そこで止まるのは、ガスの知識が足りないからではなく、等式をいじる操作のほうを思い出せていないだけ、ということがほとんどです。
このページでは、ガス主任技術者試験の計算に必要な算数・数学だけを、実際の試験で出てくる式を使っておさらいします。必要なのは中学2年生ぐらいまでの内容で、新しく覚えることはほとんどありません。
公式そのものより、ここを先に固めたほうが点は伸びます。
0. 文字式に慣れる(記号は「まだ分からない数」)1. 移項 ―― 「=」をまたぐと符号が変わる2. たすき掛け ―― 分数=分数の形を一瞬で崩す3. 「求めたい文字」を左に残す ―― 3つの型4. 比で解く ―― ∝ の使い方(計算量が激減します)5. 単位の換算 ―― 失点のいちばん多い場所6. 10のべき乗と平方根7. 「最も近い値」を選ぶ試験だからこそ使える手
0. 文字式に慣れる(記号は「まだ分からない数」)
PV = nRT のような式に出てくる文字は、すべてただの数です。P は圧力の数、V は体積の数、というだけで、身構える必要はありません。
文字を使うのは、まだ数が決まっていないものに名前をつけておくと便利だからです。
文字と文字の間の掛け算記号は省略されます。PV は P × V、nRT は n × R × T のことです。
2t は 2 × t。数と文字が並んでいたら掛け算だと思ってください。
1. 移項 ―― 「=」をまたぐと符号が変わる
移項というのは、実際には両辺に同じ数を足す(引く)という操作の省略形です。
たとえば x + 3 = 10 で、両辺から3を引くと x = 10 – 3 = 7。「左の +3 が右へ行って −3 になった」ように見えるのが移項です。
- T = t + 273
- 両辺から273を引く
- T – 273 = t
- つまり t = T – 273
掛け算・割り算も同じです。両辺を同じ数で割る(掛ける)と考えます。
3x = 12 なら、両辺を3で割って x = 4。「掛かっていた3が、反対側へ行って割り算になった」と見えます。
- σ = FA
- A で割られているので、両辺に A を掛ける
- σ × A = F
- つまり F = σ A
自信がないときは移項という言葉を使わず、「両辺から○○を引く」「両辺を○○で割る」と声に出して1行ずつ書くほうが、結局は速くて確実です。
2. たすき掛け ―― 分数=分数の形を一瞬で崩す
AB = CD という形になったら、斜めに掛けたもの同士が等しいと書き直せます。つまり A × D = B × C。
これを「たすき掛け」と呼びます。斜めに線を引くと、たすきの形になるからです。
なぜそうしてよいのか。両辺に B を掛け、さらに D を掛けているだけです。AB × B × D = CD × B × D を整理すると AD = CB になります。
分数のままだと扱いにくいので、まず分数をなくす——これが目的です。
- P1 V1T1 = P2 V2T2
- たすき掛けして分数をなくす
- P1 V1 × T2 = P2 V2 × T1
- T2 に掛かっている P1 V1 を、両辺を割って外す
- T2 = P2 V2 T1P1 V1
この形にしてから数を入れれば、途中で分数のまま計算する必要がなくなります。
数を入れるのは、求めたい文字だけが左に残ってから。これが計算ミスを減らす一番のコツです。
迷ったら、12 = 24 という当たり前の式で試してください。斜め掛けなら 1 × 4 = 2 × 2 で正しく、上下掛けだと 1 × 2 = 2 × 4 で合いません。
3. 「求めたい文字」を左に残す ―― 3つの型
求めたい文字がどこにあるかで、外し方が決まります。
| 求めたい文字の位置 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 掛けられている(3x の x) | その数で両辺を割る | 3x=12 ⇒ x=4 |
| 割られている(x3 の x) | その数を両辺に掛ける | x3=4 ⇒ x=12 |
| 分母にいる(3x の x) | まず両辺に x を掛けて分母から出す | 12x=3 ⇒ 12=3x ⇒ x=4 |
- q = λ Δ TL
- L を分母から出すため、両辺に L を掛ける
- q L = λ Δ T
- L に掛かっている q を、両辺を割って外す
- L = λ Δ Tq
4. 比で解く ―― ∝ の使い方(計算量が激減します)
∝ という記号は「比例する」と読みます。Δ P ∝ Q2 は「圧力損失は流量の2乗に比例する」という意味です。
比例するとき、係数や単位を知らなくても、倍率だけで答えが出ます。
- 変化後を2、変化前を1として比を作る
- Δ P2Δ P1 = (Q2Q1)2
- Q2Q1 = 2 を入れる
- Δ P2Δ P1 = 22 = 4
- 答え:4倍
「2乗に比例」なら2倍で4倍、3倍で9倍。「平方根に比例」(Q ∝ H)なら、4倍になってやっと2倍です。
導管の流量公式に出てくる D5 のような形も同じで、口径が2倍なら 25 = 32 倍、その平方根をとって約5.7倍、と積み上げていけば計算できます。
このとき単位換算はいりません(両辺で同じ単位なら、割り算で消えるため)。計算量が大きく減るので、まず比で解けないかを疑ってください。
5. 単位の換算 ―― 失点のいちばん多い場所
| 記号 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| k(キロ) | 1000倍 | 1 kPa = 1000 Pa |
| M(メガ) | 100万倍 | 1 MPa = 1000 kPa = 1000000 Pa |
| c(センチ) | 100分の1 | 1 cm = 0.01 m |
| m(ミリ) | 1000分の1 | 1 mm = 0.001 m |
覚え方は「大きい単位から小さい単位に直すときは数が増える」。1 m は 1000 mm、と考えれば向きを間違えません。
断面積 A = π4 D2 の計算で、D を cm のまま入れてしまう誤りが非常に多いです。式に入れる前に、長さはすべて m に直すと決めておくのが安全です。
- 27℃ → 27 + 273 = 300 K
- −10℃ → -10 + 273 = 263 K
- ※ ただし温度差を聞かれたときは換算不要。50℃の差は50 Kの差と同じです
覚えておくと得をする換算がひとつ。1 MPa = 1 N/mm² です。応力や管厚の計算では、この関係を知っていれば単位換算がほとんど不要になります。
6. 10のべき乗と平方根
105 は 1 のうしろに 0 が5個で 100000。10-5 は 1105 で 0.00001。
掛け算では指数を足すだけです。105 × 10-5 = 100 = 1。
- 数の部分だけ先に計算:2.1 × 1.2 = 2.52
- 10のべき乗だけ計算:105 × 10-5 = 100 = 1
- 2.52 × 1 × 50 = 126
- 答え:126 N/mm²
数の部分と10のべき乗を分けて計算する——これだけで、桁を間違えにくくなります。
平方根は「2乗するとその数になる数」です。4 = 2、9 = 3。
試験では 2 1.41、3 1.73、5 2.24 を覚えておけばほぼ足ります。多くの場合、比の形にすれば 4 = 2 のようなきれいな数になります。
7. 「最も近い値」を選ぶ試験だからこそ使える手
設問はほぼ必ず「最も近い値はどれか」という聞き方で、選択肢は5つ。つまりおおよその値が出れば正解できます。
小数第2位まで厳密に計算する必要はなく、途中で丸めて構いません。
たとえば 200124.8 を計算するとき、200125 = 1.6 と見てしまってよい。選択肢が 1.2 / 1.6 / 2.6 / 3.4 / 5.2 のように離れていれば、これで十分決まります。
計算後に「この数字は現実的か」を一度考えてください。たとえば導管の管厚が0.2 mmや200 mmになったら、明らかにおかしいと気づけます。
時間配分の目安:計算問題1問に3分以上かかっているなら、いったん飛ばして先に進むべきです。知識問題を確実に取ってから戻ったほうが、全体の点は高くなります。
おわりに
それでも分からない箇所があれば、どの問題のどの行で詰まったかをお問い合わせから教えてください。その部分の解説を書き足します。実際、このページ自体が「解説を読んでも分からない」というご意見から生まれました。
