供給 第9章 地震対策

供給 第9章 地震対策 解説動画
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地震対策の3つ(設備対策・緊急対策・復旧対策)を体系的に扱う章です。新設導管の耐震設計、既設導管の耐震性向上、供給停止ブロック、地震計、緊急停止判断、復旧計画までを学びます。論述で頻出。

乙種甲種兼用 / 全6節 / 学習目安: 30〜60分

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📍 はじめに

日本でガスを供給する以上、地震対策は避けられません。「平常時から備える(設備対策)」「地震直後に被害を広げない(緊急対策)」「速やかに供給を再開する(復旧対策)」の3層で論述するのが定型です。


📚 テキスト解説

各節は次の構成で進みます。

– 🎯 一言で

– 📖 解説(乙種ベース)

– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)

– ⚡ 焦点ポイント

– 📝 過去問のひっかけ例


📑 この章の目次(全6節)
  1. 1. 地震対策の概要(3つの対策)
  2. 2-1. 設備対策(新設導管の耐震設計)
  3. 2-2. 設備対策(既設導管の耐震性向上対策)
  4. 3-1. 緊急対策(供給停止ブロック・地震計・供給停止設備)
  5. 3-2. 緊急対策(第1次・第2次緊急停止判断)
  6. 4. 復旧対策(復旧計画・復旧ブロック・臨時供給)

1. 地震対策の概要(3つの対策)

重要度: ★ 乙B / 🟦 甲A

🎯 一言で

地震対策3分類:設備対策(事前=予防保全)・緊急対策(発生後=二次災害防止)・復旧対策(発生後=早期復旧)。バランスよく講じる。

📖 解説(乙種ベース)

地震はいつ来るか分からない。だから対策は「来る前」「来た直後」「その後」という時間軸で分けて考える。パソコンのバックアップと同じ構造だ——平常時にコピーを取り、障害が起きたら被害の拡大を止め、落ち着いてから元に戻す。ガスの地震対策も、この3層で組み立てられている。

対策時期基本となる考え方
①設備対策地震発生前の予防保全対策ガス工作物等の各施設の耐震性を向上させることが基本
②緊急対策地震発生後の対応ガスによる二次災害の発生を防止するため、被害の著しい地域についてガス供給を停止すること及び供給を継続する地区の保安確保を図ることが基本
③復旧対策地震発生後の対応地域の復旧状況にあわせて、安全かつ可能な限り速やかにガスの製造・供給を再開することが基本

出題者がまず狙うのは、この時期の対応関係である。「地震対策は基本的に設備対策・緊急対策・復旧対策で構成される」「設備対策は予防保全(地震前)、緊急対策と復旧対策は地震発生後の対応」——この2文がそのまま正誤問題になる。事前の対策は設備対策だけだと押さえれば、入れ替えに気づける。

次に狙われるのが、対策の重みづけだ。耐震性さえ上げれば済むと考えたくなるが、そうはいかない。平常時から、設備対策のみでなく緊急対策と復旧対策・支援対策をバランスよく講じていくことが重要である。どれだけ強い管でも、止め方と戻し方の備えがなければ被害は広がる。

覚える
これらの対策の基本的な考え方は地震のみでなく、津波に対しても有効

🟦 甲種プラスα

甲種では「地震対策の概要(3つの対策)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。

🖼 図解
地震対策の3本柱(予防・緊急・復旧)地震対策の3本柱(予防・緊急・復旧)

⚡ 焦点ポイント

「3つの対策の定義と時期(前・後・後)」「設備対策=予防保全」「緊急対策=二次災害防止」「復旧対策=早期再開」の対応関係を確実に覚える。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「設備対策だけでなく緊急対策・復旧対策をバランスよく講じる必要がある」が正しい。設備対策だけに偏ってはいけない。
  • 「前」「後」「後」のいずれかが他の用語と入れ替えられる(類似名称の混同)

2-1. 設備対策(新設導管の耐震設計)

💡 図の見方:中低圧導管の耐震性は、管そのものの強さではなく「地盤がどれだけ動くか」と「配管系がどれだけ吸収できるか」の大小で評価する、という図。吸収能力が設計地盤変位を上回れば耐震性ありという不等号の向きをまず確かめたい。設計地盤変位は標準設計地盤変位量そのままではなく、2つの補正係数を掛けて初めて求まる点が最頻出のひっかけ。

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

低圧:地盤変位吸収能力≥設計地盤変位で評価 / 高圧応答変位法でひずみ比較(Lv1直管1%or35t/D・接合部1%、Lv2直管3%)/ 液状化:砂層軟弱地盤が液体状になる現象

📖 解説(乙種ベース)

3層の一つめ、設備対策から見ていく。地震発生時、ガス設備の損傷によりガスが漏えいしないように、ガス工作物等の各施設の耐震性を向上させることが基本である。すべてを同じ強さにするのではなく、施設の重要性を考慮し耐震設計を行う。

では、どの地震に耐えればよいのか。想定する地震動は2段階に分けられている。

覚える
レベル1地震動=ガス導管の供用期間中に1〜2回発生する確率を有する一般的な地震動/レベル2地震動=供用期間中に発生する確率は低いが、非常に強い地震動(内陸型地震と海溝型地震を想定する)

揺れとは別に、地面そのものが性質を変える現象もある。液状化だ。砂層の軟弱地盤によく見られる現象で、通常は支持力のある地盤が地震によって液体状になる。支えていたはずの地面が支えなくなるのだから、管にとっては揺れとは別種の脅威になる。

ここで中低圧導管の耐震性評価に入る。管の強さで決まりそうに思えるが、実際に比べるのは「地盤がどれだけ動くか」と「配管系がどれだけ吸収できるか」である。配管系の地盤変位吸収能力が、管種・埋設条件を考慮して定めた設計地盤変位を上回る場合に耐震性を有すると評価される。

公式
地盤変位吸収能力 > 設計地盤変位 → 耐震性を有する
地盤変位吸収能力: 地盤変位が生じたときに配管系が吸収できる地盤変位量 設計地盤変位 = 標準設計地盤変位量 × 補正係数(管種と埋設条件の組合せ) × 補正係数(地域別) (中低圧導管の評価)

設計地盤変位を「標準設計地盤変位量そのまま」と読ませるのが定番の手口である。2つの補正係数を掛けて初めて設計地盤変位になる、という手順を落とさないこと。

一方、高圧導管の耐震性評価(甲種)は物差しが変わる。想定地震ごとに、導管に発生するひずみと許容ひずみを比較して耐震性を判断する。液状化しない場合(Lv1・Lv2地震動)は、応答変位法に基づき地盤ひずみを求め、導管に発生するひずみを算出し許容ひずみと比較する。

比べる相手の許容ひずみは、地震動レベルと部位の組合せで決まる。高圧の直管部はレベル1で1%35t/D の小さい方、レベル2で3%。接合部・異形管部はレベル1で1%である。

🖼 図解
応答変位法の考え方(地盤の変位を地盤バネで外力として与える)応答変位法の考え方(地盤の変位を地盤バネで外力として与える)
🖼 図解
中低圧導管の耐震性評価:吸収能力と設計地盤変位の大小中低圧導管の耐震性評価:吸収能力と設計地盤変位の大小
部位レベル1レベル2
直管部1.0%又は②35t/D のいずれか小さい方3.0%
直管の接合部・異形管部1.0%

液状化する場合は、比べるものが変わる。ひずみではなく変位で照査するのだ。液状化により地盤及び管体に生じる変位を算出し、導管の終局限界状態に対応する変位(限界変位)と比較して評価する。「液状化でも応答変位法でひずみを比べる」とすり替えるのが、この節でいちばん多い仕掛けである。

その応答変位法とは何か。川面に浮かべた笹舟は、自分では動かず水面の起伏どおりに上下する。地下構造物も同じで、地盤の変位に追従した動きをする。だから周辺地盤の変位を地盤バネを介して外力として与えることで静的に計算する——これが地下構造物の耐震設計に一般的に用いられる耐震算法である。

キーワード
終局限界状態 — その限界を超えると導管が気密機能を失い、設計の目的とする耐震性能を確保できなくなる状態

🟦 甲種プラスα

高圧導管の耐震性評価(甲種

⚡ 焦点ポイント

「Lv1直管→1%または35t/D の小さい方」「Lv2直管→3%」「接合部・異形管部→Lv1で1%」「中低圧→地盤変位吸収能力>設計地盤変位」「応答変位法→地盤バネを介して静的計算」が頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「設計地盤変位は標準設計地盤変位量に管種・埋設条件の補正係数と地域別補正係数を乗じて求める」が正しい。設計地盤変位≠標準設計地盤変位量そのまま。

2-2. 設備対策(既設導管の耐震性向上対策)

💡 図の見方:地下構造物は自分で揺れるのではなく周辺地盤の変位に追従して動く、という応答変位法の前提を表した図。地盤の変位を地盤バネを介して外力として導管に与え、静的に計算するという手順を、ばねと矢印の向きで確かめる。

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

中圧:非裏波溶接接合鋼管→活断層・液状化の特殊地形地区で被害 / 低圧ねじ接合鋼管→被害多発 / 対策:入替・鋼製修理バンド・反転シール・PEインサーション

📖 解説(乙種ベース)

新設の管は指針どおりに設計できる。問題は、指針ができる前に埋めてしまった管だ。高圧導管は阪神・淡路大震災や東日本大震災においても被害がなく、Lv2地震動に対して妥当な耐震性が確保されている。しかし現行耐震設計指針等の策定以前に設置された既設の中・低圧導管には被害が発生することも考えられるため、必要に応じて対策を講じる必要がある。

まず中圧導管。名指しされる問題管は、昭和37年以前に敷設された非裏波溶接接合鋼管である。何が「非裏波」なのか。厚紙をホチキスで留めるとき、針が裏まで回って折れ曲がっているかどうかで外れやすさが変わる——溶接の溶け込みも同じ話だ。

キーワード
裏波溶接/非裏波溶接 — 裏波溶接は溶融した金属が溶接した面の裏側まで溶け込んでいる現行の溶接法(昭和38年以降)。非裏波溶接は裏側まで溶け込んでいない旧工法で、強度が劣る

ただし、非裏波溶接というだけで壊れたわけではない。被害が発生したのは、活断層・液状化地区の内、特殊な地形・地盤条件(微地形境界・傾斜地・河川・水路・池近傍)の複数の要因が重なった箇所である。弱い継手に、地盤側の悪条件が重ねて効いたときに初めて表面化した。

用語も押さえておきたい。活断層とは、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層で、内陸型地震の引き金となる。特殊地形地区とは、微地形境界・傾斜地・河川・水路・池近傍地区を指す。

次に低圧導管。中低圧ガス導管耐震設計指針(1982年)策定以前に設置されたねじ接合部を有する鋼管低圧導管の被害は多く発生した。ねじで締めた継手は、地盤が動くと緩みやすいからだ。年代は圧力帯ごとに違うので、対にして覚える。

覚える
中圧=昭和37年以前の非裏波溶接接合鋼管(裏波溶接は昭和38年以降)/低圧1982年の指針策定以前のねじ接合鋼管

対策は圧力帯で分かれる。中圧はハード面とソフト面を組み合わせ、低圧は入替か更生修理で対応する。

対象対策
中圧(ハード面)入替(PE管インサーション工法を含む)/鋼製修理バンド等による溶接部の補強/反転シール工法等による更生修理
中圧(ソフト面)対象導管の両側にバルブを設置して区間遮断する
低圧耐震性の高いポリエチレン管等への入替、または地震時に漏えい予防効果がある更生修理工法の施工

最後に建物の中。ガス配管は建物の躯体等に支持材を使用して固定することから、ガス配管の支持固定が重要な要素となる。管そのものの強さより留め方が効くという点で、地中の管とは事情が違う。

🖼 図解
裏波溶接と非裏波溶接の違い(裏側までの溶け込み)裏波溶接と非裏波溶接の違い(裏側までの溶け込み)

⚡ 焦点ポイント

「非裏波溶接接合鋼管→特殊地形地区(活断層・液状化)での被害・昭和37年以前」「ねじ接合鋼管低圧で被害多発・1982年以前」「対策:入替・鋼製修理バンド・反転シール・PEインサーション」が頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「非裏波溶接」は「非裏波(うら)溶接」で溶け込みが裏側まで届いていない旧来の溶接法。現行の裏波溶接と混同しないこと。

3-1. 緊急対策(供給停止ブロック・地震計・供給停止設備)

重要度: ★ 乙A / 甲B

🎯 一言で

統合ブロック200km²・単位ブロック50km² / 地震計→SI値または最大速度値・統合ブロックに1台以上 / 需要家の遮断:マイコンメーター・メーターガス栓

📖 解説(乙種ベース)

地震が起きた。では、供給区域全体を一斉に止めるのが正解か——違う。ガスによる二次災害の発生を防止するために、被害の著しい地域についてガス供給を停止すること及び供給を継続する地区の保安確保を図ることが、緊急対策の基本である。止める範囲を絞ること自体が保安の一部なのだ。

絞って止めるには、あらかじめ区切っておくしかない。地震時に被害の著しい地区を選択して供給停止することにより二次災害を防止し、さらには供給停止地区の極小化を図るため、導管網を事前にバルブ等により適切な規模の統合ブロック単位ブロックに分割しておく必要がある(第1次・第2次緊急停止判断により供給停止)。

2種類あるのは、マンションの各戸のブレーカーと主幹ブレーカーの関係に似ている。小さく落とせる単位と、まとめて落とせる単位を両方持っておく——この入れ子が供給停止ブロックの考え方だ。

覚える
単位ブロック=供給停止できる最小のブロック(目安:50km²程度)/統合ブロック=いくつかの単位ブロックを一括して供給停止するために統合した大きなブロック(目安:200km²程度)

ところで、境界バルブを閉めれば止まるのだろうか。それだけでは足りない。単位ブロックごとに供給停止をするには、境界バルブの閉止に加えて、ブロック内へのガス供給源を停止する必要がある。方法は、対象ブロック内の整圧器の遮断・中圧ガス導管に設置してあるバルブの閉止・製造所やガスホルダーにおけるガスの送出遮断である。

止める判断の材料になるのが揺れの計測値だ。被害と相関が高いSI値(Spectrum Intensity)または最大速度値の計測が可能な地震計を、統合ブロックに1台以上設置する必要がある。※一層的確な供給停止判断のため、ブロック内に複数設置することも有効である。

この「1台以上」を「複数設置しなければならない」に書き換えるのが定番の手口だ。複数は望ましいが必須要件ではない——義務と推奨の線引きを崩さないこと。

キーワード
SI値 — 周期0.1〜2.5秒の揺れの強さの平均値。単位はカイン(cm/s)。最大速度値は速度振幅の最大値で、単位は同じくカイン(cm/s)

事業者側だけでなく、需要家の側にも遮断の仕組みがある。マイコンメーター・メーターガス栓・引込管ガス遮断装置・緊急ガス遮断装置等がそれにあたる。

🖼 図解
供給停止ブロックの入れ子構造(単位ブロック⊂統合ブロック)供給停止ブロックの入れ子構造(単位ブロック⊂統合ブロック)

⚡ 焦点ポイント

単位ブロック50km²・統合ブロック200km²」「地震計→SI値または最大速度値・統合ブロックに1台以上設置」「供給停止方法→整圧器遮断・バルブ閉止・送出遮断」「需要家遮断→マイコンメーター等」が頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「地震計は統合ブロックに複数設置する」ではなく「1台以上(複数も有効)」が正しい。必須要件は1台以上。

3-2. 緊急対策(第1次・第2次緊急停止判断)

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

第1次:SI値が判断基準値以上→直ちに停止 / 第2次:判断基準値未満ブロックで二次災害の予想→速やかに停止 / G-React:被害情報共有システム

📖 解説(乙種ベース)

ブロックに分けて地震計を置いた。では、誰がどの情報で「止める」と決めるのか。まず体制から。地震発生時に二次災害の発生を防止するために動員を行い、災害対策本部を設置する。動員基準・出動方法・場所・出動時の情報収集(出動ルート・点検項目)を定め、供給停止権限者を常駐させる(又は確実な連絡手段を整備する)。

地震直後に集める情報は3項目である。①地震動のSI値または最大速度値、②ガス製造・供給設備の被害状況及びガス送出変動状況、③ガス導管網の被害に関わる情報。

判断は2段構えになっている。火災報知器を思い浮かべてほしい。煙を感知して自動で鳴る段階と、人が現場を見て回って被害を確かめる段階は別物だ。緊急停止判断も同じ構造で、機械が読める値で即断する第1次と、集まってきた被害情報で追加判断する第2次に分かれる。

第1次緊急停止判断第2次緊急停止判断
対象ブロックあらかじめ定めた地震計のSI値が供給停止判断基準値以上を記録したブロックSI値が供給停止判断基準値未満程度を記録したブロックや、特例措置により第1次→第2次へ移行したブロック
判断材料SI値が供給停止判断基準値以上 ②製造所又は供給所ガスホルダーの送出量の大変動、又は主要整圧器等の圧力の大変動により供給継続が困難な場合緊急巡回点検やガス漏えい通報の受付状況等から経時的に得られる被害状況。①道路及び建物の被害状況や主な導管の被害状況から、ガス工作物の被害が甚大であることが容易に推測できる場合 ②ガス漏えい通報等により発見されたガス工作物の被害状況が緊急時対応能力を超えるおそれのある場合
停止のタイミング直ちにガスの供給を停止速やかにガス供給を停止

この表で最も書き換えられるのが最下段だ。第1次は直ちに、第2次は速やかに——語感が近いだけに、入れ替えても違和感が出にくい。計測値で自動的に決まる方が速い、と紐づけて覚えるとよい。

覚える
供給停止判断基準値は60・70・80・90カインの4段階。この判断基準は阪神・淡路大震災・東日本大震災のデータのみに基づく暫定値の扱い

止めた地区だけが仕事ではない。供給継続地区の需要家からのガス漏えい通報に対しては、供給停止地区に優先して迅速かつ適切に対応し、ガスによる二次災害の防止に必要な措置を講じる。止まっていない場所こそ、ガスが出ている場所だからだ。

キーワード
ガス防災支援システム(G-React) — 大規模地震発生時に早期復旧を図るために、国・ガス事業者が被害情報・復旧活動に必要な情報の共有を図るシステム
🖼 図解
緊急停止判断の2段階フロー緊急停止判断の2段階フロー

⚡ 焦点ポイント

「第1次→SI値が基準値以上で直ちに停止」「第2次→基準値未満ブロックで二次災害予想されれば速やかに停止」「供給継続地区のガス漏えい通報は供給停止地区に優先して対応」「G-React→国とガス事業者の情報共有システム」が頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「第2次緊急停止は供給停止判断基準値未満程度を記録したブロックが対象」。基準値以上のブロックは第1次で既に停止済み。「速やかに」であって「直ちに」ではない。

4. 復旧対策(復旧計画・復旧ブロック・臨時供給)

重要度: ★ 乙A / 甲A

🎯 一言で

中圧優先→低圧(復旧ブロック単位:閉栓→修理→エアパージ→開栓) / 臨時供給:PA式LPG)・CNG式・LNG式 / 広報活動の重要性

📖 解説(乙種ベース)

止めたガスは、いつか戻さなければならない。地震により供給停止した地域を早期に復旧するには、被災地域や復旧期間・復旧体制の規模を直ちに把握し、発災後に迅速に復旧基本計画を策定する。自社の手が足りないとき、つまり復旧要員が不足する場合は、他のガス事業者からの救援要請を検討する。

復旧基本計画で策定すべき事項は4つ。①復旧期間・復旧要員数・応援要員数、②復旧組織と各隊の担当地域、③必要資機材・復旧基地、④移動式ガス発生設備による臨時供給先の選定である。人・場所・物・つなぎの手段が揃って初めて計画になる。

作業の順番には理由がある。大雪の翌朝、除雪はまず大通りから入る。幹を通さなければ枝には届かないからだ。復旧も同じで、①中圧の復旧を優先する——中圧低圧への送出源となるラインを優先するのである。②その後、低圧導管網を復旧ブロック化し、その単位ごとに作業を進める。

覚える
低圧の復旧は復旧ブロックの単位ごとに 閉栓 → 被害修理 → エアパージ → 開栓 の順(順序の入れ替えが最頻出)

この「復旧ブロック」は、緊急対策で出てきたブロックとは別物である点に注意したい。止めるための単位と、直すための単位では粒度が違う。

キーワード
復旧ブロック — 供給停止した地域内のガス復旧作業を効率的に実施するため、供給停止ブロック(統合・単位ブロック)をさらに分割して得られるブロック

復旧を待てない需要家もいる。病院や福祉施設等の需要施設に対して、可能な限り速やかに移動式ガス発生設備による臨時供給・LPG等の代替熱源の提供に努める。方式は3つあり、何を持ち込むかで区別する。

方式仕組み
①空気吸入式(PA式LPGボンベからの発生ガス圧力を利用し、エジェクターにより大気中の空気を吸入し、LPGと混合して都市ガス天然ガス)と同グループのプロパンエアー(PA)ガス(低圧)を発生させる
圧縮ガス式CNG式)CNGボンベ・カードルに20MPa程度に圧縮充填された熱量調整・付臭済みの天然ガスを供給する
液化ガス式LNG式)LNG低温用容器に充填された熱量調整・付臭済みの天然ガスを供給する

PA式だけが現地でガスを作る方式で、他の2つは調整済みのガスを運んでくる方式である。ここを入れ替えた選択肢が繰り返し出ている。

最後に広報活動。地震時の広報活動は二次災害の防止・需要家の不安解消・復旧作業の円滑な運営のために行われる。テレビ・ラジオ放送・ホームページ・新聞・広報車等を活用する。復旧の進み具合が伝わらなければ、需要家が自己判断で危険な行動を取りかねないからだ。

🖼 図解
復旧作業の手順(中圧優先→低圧はブロック単位で4ステップ)復旧作業の手順(中圧優先→低圧はブロック単位で4ステップ)

⚡ 焦点ポイント

低圧復旧→閉栓→被害修理→エアパージ→開栓の順」「PA式LPGと空気を混合してプロパンエアー発生」「CNG式→CNGボンベ・カードルに圧縮充填」「中圧優先(送出源になるため)」が頻出。

📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)

  • 【最頻出】 「移動式ガス発生設備はLPGやCNGを容器に充てんして使用する設備」が正しい。CNG式は「圧縮ガス用容器(CNGボンベ・カードル)に充てんした天然ガス」を供給するもの。

🔢 供給の重要数値・設備の整理

地震対策の3層構造(論述定型):

1. 設備対策(平常時): 耐震設計・既設管の更新・耐震材料

2. 緊急対策(発生時): 供給停止ブロックSI値による判断・緊急遮断

3. 復旧対策(事後): 復旧計画・段階復旧・臨時供給

地震動レベル:

– レベル1: 設計供用期間中に1〜2回程度発生 → 機能維持

– レベル2: 発生確率は低いが大規模 → 損傷限界

緊急停止判断の基準:

– 第1次緊急停止: SI値60・70・80・90カイン(4段階)のいずれか以上(早期警報)

– 第2次緊急停止: 各ブロックでの被害確認後

– ガス遮断: 自動(機械式)+ 遠隔(中央制御)

供給停止ブロックの考え方:

都市ガス供給を地区単位で分割

– 1ブロックを切り離しても他に影響しない設計

– ブロック間の連絡管は遠隔遮断

供給科目では、設備名・型式・運転条件の数値・配管材料の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・設備名・工法を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。

🗒️ 3分で復習(章末まとめ)

🎯 全節 一言まとめ

  • 節1 地震対策の概要(3つの対策): 地震対策3分類:設備対策(事前=予防保全)・緊急対策(発生後=二次災害防止)・復旧対策(発生後=早期復旧)。バランスよく講じる。
  • 節2-1 設備対策(新設導管の耐震設計): 中低圧:地盤変位吸収能力≥設計地盤変位で評価 / 高圧応答変位法でひずみ比較(Lv1直管1%or35t/D・接合部1%、Lv2直管3%)/ 液状化:砂層軟弱地盤が液体状になる現象
  • 節2-2 設備対策(既設導管の耐震性向上対策): 中圧:非裏波溶接接合鋼管→活断層・液状化の特殊地形地区で被害 / 低圧ねじ接合鋼管→被害多発 / 対策:入替・鋼製修理バンド・反転シール・PEインサーション
  • 節3-1 緊急対策(供給停止ブロック・地震計・供給停止設備): 統合ブロック200km²・単位ブロック50km² / 地震計→SI値または最大速度値・統合ブロックに1台以上 / 需要家の遮断:マイコンメーター・メーターガス栓
  • 節3-2 緊急対策(第1次・第2次緊急停止判断): 第1次:SI値が判断基準値以上→直ちに停止 / 第2次:判断基準値未満ブロックで二次災害の予想→速やかに停止 / G-React:被害情報共有システム
  • 節4 復旧対策(復旧計画・復旧ブロック・臨時供給): 中圧優先→低圧(復旧ブロック単位:閉栓→修理→エアパージ→開栓) / 臨時供給:PA式LPG)・CNG式・LNG式 / 広報活動の重要性

⚡ 全節 焦点ポイント

  • 節1: 「3つの対策の定義と時期(前・後・後)」「設備対策=予防保全」「緊急対策=二次災害防止」「復旧対策=早期再開」の対応関係を確実に覚える。
  • 節2-1: 「Lv1直管→1%または35t/D の小さい方」「Lv2直管→3%」「接合部・異形管部→Lv1で1%」「中低圧→地盤変位吸収能力>設計地盤変位」「応答変位法→地盤バネを介して静的計算」が頻出。
  • 節2-2: 「非裏波溶接接合鋼管→特殊地形地区(活断層・液状化)での被害・昭和37年以前」「ねじ接合鋼管低圧で被害多発・1982年以前」「対策:入替・鋼製修理バンド・反転シール・PEインサーション」が頻出。
  • 節3-1: 「単位ブロック50km²・統合ブロック200km²」「地震計→SI値または最大速度値・統合ブロックに1台以上設置」「供給停止方法→整圧器遮断・バルブ閉止・送出遮断」「需要家遮断→マイコンメーター等」が頻出。
  • 節3-2: 「第1次→SI値が基準値以上で直ちに停止」「第2次→基準値未満ブロックで二次災害予想されれば速やかに停止」「供給継続地区のガス漏えい通報は供給停止地区に優先して対応」「G-React→国とガス事業者の情報共有システム」が頻出。
  • 節4: 「低圧復旧→閉栓→被害修理→エアパージ→開栓の順」「PA式LPGと空気を混合してプロパンエアー発生」「CNG式→CNGボンベ・カードルに圧縮充填」「中圧優先(送出源になるため)」が頻出。

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