定の3方法はガスクロ法以外の名称(ブンゼン-シリング・比重瓶)が難しい ・特殊成分分析は甲Bだが乙種はCランク(深追い不要)

🔢 製造の重要数値・設備の整理

熱量・燃焼性の主要指標:

指標定義用途
HHV(高位発熱量)水を液体として計算規格・販売
LHV(低位発熱量)水を気体として計算設備設計
ウォッベ指数 (WI)HHV / √比重ガスの互換性判定
MCP(燃焼速度指数)燃焼状態の安定性

13Aガスの規格値(例):

– 発熱量: 45 MJ/m³(標準状態)

MCP: 37前後

– 比重: 0.6前後

3つの熱量調整方式(LPG混合時の相状態で分類):

1. ガス-ガス方式: 気化したNGに気化したLPGを混合

2. 液-ガス方式: 気化したNGに液のLPGを噴霧・混合

3. 液-液方式: LNGとLPGを液のまま混合してから気化

※発熱量を上げる「増熱」(LPG混合)・下げる「希釈」(空気混合)は調整の方向

製造科目では、設備名・型式・運転条件の数値・原料の物性値の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・設備名を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。

🗒️ 3分で復習(章末まとめ)

🎯 全節 一言まとめ

  • 節4-1 熱量と燃焼性(ウォッベ指数・MCP): ガスの熱量(総発熱量真発熱量)とウォッベ指数WI、燃焼速度MCPの定義と計算方法を理解する。
  • 節4-2 ガスの熱量調整(増熱・希釈・3方式): LNG主体ガスへのLPG増熱・空気希釈の方法と、熱量調整3方式(ガス-ガス・液-ガス・液-液)の特徴を理解する。
  • 節4-3 熱量・比重の測定と特殊成分分析: ガスクロマトグラフ法の原理・構成・検出器3種の特徴、比重測定方法、硫黄・H₂S・NH₃などの特殊成分分析を理解する。

⚡ 全節 焦点ポイント

  • 節4-1: 「真発熱量総発熱量 − 蒸発潜熱」の式は確実に暗記 / WI計算式(H/√s)はほぼ毎年出題。√の中が比重である点に注意
  • 節4-2: 3方式の特徴比較は表形式で整理すると記憶しやすい / 「液-ガス方式でLPG専用気化器が不要」は頻出ポイント
  • 節4-3: 検出器3種はそれぞれの検出原理・対象物質・感度の組合せを表で暗記 / FPD=付臭剤分析用というキーワードで覚える

📝 一問一答(過去問ランダム)

記述が正しいか誤りかを判定。答え・理由・出典が出ます。

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