製造 第1章 原料ガスとLNG基地

製造 第1章 原料ガスとLNG基地 解説動画
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都市ガスの原料となる天然ガスLNGLPGオフガスバイオガスの性状と取扱い留意点を扱う章です。LNGの低温・気化・漏えい時の挙動、貯槽内のロールオーバー現象LPGオフガスバイオガスなどの代替原料の特徴までを学びます。

乙種甲種兼用 / 全3節 / 学習目安: 30〜60分

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📍 はじめに

都市ガスは、原料そのものから始まります。LNG はマイナス162℃の極低温液体で、扱いを誤ると重大事故になる代物。この章では、原料ごとの性質と現場での留意点を整理し、後続章(製造設備・運転管理)の前提を作ります。


📚 テキスト解説

各節は次の構成で進みます。

– 🎯 一言で

– 📖 解説(乙種ベース)

– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)

– ⚡ 焦点ポイント

– 📝 過去問のひっかけ例


1. 天然ガスLNGの性状と特徴(都市ガス原料の概要)

重要度: 乙C / 甲C

🎯 一言で

都市ガスの原料は液体原料(LNGLPG)と気体原料(天然ガスオフガス)に分類される。天然ガスは構造性・水溶性・炭田ガスに大別され、国産天然ガスは不純物が少なく脱硫不要だが脱炭酸が必要。LNG(液化天然ガス)は天然ガスを約−160℃まで冷却液化したもので、体積が約1/600になり海上輸送が可能。メタンを主成分とし、CO₂・H₂S等の不純物を精製除去済みのクリーンな原料。

覚える
LNG=−162℃で液化した天然ガス。液体の体積は気体の約1/600

📖 解説(乙種ベース)

ガス会社が最初に向き合う相手は、燃焼でも配管でもなく「原料そのもの」だ。何を原料に選ぶかで、必要な設備も、扱いの危険も、供給できるガスの熱量も決まってしまう。まずは都市ガスの原料にどんな顔ぶれがいるのかを押さえたい。

分け方は単純で、液体のまま運ぶか、気体のまま受けるかである。液体原料がLNG(液化天然ガス)とLPG(液化石油ガス)、気体原料が天然ガスオフガス。液体で運べるものは体積が小さく、遠くから大量に運べる——この一点が原料の選択を左右してきた。

かつての都市ガスは、地域ごとにガスの種類がばらばらだった。それを一本化したのがIGF21計画で、2010年3月に高カロリーガス(13A中心)への集約が完了している。現在はLNG天然ガスを原料とするガスと、プロパン・エアー混合ガス方式に集約された。

集約後に実際に供給されているガスの性状を、下の表で見比べておきたい。総発熱量・比重・MCPが原料によってどう変わるかが、この章の出発点になる。

供給ガス性状例

🖼 図解
LNGの基本性状(-162℃・体積1/600)LNGの基本性状(-162℃・体積1/600)
種別総発熱量(MJ/m³)比重(空気=1)MCP
LNG気化ガス1450.6437
LNG気化ガス2460.6637
プロパン・エアー631.3441
天然ガス12A400.5636

天然ガスの種類

天然ガスと一口に言っても、どこにどう埋まっていたかで3つに分かれる。まず構造性天然ガス(石油系ガス)。原油とともに産出するものを油井ガス(随伴ガス)、ガスだけが単独で産出するものをガス井ガス(非随伴ガス)と呼ぶ。石油を掘ったついでに出るか、ガス目当てに掘って出るかの違いだ。

次に水溶性ガス(メタン系ガス)。水に溶解しており、地下水と一緒に産出する(例:千葉県)。三つめが炭田ガスで、炭田地帯の炭層や炭層付近の地層に存在する。産状が違えば、混じっている不純物の顔ぶれも変わる。

国産天然ガスの特徴

国産天然ガスはH₂S等の不純物が少ない。だから脱硫設備等の精製設備を必要としない。ここで「では精製は一切不要か」と踏み込むと足をすくわれる。CO₂が多く含まれる場合は、水と共存して導管を腐食するため「脱炭酸」が必要になるからだ。出題者はこの一線をまたがせにくる。

もうひとつの敵が水分である。高圧輸送時に凝縮して障害を起こすうえ、天然ガスと結合してガスハイドレート(雪状固体)を生成する。だから水分除去と露点管理が重要になる。

国産天然ガスの組成例:

成分水溶性ガス(千葉)構造性ガス(新潟)
CH₄ (%)9987
C₂H₆ (%)0.027.2
C₃〜 (%)0.004.9
CO₂ (%)0.500.15
比重0.60.7
発熱量(MJ/m³)4045

LNG(液化天然ガス)の性状

気体のままの天然ガスは、船で運ぶにはあまりに嵩張る。そこで天然ガスを約−160℃まで冷却液化したものがLNGである。旅行前に衣類を圧縮袋へ押し込むのと同じで、体積を削って初めて海を渡れるようになる。

この冷却は副産物も生む。液化前にCO₂・H₂S・水分・水銀・重質炭化水素等を精製除去しておく必要があるため、出来上がったLNGは不純物のないクリーンな原料になる。冷やすために掃除したら品質まで上がった——そう理解しておくと、後の「脱硫設備が不要」という話が腑に落ちる。

キーワード
LNG天然ガスを約−160℃まで冷却液化したもの。液化前にCO₂・H₂S・水分・水銀・重質炭化水素等を精製除去済み

LNG産地別組成例(成分 %):

成分豪州マレーシアカタールサハリン
CH₄87919092
C₂H₆8.25.06.44.6
C₃H₈3.32.92.22.1
C₄H₁₀0.91.01.01.0
N₂0.050.10.20.06
液体密度(kg/m³)465456457451
総発熱量(MJ/m³)45444443

LNG都市ガス原料としての特徴

原料として見たLNGには、良い面と厄介な面が背中合わせで付いてくる。良い面は手間のなさだ。不純物がなく、脱硫設備等の精製設備を必要としない。さらに極低温であること自体を資源にでき、LNGの冷熱を利用することができる(冷熱発電・空気液化分離等)。

厄介な面は、その極低温そのものである。受入基地として低温貯蔵設備と気化装置が必要になる。極低温液体だから設備材料の選択と取扱いに注意を要し、気化特性・ロールオーバー現象・水和物等が問題になる。次節はこの厄介さを一つずつ潰していく話だ。

貯蔵中も静かではない。貯蔵中に外部からの入熱でBOG(ボイルオフガス/蒸発ガス)が発生するからである。しかも減るのは量だけではない。残った液はメタン以外の成分の濃度が高まる(濃縮)。その結果、沸点上昇・液密度増加・発熱量増加が同時に進む。

キーワード
BOG(ボイルオフガス/蒸発ガス) — 貯蔵中に外部からの入熱で蒸発したガス。発生すると液は濃縮し、沸点上昇・液密度増加・発熱量増加

最後に体積を確認しておきたい。LNGは気化すると体積が約600倍になる(1/600に圧縮して液体輸送)。この倍率こそが、わざわざ極低温まで冷やす理由のすべてである。

⚡ 焦点ポイント

乙種ではC評価のため出題頻度は低いが、「国産天然ガスは精製不要・脱炭酸は必要」「LNGは体積1/600・不純物除去済み」という基本事項は他章と絡めて問われることがある。「水溶性ガスは水に溶解して地下水と一緒に産出する」という定義も確認。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「国産天然ガスは不純物が少ないので精製不要」は正しい。ただし「CO₂が多い場合は脱炭酸が必要」という点で精製が全く不要ではない。「LNGはBOGが発生すると濃縮が進む」→ 沸点が上昇し液密度が増加する(発熱量も増加)。

2. LNG取扱い留意事項(気化・低温・漏えい・貯槽内挙動・各種トラブル)

💡 図の見方:同じ漏えいガスでも、冷たいうちは空気より重く地表面に漂い、温まると空気の約半分の重さになって上へ拡散する、という向きの変化を左右で対比した図です。白い霧の内側に可燃性混合気があるので、霧の見える範囲が危険域の目安になります。試験では「メタンは常に空気より軽い」と言い切る選択肢が出ますが、約−110℃以下という条件がついている点をこの図で確かめてください。

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

LNGは−160℃の極低温液体で、気化・低温・漏えい・貯槽内挙動の各面で特有の危険がある。主要トラブル:ベーパーロック(気化で送液不可)・ロールオーバーBOG急増・圧力急上昇)・水和物(ライン閉塞)・ボーイング(配管弓状変形)・液封(圧力上昇)・ガイザリング(配管振動)・液撃(管路内衝撃)。プール燃焼消火は粉末消火剤で火炎前から左右に掃き、注水は厳禁。

📖 解説(乙種ベース)

あなたが受入基地の当直だとして、扱う液体は−160℃。常温の常識がそのまま通じる相手ではない。LNGの取扱いで問われるのは、この極低温が設備に何をするか、そして漏れたときに何が起きるか——その2点に尽きる。

まず材料から。LNG用機器は低温靭性(じん性:低温でのねばり強さ)に優れた材料を使用する必要がある。ここで用語がひっくり返るので注意したい。低温脆性=ぜい性とは逆の概念であり、選ぶべきは低温靭性の大きい材料だ。「低温脆性の大きい材料を用いる」という一文は、この裏返しを突いてくる定番の手口である。

材料を選んだら、次は冷やし方である。LNG機器を急激に冷却すると配管が弓状に変形する(ボーイング)。だからLNGを少しずつ注入して大きな温度差が生じないよう、時間をかけてクールダウンを行う。

もうひとつの準備が乾燥だ。LNG取扱い前に機器内を十分に乾燥させる。水分・油分が凍結してライン閉塞を招くのを防ぐためである。

キーワード
低温靭性(じん性:低温でのねばり強さ) — 低温脆性(ぜい性)とは逆の概念。LNG用機器は低温靭性の大きい材料を選ぶ

主要トラブルの整理

🖼 図解
ロールオーバー現象(層状化→密度逆転→BOG急増)ロールオーバー現象(層状化→密度逆転→BOG急増)
🖼 図解
LNGプール燃焼の消火LNGプール燃焼の消火
🖼 図解
LNG漏えい時の白い霧と、温度で変わる気化ガスの重さLNG漏えい時の白い霧と、温度で変わる気化ガスの重さ
トラブル名現象原因防止・対策
ベーパーロックLNG配管等の内部で気化して留まり、ポンプ等に吸い込まれて液送できなくなる。送液が不可能になったり、ポンプがキャビテーション(液体内の局所低圧部で蒸気の細かい気泡が発生し消滅時に衝撃)を起こすことがある急激な圧力低下や温度上昇
ボーイング配管が弓状に反るように変形する現象配管を急激にクールダウンすると、先に配管下部の温度だけが低下し、上部との温度差が大きくなり、金属の収縮量の差により生じる時間をかけてクールダウンすることで防止する
液封(Liquid Seal)配管の閉ざされた部分に液体が充満している状態。外気熱により温度上昇→LNGが膨張→内部圧力が上昇→フランジ等の弱い部分が破壊されるおそれバルブを閉じる操作等正しい手順でバルブ操作を行い、液を封じ込めない処置が重要
ガイザリング鉛直配管部での液・気相間の急激な相転移が連続して生じ、気液同伴状態で吹き上がる現象、またはそれにより発生する配管の振動現象LNGの受入配管等で、外部からの入熱によりLNGの一部が気化流れ方向に上り勾配をつけて配管に液が滞留しないようにする
液撃(水撃・ウォーターハンマー)管路内を流れるLNG等の流体を急激に締め切った時に、流体の慣性で管内に衝撃と高圧が発生する現象。発生した高圧は遠方の設備にまで衝撃を与える弁の急激な閉鎖やポンプの急停止等
水和物(ハイドレート)氷に似た水和物(ハイドレート)が生成し、ラインの閉塞トラブルを引き起こす液化ガスLNGLPG共通)が水と反応LNG設備はLNGを取り扱う前に機器内を十分乾燥させることが必要
ロールオーバー下層液に顕熱として蓄熱された熱分のBOGが「急激に」発生し、貯槽内圧が急上昇する現象。最悪の場合は貯槽破損に至る危険性がある層状化した上下層の密度差が逆転し、急激に混合すること層状化防止策(下記)による

漏えい時の対策

LNGが漏えいすると、まず目に入るのは白い霧だ。気化した低温メタンガスにより形成される可燃性混合気は、ほとんどの場合この「白い霧(白雲状態)」の内部に存在する。つまり白い霧は、危険域の存在範囲を示す一つの目安になる。見えない危険が、たまたま見える形で現れてくれているわけだ。

ではその霧は上へ逃げるのか、足元に溜まるのか。メタンは常温では空気の約半分の重さで拡散しやすい——ここまでは知識どおり。ところが「約−110℃以下の低温では空気よりも重い」ため、地表面に漂う可能性がある。冷えているうちは重く、温まれば軽い。この温度依存を落とすと、危険な場所の見当ごと誤る。

漏えいガスが燃えるとどうなるか。LNGが漏えいし大気中に気化・拡散した時、燃焼範囲内の混合気が火気に接すると着火する。拡散ガスに着火すると火炎が伝播し、液表面での燃焼(プール燃焼)となる。火が空中から液面へ降りてくる、と押さえておけばよい。

消火の作法は独特だ。使用する消火剤は粉末消火剤(二酸化炭素・ハロン等も可)。火炎の手前から左右に掃くようにして、火炎を前方に追い込み消火する。そして最大の急所が注水である。

注水は厳禁だ。水は冷やすどころか熱を与えてしまうからで、液面が攪拌されると同時に水からの入熱によりLNGの蒸発が助長され、かえって燃焼が盛んになる。さらに、ガスが漏えいした状態で消火するとかえって危険なため、漏えいが安全に停止されない限り消火しない。火を消すより先に、元を止める。

覚える
プール燃焼の消火は粉末消火剤。注水は厳禁(水からの入熱で蒸発が助長される)。漏えいが安全に停止されない限り消火しない

貯槽内の挙動:層状化とロールオーバー

貯槽の中は、静かに見えて静かではない。密度差の異なる異種LNGを貯槽に入れると、下層に重質液・上層に軽質液という異なった密度の層が形成されることがある。これが層状化だ。アイスコーヒーに注いだガムシロップが底に沈んで分かれたまま、という状態を思い浮かべてほしい。

問題は、この層が入熱を受けて逆方向へ動いていくことである。上層は側壁からの入熱及び下層液との界面からのわずかな入熱により徐々に濃縮され、液密度が上昇する。一方の下層は界面の加圧条件下で側壁・底部からの入熱により液温が上昇し、液密度が低下する。上は重くなり、下は軽くなる——両者はいずれ入れ替わる。

種明かしをしよう。上下の密度が逆転した瞬間、層は急激に混合する。このとき下層に顕熱として蓄熱された熱分のBOGが急激に発生し、貯槽内圧が急上昇する。これがロールオーバーであり、最悪の場合は貯槽破損に至る危険性がある。裏を返せば、層状化が生じていなければロールオーバーは発生しない。だから対策はすべて「層状化させない」に向かう。

層状化防止策は3つある。①受入時に、既存LNGと受入れるLNGの密度差が一定値を超えないよう管理する。②貯蔵中は貯槽内LNGの高さ方向の密度分布(温度分布)を常時監視する。③万一層状化が発生した場合は、他の貯槽に移送したり貯槽内を循環する等して層状化を解消する。③を「行ってはならない」と裏返す選択肢が出るので注意したい。

キーワード
層状化 — 密度差の異なる異種LNGが、下層に重質液・上層に軽質液と分かれた状態。層状化が生じていなければロールオーバーは発生しない

⚡ 焦点ポイント

「プール燃焼消火は粉末消火剤・注水は厳禁」は最頻出の引っ掛け。「ロールオーバーBOG急激発生→貯槽内圧急上昇」の流れを整理する。「メタン-110℃以下で空気より重い」という温度の数値も出題される。「ベーパーロック」「ガイザリング」「ボーイング」「液封」「液撃」の5つのトラブル名とその定義・原因・対策はセットで覚える。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 ■注水はLNGプール燃焼消火に使ってはならない(水からの入熱でLNG蒸発が助長される)。 ■ロールオーバーは「層状化が生じていない場合には発生しない」。密度差管理が予防の鍵。 ■「低温靭性の大きい材料を選ぶ」→低温靭性(じん性)大=低温脆性(ぜい性)小。「低温靭性が大きい」と「低温脆性が小さい」は同義。 ■ガスが漏えいした状態での消火は危険→まず漏えいを止める(バルブ閉止)のが先決。
  • 「定義」「原因」「対策」のいずれかが他の用語と入れ替えられる(類似名称の混同)

3. LNGプロジェクト・LPGオフガスバイオガス・次世代エネルギー原料

💡 図の見方:内側から1次防壁(タンク)→防熱部→2次防壁という入れ子の順序と、窒素を入れる場所が防熱部だけであることを示した図です。窒素を入れるのは酸素を先に追い出して、漏れても可燃性ガスが空気と混ざらないようにするためです。試験では封入ガスを「空気」や「酸素」に書き換える選択肢が定番なので、丸を散らした層が防熱部だけであることを目で覚えてください。

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

LNG液化基地では天然ガスを油分分離→酸性ガス除去→脱水→水銀除去→重質分除去→液化プロセスで精製液化。LNG船は1次防壁(タンク)・2次防壁を設け、防熱部間に窒素を封入。内航船は蓄圧方式。LPGプロパン(C₃H₈・発熱量99MJ/m³・沸点−42℃・比重1.5)とブタン(C₄H₁₀・129MJ/m³0℃・2.0)で空気より重く地表に滞留。バイオガスカーボンニュートラル・再生可能エネルギー。シロキサン(下水汚泥由来)・リモネン(柑橘類)に注意。

📖 解説(乙種ベース)

ここからはLNGが生まれる場所と、LNG以外の原料へ視野を広げる。産ガス国の液化基地で何をしているかを知ると、前節までの「LNGには不純物がない」がなぜ成り立つのかが分かる。答えは単純で、液化する前に全部抜いてあるからだ。

LNG液化基地(出荷基地)の精製フロー

精製の流れは一本道である。天然ガス → 油分分離 → 酸性ガス除去 → 脱水 → 水銀除去 → 重質分除去 → 液化プロセス。海外旅行の荷造りで、持ち込めないものを順に抜いていく手順に似ている。抜く順番と「なぜ抜くのか」が、そのまま出題される。

それぞれの理由を追ってみよう。油分(コンデンセート)分離は、ガスに同伴する油分を分離する工程。酸性ガス除去は、液化工程時の凝固防止・設備腐食防止・LNG品質のためCO₂・H₂Sを除去する。脱水は、ガスハイドレート(水分と天然ガスが結合した雪状の固体物質)の生成を防ぐための水分除去である。

残る2つが混同されやすい。水銀除去は、低温部材として広く使用されるアルミニウムを腐食する水銀を除去する工程。重質分除去は、低温で固化するペンタン等の重質分を分離する工程だ。水銀除去の目的を重質分除去にすり替えるのが定番の手口なので、工程と目的の対応で覚えたい。

最後が液化プロセスで、冷媒を圧縮し断熱膨張させることによる温度低下を利用して液化する。代表的な「混合冷媒方式」は、冷媒を冷却・分離しながら複数段の温度レベルに分け断熱膨張させる方式である。

LNG船(外航船

なぜLNG船はわざわざ極低温で運ぶのか。圧力をかけて液体にすれば常温で運べそうなものだが、それはできない。メタン臨界温度は−82℃と非常に低く、常温で加圧するだけでは液化しないからだ。だから常圧のメタンの沸点(約−160℃)近くの極低温で輸送する。「高圧に圧縮すれば常温でも液化できる」という一文は、ここで誤りになる。

次が蒸発性・可燃性への備えである。1次防壁(タンク)と2次防壁の間の防熱部には「窒素ガス」を封入する。万一タンクからガスが漏えいしても、空気と可燃性ガスが混合しないようにするためだ。酸素を先に追い出しておく、という発想である。なおBOGは通常、船の燃料として消費される。

三つめが低比重対策だ。LNGは比重が軽く貨物量当りのタンク容積が大きくなるため、風圧・操縦性・復原性対策が必要になる。船体が大きく軽いことが、そのまま操船の難しさに直結する。

タンクの方式は3つある。独立球形タンク方式(モス型)は、アルミニウム合金製の球形タンク+スカートで船体に据え付ける方式。メンブレン方式は、船体内部に防熱材を取り付け、内面をメンブレン(金属の薄膜)で覆った構造。方形独立タンク方式(SPB方式)は、建造コストが高いため採用は限定的である。

LNG内航船

国内を走る船は事情が違う。国内就航中のLNG内航船の貨物タンクは「蓄圧方式」を採用しており、航海中に発生するBOGはタンクに蓄圧される。外航船BOGを燃料として消費する——この対比がそのまま出題される。

覚える
1次防壁と2次防壁の間の防熱部は「窒素」を封入(空気・酸素ではない)。内航船は蓄圧方式、外航船BOGを燃料として消費

LNGローリー・LNGコンテナ

陸を運ぶ手段も2種類ある。LNGローリーは車両(または牽引車両)にタンクが固定されたもの、LNGコンテナはタンクを強固なフレーム状のコンテナに収めて鉄道・道路輸送を可能にしたものだ。構造はどちらも、真空断熱方式を採用した内槽(LNGの貯槽)と外槽(保冷槽)からなる二重殻式横置円筒型の超低温容器である。

忘れやすいのが適用法令だ。高圧ガス保安法及び道路法等が適用される。ここを別の法律にすり替える選択肢に注意したい。

LPG(液化石油ガス)の性状と特徴

原料はLNGだけではない。LPGプロパン(C₃H₈)とブタン(C₄H₁₀)を主成分とする炭化水素で、LNGとは正反対の性格を持つ。発熱量は高く、比重は重い。下の表でメタンと並べると、その差がはっきりする。

性状比較:

🖼 図解
LNG液化基地の精製フロー(油分分離から液化まで)LNG液化基地の精製フロー(油分分離から液化まで)
🖼 図解
LNG船の1次防壁・2次防壁と防熱部に封入する窒素LNG船の1次防壁・2次防壁と防熱部に封入する窒素
性状プロパン(C₃H₈)ブタン(C₄H₁₀)メタン(参考)
総発熱量(MJ/m³)9912940
ガス比重1.52.00.55
沸点(℃)−420−161
燃焼下限(%)2.11.65.0

都市ガス原料用LPGには、2つの必要性状がある。①H₂S等の硫黄化合物を含まないこと。LPG貯蔵タンク材料への応力腐食割れを防ぐためだ。②水分または沈殿物を含まないこと。原料の純度が、そのままタンクの寿命に効いてくる。

使い方は3通りある。①製造ガスに混入して供給する(熱量調整)、②空気と混合してLPG・エアー混合ガスとして供給する、③LPガスを直接供給する。発熱量が高いという長所を、薄めて使うか、そのまま使うかの違いである。

LPG取扱い上の留意事項

まず気化現象。大気圧下でプロパンは約−40℃ブタン約0℃の沸点を有する液体である。外部からの入熱により一部が気化するため、貯蔵時の圧力上昇・計測器への影響等に注意する。そしてLNGと同様に液封防止についての考慮が必要だ。「LPGなら液封の心配はない」と書かれていたら誤りである。

次に拡散の向きがLNGと逆になる。LPGの気化ガスはプロパンで空気の約1.5倍、ブタンで空気の約2倍の重さがあるからだ。上へ抜けてくれず、着火源の多い地表面に滞留するため、取扱いには十分注意する。

燃焼限界(爆発範囲)はプロパンが2.1〜9.5%ブタンが1.6〜8.4%で、着火するとプール燃焼となる。最後が水和物だ。LPGは水と反応して氷に似た水和物を生成し、ラインの閉塞トラブルを引き起こす。だから機器内を充分乾燥させてから取り扱う。

オフガスバイオガス・次世代エネルギー原料

オフガス(Off Gas)は、他の工程の副産物を原料に回したものだ。石油精製のオフガス(H₂主成分)と石油化学のオフガス(CH₄等の炭化水素主成分)の2種類がある。現在は石油化学由来のオフガスLPGで増熱して都市ガスを製造・供給している。

バイオガスはバイオマスを原料として製造されるガスで、下水・家畜糞尿等の水分の多い有機物を無酸素状態でメタン発酵させて得る。無酸素、つまり嫌気性である点が急所だ。組成はほとんどがメタン(CH₄)と二酸化炭素(CO₂)である。

バイオガスが評価されるのはカーボンニュートラルだからだ。バイオマスは光合成によって生成した有機物であり、燃焼で放出するCO₂は生物の成長過程の光合成により吸収したCO₂である。ゆえにライフサイクルでは大気中のCO₂を増加させず、再生可能エネルギーに位置づけられる。

キーワード
カーボンニュートラル — 燃焼で放出するCO₂が成長過程の光合成で吸収したCO₂であるため、ライフサイクルでは大気中のCO₂を増加させないこと

ただし万能ではない。都市ガス原料にするにはCO₂・有害成分除去のため精製が必要であり、さらに発生量が季節・時間によって変動するためベースロード用ガスとして使用できない。「精製不要」「ベースロードに使える」と書かれたら誤りである。

もう一つ、バイオガスには厄介者が混じることがある。シロキサン(Si-O-Si結合)は下水汚泥由来のバイオガスに含まれる場合があり、シャンプー・リンス等に由来する。低濃度でもシリカとなって燃焼機器内燃機関内部に付着し、部品寿命に影響するため吸着除去が必要だ。リモネンは柑橘類の果皮に多く含まれ、機械のゴム部分を劣化させ、付臭をマスキングする。

キーワード
シロキサン(Si-O-Si結合) — 下水汚泥由来のバイオガスに含まれる。シリカとなって機器内部に付着するため吸着除去が必要

最後に次世代エネルギー原料を3つ。コールベッドメタン(CBM)は、石炭の生成過程で発生したメタンを主成分とする天然ガスが石炭層中に物理吸着状態で貯留されたもの。メタンハイドレートは、水分子がかご状に集合した中にメタン分子が取り込まれ氷状になっている固体物質で、日本近海に存在する。シェールガスは泥岩(頁岩:シェール)層に含まれる非在来型天然ガスで、砂岩層が貯留層の在来型ガス田とは異なる。

🟦 甲種プラスα

甲種では「LNGプロジェクト・LPGオフガスバイオガス・次世代エネルギー原料」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・設備名・原理をしっかり押さえてください。

⚡ 焦点ポイント

LPGのガス比重(プロパン1.5・ブタン2.0)と沸点(プロパン42℃ブタン0℃)は頻出数値。「LPGは空気より重く地表面に滞留する」→LNGとの違いとして頻出。「バイオガスカーボンニュートラル・再生可能エネルギー・精製必要・ベースロード不可」の4点。「LNG内航船は蓄圧方式」「LNG外航船BOGを燃料消費」という対比も出題される。「シロキサン:下水汚泥由来・吸着除去が必要」というキーワードを覚える。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 ■LPGは常温・常圧では気体だが、「加圧または冷却により容易に液化する」。 ■LPGは「プロパンで約2.1%、ブタンで約1.6%」の燃焼下限値。ブタンの方が燃焼下限が低い。 ■LNG船防熱部の封入ガスは「窒素」(酸素や空気ではない)。 ■「内航船は蓄圧方式」「SPB方式は建造コストが高く採用は限定的」。 ■バイオガスの「メタン発酵」は嫌気性発酵(無酸素)であることに注意。
  • 「42℃」が「47℃」「37℃」と書き換えられる
  • 「カーボンニュートラル」「再生可能エネルギー」「精製必要」のいずれかが他の用語と入れ替えられる(類似名称の混同)

🔢 製造の重要数値・設備の整理

LNGの基本物性:

– 沸点: -162℃(大気圧下)

– 液体→気体の体積比: 約1/600(液体1単位 → 気体600単位)

– 主成分: メタン(CH4)約90%

– 燃焼で水蒸気とCO2のみ生成(クリーン)

主要原料の比較:

原料主成分沸点用途
LNGCH4-162℃都市ガス13A原料
LPGC3H8/C4H10-42℃/約0℃増熱・サテライト基地
バイオガスCH4(発酵)再生可能エネルギー
製造科目では、設備名・型式・運転条件の数値・原料の物性値の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・設備名を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。

🗒️ 3分で復習(章末まとめ)

🎯 全節 一言まとめ

  • 節1 天然ガス・LNGの性状と特徴(都市ガス原料の概要): 都市ガスの原料は液体原料(LNGLPG)と気体原料(天然ガスオフガス)に分類される。天然ガスは構造性・水溶性・炭田ガスに大別され、国産天然ガスは不純物が少なく脱硫不要だが脱炭酸が必要。LNG(液化天然ガス)は天然ガスを約−160℃まで冷却液化したもので、体積が約1/600になり海上輸送が可能。メタンを主成分とし、CO₂・H₂S等の不純物を精製除去済みのクリーンな原料。
  • 節2 LNG取扱い留意事項(気化・低温・漏えい・貯槽内挙動・各種トラブル): LNGは−160℃の極低温液体で、気化・低温・漏えい・貯槽内挙動の各面で特有の危険がある。主要トラブル:ベーパーロック(気化で送液不可)・ロールオーバーBOG急増・圧力急上昇)・水和物(ライン閉塞)・ボーイング(配管弓状変形)・液封(圧力上昇)・ガイザリング(配管振動)・液撃(管路内衝撃)。プール燃焼消火は粉末消火剤で火炎前から左右に掃き、注水は厳禁。
  • 節3 LNGプロジェクト・LPG・オフガス・バイオガス・次世代エネルギー原料: LNG液化基地では天然ガスを油分分離→酸性ガス除去→脱水→水銀除去→重質分除去→液化プロセスで精製液化。LNG船は1次防壁(タンク)・2次防壁を設け、防熱部間に窒素を封入。内航船は蓄圧方式。LPGプロパン(C₃H₈・発熱量99MJ/m³・沸点−42℃・比重1.5)とブタン(C₄H₁₀・129MJ/m³0℃・2.0)で空気より重く地表に滞留。バイオガスカーボンニュートラル・再生可能エネルギー。シロキサン(下水汚泥由来)・リモネン(柑橘類)に注意。

⚡ 全節 焦点ポイント

  • 節1: 乙種ではC評価のため出題頻度は低いが、「国産天然ガスは精製不要・脱炭酸は必要」「LNGは体積1/600・不純物除去済み」という基本事項は他章と絡めて問われることがある。「水溶性ガスは水に溶解して地下水と一緒に産出する」という定義も確認。
  • 節2: 「プール燃焼消火は粉末消火剤・注水は厳禁」は最頻出の引っ掛け。「ロールオーバーBOG急激発生→貯槽内圧急上昇」の流れを整理する。「メタン-110℃以下で空気より重い」という温度の数値も出題される。「ベーパーロック」「ガイザリング」「ボーイング」「液封」「液撃」の5つのトラブル名とその定義・原因・対策はセットで覚える。
  • 節3: LPGのガス比重(プロパン1.5・ブタン2.0)と沸点(プロパン42℃ブタン0℃)は頻出数値。「LPGは空気より重く地表面に滞留する」→LNGとの違いとして頻出。「バイオガスカーボンニュートラル・再生可能エネルギー・精製必要・ベースロード不可」の4点。「LNG内航船は蓄圧方式」「LNG外航船BOGを燃料消費」という対比も出題される。「シロキサン:下水汚泥由来・吸着除去が必要」というキーワードを覚える。

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