供給 第5章 腐食・防食

供給 第5章 腐食・防食 解説動画
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導管の腐食メカニズム(電池作用・マクロセル・ミクロセル腐食)、防食の種類(塗覆装・電気防食・絶縁)、電気防食法4種類(流電陽極・外部電源・選択排流・強制排流)、防食設計、防食管理までを扱います。

乙種甲種兼用 / 全6節 / 学習目安: 30〜60分

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📍 はじめに

埋設鋼管は何十年も地中で使われるため、放置すれば必ず腐食します。電気防食はその腐食を電気的に止める技術。この章では、腐食原理から防食設計までを論述レベルで整理します。


📚 テキスト解説

各節は次の構成で進みます。

– 🎯 一言で

– 📖 解説(乙種ベース)

– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)

– ⚡ 焦点ポイント

– 📝 過去問のひっかけ例


📑 この章の目次(全6節)
  1. 1. 腐食の原理(アノード・カソード・電池作用・自然電位・マクロセル・ミクロセル)
  2. 2. 導管の腐食分類(電食・自然腐食:マクロセル・ミクロセル腐食・大気腐食)
  3. 3-1. 防食の種類(塗覆装・電気防食・絶縁等)と防食電位・過防食
  4. 3-2. 電気防食法4種類比較(流電陽極法・外部電源法・選択排流法・強制排流法)
  5. 4. 防食設計(腐食原因調査・各種電位測定・設計フロー・仮通電試験)
  6. 5. 防食管理と供内管の防食(塗覆装・絶縁継手設置・電気防食・点検時期)

1. 腐食の原理(アノードカソード・電池作用・自然電位・マクロセル・ミクロセル)

重要度: ★ 乙A / 甲B

🎯 一言で

腐食は電気化学反応で起きる。アノード(電流流出・腐食)・カソード(電流流入・保護)の概念、自然電位(上位=貴=腐食しにくい)、マクロセル腐食ミクロセル腐食の違いを理解する。

📖 解説(乙種ベース)

金属が化学的または電気化学的反応によって表面から消耗する現象を腐食という。厄介なのは、この反応が単純な電池の作用とまったく同じ仕組みで進むことだ。土に埋まった鋼管は、意図しないまま巨大な電池の一部になっている。

電池には2つの電極がある。電解質(溶液・土壌)に電流を流出する電極がアノード(陽極)で、こちらは腐食が進む。電解質から電流を受け入れる電極がカソード(陰極)で、こちらは保護される。異種金属を接続して電解質中に置くと電流が流れ、アノードとなる金属が腐食する。亜鉛(Zn)と炭素(C)を電解質中で接続すれば、亜鉛がアノードとなって亜鉛が腐食する。

キーワード
アノードカソードアノードは電解質へ電流を流出する側で腐食する。カソードは電流を受け入れる側で保護される

では、2つの金属のどちらがアノードになるのか。それを決めるのが自然電位である。相撲の番付のように金属には序列があり、上位(プラス側=貴)ほど腐食しにくく、下位(マイナス側=卑)ほど腐食しやすい。海水中の自然電位(飽和硫酸銅電極基準)を番付順に並べると、次のようになる。

金属自然電位位置づけ
白金(Pt)+250mV貴(腐食しにくい)
銀(Ag)-140mV
銅(Cu)-250mV
鉛(Pb)-580mV
鉄(Fe)-580〜-730mV
Al-860mV
亜鉛(Zn)-1150mV
Mg-1680mV卑(腐食しやすい)

この番付表の読み方は一つだけだ。鉄より貴な金属——銅、銀——と組めば、鉄がアノードになって腐食する。鉄より卑な金属——亜鉛、Mg——と組めば、鉄がカソードになり、亜鉛やMgが犠牲になって腐食してくれる。後者は防食に使える性質で、のちの犠牲陽極につながっていく。

もう一点、電池ができる規模でも腐食は分かれる。アノードカソードがはっきり分かれるマクロセル腐食と、表面に微細な電池が無数にできるミクロセル腐食である。この違いを次に見ていく。

電池がどの規模でできるかによって、腐食の姿は大きく変わる。マクロセル腐食ではアノード部カソード部が明確に区分され、アノード部が集中的に腐食する。コンクリート/土壌腐食、通気差腐食、異種金属接触腐食がこれにあたる。

いっぽうミクロセル腐食では、金属表面に微視的なアノードカソードが多数形成され、全体的にほぼ均一に腐食する。バクテリア腐食、一般土壌腐食、酸性土壌腐食が該当する。

虫歯にたとえると分かりやすい。マクロセル腐食は一点に穴が開くタイプ、ミクロセル腐食は全体がうっすら溶けるタイプだ。管に穴が開けば即ガス漏れにつながるから、危険なのは集中するほうである。

🖼 図解
腐食の電池作用(アノード/カソード)腐食の電池作用(アノード/カソード)

⚡ 焦点ポイント

アノード=腐食側」「カソード=保護側」「自然電位が低い(卑)ほど腐食しやすい」の3点は必須。「鉄より卑なMg・亜鉛は犠牲陽極として使える」という発展知識も重要。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 電流はアノードから電解質に『流出』する(アノードが腐食)。電流の向きとイオンの動きを混同しないこと。マクロセル腐食は腐食が一点に集中(孔食リスク大)、ミクロセルは分散。

2. 導管の腐食分類(電食自然腐食:マクロセル・ミクロセル腐食・大気腐食)

💡 図の見方:直感を裏切る2つのマクロセル腐食を並べた断面図。通気差では「空気に触れる側が錆びそう」という直感と逆に、通気性の悪い部分がアノードとなって腐食する。コンクリート/土壌では、アルカリ性で電位が高いコンクリート中の鉄がカソード、土壌中の鉄がアノードになる。電流が管から流出する側が腐食する側であることを、矢印の向きで確かめたい。

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

埋設導管の腐食は電食自然腐食(マクロセル・ミクロセル)に大別される。電食(レール漏れ電流・ジャンピング)・マクロセル3種・ミクロセル3種の原因と特徴を整理する。

📖 解説(乙種ベース)

腐食を止めるには、まず何が原因かを見分けなければならない。埋設導管の腐食は、原因の由来で大きく2つに分かれる。外から流れ込んだ電流のせいで起きる電食と、迷走電流によらない自然腐食である。露出部(大気中)については、これとは別に大気腐食を考える。

電食は、電気設備からの直流電流による腐食だ。内訳は2つで、レール漏れ電流による電食(帰流型・押出型)と、他防食施設からの干渉による電食(ジャンピング腐食)がある。

自然腐食には、前節の分類がそのまま降りてくる。アノードカソード部が明確なマクロセル腐食には、通気差マクロセル腐食・コンクリート/土壌マクロセル腐食・異種金属接触によるマクロセル腐食の3つ。アノードカソード部が不明確で均一腐食となるミクロセル腐食には、バクテリア腐食(鉄細菌等)・通常の土壌腐食・特殊土壌腐食(酸性土壌等)の3つがある。

電食自然腐食か」「マクロセルかミクロセルか」という2段構えが、この節の骨格になる。以下、それぞれの中身を見ていく。

電食の代表がレール漏れ電流による電食である。電気鉄道のレールを流れる電流が地中に流出し、埋設導管に流入する。問題になるのは入口ではなく出口だ。電流が管から抜けていく流出部分でアノード反応が起こり、そこが激しく腐食する。電流が管を通って変電所に戻る帰流型と、押出型がある。

もう一つがジャンピング腐食で、他防食施設からの干渉によるものだ。近接する電気防食施設(外部電源装置)が、防食していない導管に干渉する。絶縁継手で電気的に縁を切ったつもりでも、電流がそれを飛び越えて流入・流出してしまう——名前のとおり「跳び越える」腐食である。

次にマクロセル腐食の3種を見る。通気差マクロセル腐食は、通気性の異なる土壌(粘土層・多湿土壌など)にまたがって埋設された場合に生じる。腐食するのは、通気性の悪い部分のほうだ。「空気に触れる側が錆びそうだ」という直感とは逆になる。

コンクリート/土壌マクロセル腐食も、直感を裏切る型である。コンクリート中はアルカリ性で鉄の自然電位が高く(=貴)、土壌中の鉄との電位差でマクロセルが形成される。腐食するのは電位の低い土壌部分(-500〜-700mV)のほうで、コンクリート側は守られる側にまわる。さらに鉄筋と電気的に接触しているとカソード面積が大きくなり、腐食が促進される。

3つめの異種金属接触は、前節の番付表がそのまま効く。電位の異なる金属が接触すれば電池が構成され、卑なほうがアノードとなって腐食が進む。黄銅バルブ+鋼管では鋼管アノードとなって腐食し、鋳鉄管+鋼管でも鋼管アノードとなって腐食する(鋳鉄管鋼管より貴)。どちらの組合せでも腐食するのは鋼管側——ここが繰り返し問われる。

覚える
通気差腐食のアノード=通気性の悪い部分/コンクリート中の鉄=カソード、土壌中の鉄=アノード/黄銅・鋳鉄管と接触した鋼管アノード

最後に大気腐食。露出配管では、結露・雨水に炭酸ガス・亜硫酸ガス等が溶け込み、それが電解質として作用する。土の中でなくても、水と溶存ガスがそろえば電池は成立するということだ。

🖼 図解
異種金属接触腐食異種金属接触腐食
🖼 図解
マクロセル腐食2種:腐食するのは通気の悪い側と土壌側マクロセル腐食2種:腐食するのは通気の悪い側と土壌側

⚡ 焦点ポイント

電食vs自然腐食」「マクロセルvs ミクロセル」「通気差腐食のアノードは通気性の悪い部分」「コンクリート中の鉄はカソード」「鋼管鋳鉄管鋼管アノード」が毎年頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「コンクリート中の鉄=カソード(腐食されない)、土壌中の鉄=アノード(腐食する)」。コンクリートがアルカリ性のため電位が高い(貴)。黄銅・鋳鉄管は鋼管より貴→鋼管がアノード(腐食)。
  • 「電食vs自然腐食」「マクロセルvs ミクロセル」「通気差腐食のアノードは通気性の悪い部分」「コンクリート中の鉄はカソード」「鋼管と鋳鉄管→鋼管がアノード」が毎年頻出

3-1. 防食の種類(塗覆装・電気防食・絶縁等)と防食電位・過防食

重要度: ★ 乙A / 甲C

🎯 一言で

防食は「塗覆装」「電気防食」「その他(絶縁・メッキ・耐食材料・ポリエチレンスリーブ)」の3大分類。防食電位の基準値(-850mV以下)と過防食条件(-2000mV以下)を覚える。

📖 解説(乙種ベース)

腐食が電池反応なら、止め方は2通りしかない。電池を成立させないか、電池の向きを変えてしまうかだ。前者が塗覆装、後者が電気防食にあたる。これに絶縁・メッキ・耐食性材料・ポリエチレンスリーブという「その他」を加えた3大分類が、防食の全体像になる。

塗覆装導管表面を覆い、電解質(土壌・水)との接触を遮断する。食品をラップで包むのと同じ発想で、水に触れさせなければ電池は成立しない。電気防食はアノード反応の進行を阻止するもので、導管カソードにしてしまう手法である。

塗覆装は、工場で施すものと現場で施すものに分かれる。工場塗覆装は、埋設鋼管にポリエチレン・塩化ビニール等のプラスチック被覆、埋設鋳鉄管にエポキシ系・アクリル系樹脂塗料を用いる。現場塗覆装は、工場で覆えない箇所を後から手当てするものだ。

現場塗覆装使いどころ・特徴
①熱収縮性ポリエチレンチューブ溶接箇所等に使用
②防食ゴムシート補強用ゴムシート+防食用ブチルゴム系接着剤
③防食シート凹凸激しい部分・複雑形状の異形継手類に使用
④ペトロラタム系防食テープ柔軟性に富み様々な形状に使用
⑤防食テープ耐久性・防食性に富む

露出管の塗覆装には、耐候性に優れた塗装・屋外防食テープ等を用いる。埋設部とは劣化させる相手が違うのだから、求められる性能も変わる。

「その他」の防食法も押さえておきたい。絶縁による防食は、管路絶縁やコンクリート構造物との絶縁によって電流の通り道を断つもので、電食マクロセル腐食に効果的である。ただしミクロセル腐食は防止できない。微視的な電池は金属表面そのものにできるので、外部との縁を切っても止まらないからだ。絶縁継手の種類は絶縁ねじ継手・絶縁フランジである。

残る3つは材料側の工夫になる。メッキによる防食は亜鉛メッキ鋼管(白ガス管)で、現在は露出部のみ。耐食性材料としてはポリエチレン管フレキ管・ステンレスボルト等がある。ポリエチレンスリーブは施工時に鋳鉄管に被せ、土壌との直接接触を遮断するものだ。

ここから電気防食に入る。基本は一貫していて、導管カソードにすることでアノード反応(腐食)を防止する。では、どこまで電位を下げれば「防げた」と言えるのか。その到達点が防食電位、すなわち防食が達成されたときの電位である。

鉄の防食電位は通常 -850mV以下(飽和硫酸銅電極基準)とされる。鉄の自然電位が-500〜-700mVだから、そこからさらにマイナス側へ押し下げるわけだ。設計上は安全を見て -1,000mV程度が望ましい。ここでの「以下」はより負の側を指す——数直線を思い浮かべ、左へ行くほど条件を満たすと捉える。この向きを取り違えると、正誤判定が丸ごと反転してしまう。

ただし、下げれば下げるほど良いわけではない。電位を下げすぎると水素ガスが発生し、鋼組織への拡散や塗覆装の剥離を招く。埋設鋼管の場合、電位が-2,000mV(飽和硫酸銅電極基準)以下になると過防食である。過防食は他埋設物への干渉も引き起こしやすい。守りすぎもまた事故のもと、ということだ。

覚える
鉄の防食電位=-850mV以下(飽和硫酸銅電極基準。設計上は-1,000mV程度)/過防食=-2,000mV以下/鉄の自然電位=-500〜-700mV

🟦 甲種プラスα

甲種で電気防食の原理(カソードにする)の説明問題が出る

🖼 図解
防食電位の数直線(自然電位・-850mV・-2000mV)防食電位の数直線(自然電位・-850mV・-2000mV)

⚡ 焦点ポイント

防食電位 = -850mV以下」「過防食 = -2,000mV以下」の数値は確実に暗記する。絶縁による防食は「ミクロセル腐食は防止できない」も重要。甲種で電気防食の原理(カソードにする)の説明問題が出る。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 防食電位「-850mV以下」は、より負の値(例:-1000mV)も含む。「以下」なので -850mVちょうどはOK。過防食は「-2,000mV以下(より負の値)」。絶縁防食はミクロセルには効果なし。

3-2. 電気防食法4種類比較(流電陽極法外部電源法選択排流法強制排流法

💡 図の見方:導管に迷い込んだ漏れ電流に、レールという帰り道を用意する2方式を並べた図。電線上の矢印が導管からレールへ向かっていること(排流の向き)を必ず確かめたい。選択排流法は整流器で逆流を防ぐが電車が走らなければ効かず、その弱点を直流電源で補ったのが強制排流法、という関係が要点。

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

電気防食の4種(流電陽極法外部電源法選択排流法強制排流法)の原理・長所・短所を比較表形式で整理する。乙種最頻出テーマ。

📖 解説(乙種ベース)

電気防食は、防食電流をどこから調達するかで4種類に分かれる。使い切りの乾電池で動かすか、コンセントから電気を取るか——その違いに近い。自前の金属を消耗させて電流をまかなうのが流電陽極法、外部の電源から供給するのが外部電源法だ。残る選択排流法強制排流法は、電気鉄道のレールという「帰り先」を使う方法である。原理・長所・短所の比較が乙種最頻出テーマになる。

まず流電陽極法(犠牲陽極法)。導管より自然電位が卑な金属(犠牲陽極材)を接続すると、そちらがアノードとなって腐食し、導管カソードとして保護される。前節の番付表そのままの応用だ。犠牲陽極材料にはマグネシウム(Mg)が広く使われる。鉄との電位差が大きいからである。

長所は3つ。比較的簡便・安価であること、他の埋設金属体に悪影響を及ぼさないこと、そして過防食のおそれがないことだ。3つめの理由は構造そのものにある。電圧が金属どうしの電位差ぶんしか出ないため、下げすぎようがない。

短所はその裏返しになる。電圧が小さいので、塗覆装の抵抗が小さい場合には適さない。無理に使えば防食電流が過多となり、Mgの損耗が激しくなる。消耗品である以上、定期的な補充も必要だ。

次に外部電源法。直流電源装置から土中の電極に強制的に電圧を加え、電極から土壌を経て導管へ防食電流を流入させる。配線は、直流電源のプラスを電極に、マイナスを管に接続する。この極性が急所だ。逆につなげば管から電流が流出することになり、守るはずの導管を腐食させてしまう。

長所は電圧の大きさに由来する。電圧を自由に設定でき(ただし60V以下)、塗覆装の抵抗が低い場合や大規模導管の防食も可能で、常時防食ができる。直流電気鉄道レールからの漏れ電流の影響の大きい管路も、完全に防食できる。短所も同じ理由から生じる。高価であり、電圧が大きいため他の金属構造物への干渉・過防食を考慮する必要がある。

3つめの選択排流法は発想が違う。導管と電気鉄道のレールを接続し、導管に流入した漏れ電流をレールに帰還させる——迷い込んだ電流に帰り道を用意してやる方法だ。回路には整流器を組み込み、電流の逆流を防止する。ここは「変圧器」に置き換えた選択肢が出るので、整流器と覚えておきたい。

長所は、安価であること、電気鉄道近傍の電食対策では効果が大きいこと、構造が簡便で保守・点検が容易なことだ。短所としては、レールの電位変化により防食効果が常時得られない場合があること、電流制御が難しく他の金属構造物への干渉・過防食に注意が要ることが挙げられる。さらに決定的な弱点が一つある。電車が走行していない場合は防食効果がない。だから他の防食法との併用が必要になる。

その弱点を電源で補ったのが強制排流法である。導管と電気鉄道のレールを接続する回路に直流電源装置を入れ、強制的にレールへ排流する。外部電源法選択排流法を組み合わせた方法という位置づけだ。外部電源法に比べて安価で、導管を常時防食状態にできる。

ただし電源を持ち込んだぶん、短所も外部電源法寄りになる。電圧が大きいため他の金属構造物への干渉・過防食に注意が必要で、とくにレールに近接する部分が過防食になりやすい。電気鉄道への影響も考慮しなければならない。

覚える
流電陽極法=Mg犠牲・過防食なし・低電圧/外部電源法=高価・電圧自由(60V以下)・大規模対応/選択排流法=整流器を組込み・電車が走らなければ効果なし

🟦 甲種プラスα

甲種では「電気防食法4種類比較(流電陽極法外部電源法選択排流法強制排流法)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。

🖼 図解
電気防食の代表2方式(流電陽極法/外部電源法)電気防食の代表2方式(流電陽極法/外部電源法)
🖼 図解
選択排流法と強制排流法:レールへ電流を帰す2方式の違い選択排流法と強制排流法:レールへ電流を帰す2方式の違い

⚡ 焦点ポイント

4種の電気防食法の「長所・短所」の比較が乙種最頻出。「流電陽極法=Mg犠牲・過防食なし・低電圧」「外部電源法=高価・電圧自由・大規模対応」の対比を正確に覚える。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「流電陽極法は過防食のおそれがない」→正しい(電圧が小さいため)。「外部電源法は電圧を自由に設定できるので塗覆装の抵抗が小さい場合に適する」→正しい。選択排流法は「整流器」(×変圧器)を組み込む。

4. 防食設計(腐食原因調査・各種電位測定・設計フロー・仮通電試験)

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

防食設計の基本フロー(調査→データ分析→防食方式選定→施工→効果確認)と腐食原因調査の測定項目(管対地電位地表面電位勾配・Redox電位等)を整理する。

📖 解説(乙種ベース)

原因を調べずに薬を出す医者にはかかりたくない。防食も同じで、腐食原因を調べないまま防食処置をすると、腐食をさらに進める結果になる場合がある。だから防食設計は「調査が先」という順序そのものが出題ポイントになる。

基本フローはこうだ。対象経路をまず調査し、調査データを分析する。このとき防食レベル・防食範囲・各種防食方式の得失・コストを考慮する。そのうえで防食方式を選定し(流電陽極法 or 外部電源法 or 選択排流法 or 強制排流法)、通電試験/排流試験/強制排流試験にかける。結果を踏まえて防食設計 → 防食施工 → 効果・影響調査 → 電気防食管理へと進む。

調査の対象は何でもよいわけではない。主として短期間で孔食を生じるような、速度の速い腐食(電食マクロセル腐食等)が狙いになる。じわじわ進む腐食より、穴を開けてしまう腐食が先だという優先順位である。

管路及び周辺調査では3点を見る。腐食状態の調査では、腐食の形状・被覆状況から腐食原因を推定する。管路調査では、防食状況やコンクリート貫通部等——マクロセルのカソード部になる場所——を調べる。周辺調査では、直流電気鉄道や他の電気防食設備(外部電源等)の有無を確かめる。

土壌等の環境調査は4項目だ。土壌pHは酸性ほど腐食しやすく、pH4以下では水素発生型腐食の可能性がある。土壌比抵抗は低いほど電流が流れやすく腐食しやすい(Cl⁻・SO₄²⁻含有率が比抵抗を低下させる)。含水率は高いほど腐食性物質の溶解・比抵抗低下・通気性不良を招き、腐食速度を速める。酸化還元(Redox)電位は、硫酸塩還元菌の活動促進環境か否かの判定に使う。

残るのが電位の測定で、管対地電位地表面電位勾配・Redox電位等を組み合わせて原因を絞り込んでいく。

電位の測定は、腐食の現場を電気的に「見る」作業だ。5つの測定を目的別に使い分ける。

管対地電位(P/S)は、土壌・コンクリート等に置いた照合電極に対する導管の電位、つまり土壌と導管の電位差である。照合電極には通常飽和硫酸銅電極を使用する。鉄の自然電位は-500〜-700mV(地中の管の自然電位も-500〜-700mV)なので、これを基準に読む。2点間で大きな電位差があれば、マクロセルが形成されており電位の低い方で腐食している可能性がある。

地表面電位勾配(S/S)は、地表面の2点間の電位差を測る。名前は似ているが、測る対象が違う。P/Sが管の電位、S/Sは地表の電位差——ここを取り違えさせる選択肢が出る。これによって迷走電流の流出入、すなわち電流がどちらへ出入りしているかの方向が分かる。

③レール電位では、レール対地電位(R/S)・レール対管電位(R/P)を測定する。レールから土壌への迷走電流の影響と、選択排流法等の防食効果を推定するためだ。④接地抵抗は、ガス管・電極等の埋設金属体と土壌との電気抵抗で、防食設計時の調査や、防食効果が得られない場合の原因調査に使う。⑤電流測定は、マクロセル腐食の程度・電流流出地点の推定に用いる。

覚える
管対地電位(P/S)=照合電極は飽和硫酸銅電極地表面電位勾配(S/S)=迷走電流の流出入調査/Redox電位=硫酸塩還元菌の判定

調査が済んでも、いきなり本設計には進まない。防食設計は仮通電試験を行い、その結果に基づいて設計するのが一般的である。仮極(地中・水中)に電源プラス極を接続し、対象物にマイナス極を接続して通電する。電流の大きさ・対地電位の変化から、塗覆装の程度・電気防食が可能か・必要電流量・防食効果を調査する。

各種防食装置を設置する際にも、対応する試験がある。外部電源法なら通電試験・排流試験、強制排流法装置なら強制排流試験だ。

🟦 甲種プラスα

管対地電位(P/S)の照合電極=飽和硫酸銅電極」「地表面電位勾配(S/S)=迷走電流の流出入調査」「Redox電位=硫酸塩還元菌判定」の3点が甲種頻出

🖼 図解
防食設計の基本フロー(調査から電気防食管理まで)防食設計の基本フロー(調査から電気防食管理まで)

⚡ 焦点ポイント

管対地電位(P/S)の照合電極=飽和硫酸銅電極」「地表面電位勾配(S/S)=迷走電流の流出入調査」「Redox電位=硫酸塩還元菌判定」の3点が甲種頻出。防食設計フローの順序も重要。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「腐食原因を調べないまま防食処置すると腐食をさらに進める場合がある」は正しい(重要)。地表面電位勾配は「電位差」であり「電位そのもの」ではない。P/Sは管の電位、S/Sは地表の電位差。
  • 「管対地電位(P/S)の照合電極=飽和硫酸銅電極」「地表面電位勾配(S/S)=迷走電流の流出入調査」「Redox電位=硫酸塩還元菌判定」の3点が甲種頻出
  • 防食設計フローの順序も重要

5. 防食管理と供内管の防食(塗覆装絶縁継手設置・電気防食・点検時期)

重要度: 乙B / 甲B

🎯 一言で

防食設備の定期点検(点検時期=防食状況の最も悪い時期:湿潤期・電気鉄道運行時)と供内管の防食措置(露出部・埋設部別の塗覆装絶縁継手設置位置)を整理する。

📖 解説(乙種ベース)

雨漏りの点検は、晴れた日にしても意味がない。防食設備の点検も同じ考え方で組み立てられている。まず前提として、防食管理には資料が要る。路線状況・防食設備等の台帳・図面類・電鉄・土壌環境等の情報を整備しておく。

そのうえで定期点検を行い、防食設備の機能が維持されているかを、路線の電位を測定して確認する。落雷・大雨時や電気鉄道の事故発生時には、定期を待たずに臨時点検を実施する。

問題はいつ点検するかだ。点検は防食の最も悪い時期・時間帯をとらえて行う。最悪の条件で合格していれば、他の条件でも安全だからである。時期としては雨季等の土壌の湿潤期が望ましく、年1回の場合は夏季に行う。時間帯は電気鉄道の運行時——迷走電流の影響が最大になる時間帯を狙う。

覚える
点検時期=土壌の湿潤期(年1回なら夏季)/時間帯=電気鉄道の運行時。いずれも防食状況が最も悪い条件をとらえる

工事の場面にも留意点がある。電気防食を行っている導管を切断する場合、電気火花が発生するおそれがある。そこで防食設備の電源を切るか、電線で接続(ボンド)してから切断する。

ここからは供内管の防食に話を移し、塗覆装絶縁継手・電気防食の使い分けを見ていく。

供内管は露出部と埋設部に分けて防食措置を講じる。同じ管でも、空気にさらされる区間と土に埋まる区間では相手が違うからだ。

まず塗覆装による措置。金属表面が水・土壌・コンクリートと接触する部分には塗覆装が必要になる。下水等の暗きょ内に設置される箇所は、さや管及び塗覆装で二重に守る。それ以外の配管には、さび止め・亜鉛メッキ・塗覆装を施す。

露出部の防食では、内管の露出部(床下部・腐食性雰囲気内の露出部を除く)の自然腐食対策として、亜鉛メッキ鋼管を用いるか錆止め塗装を施す。使うのは亜鉛メッキ鋼管または塗覆装を施した鋼管である。ここで一つ禁止事項がある。ポリエチレン管は露出部に使用できない(使えるのは埋設部に限る)。

埋設部はその逆になる。腐食のおそれがないポリエチレン管を用いるか、管が直接土壌と接触しないよう塗覆装等を施した鋼管を使用する。そして亜鉛メッキ鋼管は埋設部には使用しない。露出は亜鉛メッキ、埋設はポリエチレン——この使い分けを入れ替えた選択肢が定番の引っかけだ。

絶縁による措置も欠かせない。建物に引き込まれた配管はコンクリートに接触する機会が多く、マクロセル腐食のリスクが大きい。そこで屋内配管に流入した電流が埋設部の配管に流れないよう、一般に埋設配管部近くの架空配管部に絶縁継手を設置する。地中側ではなく地上側という位置が問われる。

キーワード
絶縁継手 — 埋設配管部近くの架空配管部に設置し、電流の通り道を断つ継手。絶縁ねじ継手・絶縁フランジの2種類

さらに防食効果を高めるため、埋設配管に流電陽極法による電気防食を併用する場合がある。塗覆装・絶縁・電気防食を重ねがけするという考え方だ。

🖼 図解
供内管の防食(露出部と埋設部の材料使い分け)供内管の防食(露出部と埋設部の材料使い分け)

⚡ 焦点ポイント

「点検は湿潤期・電気鉄道の運行時に行う」「供内管の露出部=亜鉛メッキか錆止め塗装、ポリエチレン管は露出部不可」「絶縁継手の設置位置=埋設配管部近くの架空配管部」が頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 ポリエチレン管は『埋設部限定』で露出部には使用できない。亜鉛メッキ鋼管は『露出部』に使用し、『埋設部』には用いない。この露出・埋設の使い分けが引っ掛けポイント。電気防食を行っている導管の切断には電気火花の発生に注意。
  • 「点検は湿潤期・電気鉄道の運行時に行う」「供内管の露出部=亜鉛メッキか錆止め塗装、ポリエチレン管は露出部不可」「絶縁継手の設置位置=埋設配管部近くの架空配管部」が頻出

🔢 供給の重要数値・設備の整理

腐食の電池モデル:

アノード: 金属が溶け出す側(腐食側)

カソード: 電子を受け取る側(健全側)

– 電解質: 土壌・水分

腐食の分類:

マクロセル腐食: 異種金属・コンクリート/土壌界面など、広範囲の電位差

ミクロセル腐食: 同一金属内の微細な電位差

電食: 直流電流による強制的な腐食

電気防食の4方法:

方法原理用途
流電陽極法卑な金属(Mg・Zn)を犠牲陽極に短距離・小規模
外部電源法直流電源で防食電流注入大規模・長距離
選択排流法電気鉄道の漏えい電流を排出鉄道近接
強制排流法電源強制で電流方向制御鉄道近接(高度)

防食電位:

– 鋼の防食電位: -0.85V(対飽和硫酸銅電極)以下

– 過防食(過剰電流): 水素脆化・塗覆装剥離のリスク

供給科目では、設備名・型式・運転条件の数値・配管材料の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・設備名・工法を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。

🗒️ 3分で復習(章末まとめ)

🎯 全節 一言まとめ

  • 節1 腐食の原理(アノード・カソード・電池作用・自然電位・マクロセル・ミクロセル): 腐食は電気化学反応で起きる。アノード(電流流出・腐食)・カソード(電流流入・保護)の概念、自然電位(上位=貴=腐食しにくい)、マクロセル腐食ミクロセル腐食の違いを理解する。
  • 節2 導管の腐食分類(電食・自然腐食:マクロセル・ミクロセル腐食・大気腐食): 埋設導管の腐食は電食自然腐食(マクロセル・ミクロセル)に大別される。電食(レール漏れ電流・ジャンピング)・マクロセル3種・ミクロセル3種の原因と特徴を整理する。
  • 節3-1 防食の種類(塗覆装・電気防食・絶縁等)と防食電位・過防食: 防食は「塗覆装」「電気防食」「その他(絶縁・メッキ・耐食材料・ポリエチレンスリーブ)」の3大分類。防食電位の基準値(-850mV以下)と過防食条件(-2000mV以下)を覚える。
  • 節3-2 電気防食法4種類比較(流電陽極法・外部電源法・選択排流法・強制排流法): 電気防食の4種(流電陽極法外部電源法選択排流法強制排流法)の原理・長所・短所を比較表形式で整理する。乙種最頻出テーマ。
  • 節4 防食設計(腐食原因調査・各種電位測定・設計フロー・仮通電試験): 防食設計の基本フロー(調査→データ分析→防食方式選定→施工→効果確認)と腐食原因調査の測定項目(管対地電位地表面電位勾配・Redox電位等)を整理する。
  • 節5 防食管理と供内管の防食(塗覆装・絶縁継手設置・電気防食・点検時期): 防食設備の定期点検(点検時期=防食状況の最も悪い時期:湿潤期・電気鉄道運行時)と供内管の防食措置(露出部・埋設部別の塗覆装絶縁継手設置位置)を整理する。

⚡ 全節 焦点ポイント

  • 節1: 「アノード=腐食側」「カソード=保護側」「自然電位が低い(卑)ほど腐食しやすい」の3点は必須。「鉄より卑なMg・亜鉛は犠牲陽極として使える」という発展知識も重要。
  • 節2: 「電食vs自然腐食」「マクロセルvs ミクロセル」「通気差腐食のアノードは通気性の悪い部分」「コンクリート中の鉄はカソード」「鋼管鋳鉄管鋼管アノード」が毎年頻出。
  • 節3-1: 「防食電位 = -850mV以下」「過防食 = -2,000mV以下」の数値は確実に暗記する。絶縁による防食は「ミクロセル腐食は防止できない」も重要。甲種で電気防食の原理(カソードにする)の説明問題が出る。
  • 節3-2: 4種の電気防食法の「長所・短所」の比較が乙種最頻出。「流電陽極法=Mg犠牲・過防食なし・低電圧」「外部電源法=高価・電圧自由・大規模対応」の対比を正確に覚える。
  • 節4: 「管対地電位(P/S)の照合電極=飽和硫酸銅電極」「地表面電位勾配(S/S)=迷走電流の流出入調査」「Redox電位=硫酸塩還元菌判定」の3点が甲種頻出。防食設計フローの順序も重要。
  • 節5: 「点検は湿潤期・電気鉄道の運行時に行う」「供内管の露出部=亜鉛メッキか錆止め塗装、ポリエチレン管は露出部不可」「絶縁継手の設置位置=埋設配管部近くの架空配管部」が頻出。

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