
ガスをどう供給するかの計画段階を扱う章です。供給方式の分類(低圧・中圧・高圧・中間圧)と選定、需要予測の手法、供給計画と導管計画、ガスホルダーの容量計算、低圧・高中圧導管の口径決定と圧力解析までを学びます。
乙種・甲種兼用 / 全8節 / 学習目安: 30〜60分
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📍 はじめに
ガス事業のスタートは「どこにどれだけのガスをどう届けるか」の計画です。需要を予測し、圧力区分を決め、導管の口径を計算する。この章は、配管設計の前段にあたる供給計画の枠組みを整理します。
📚 テキスト解説
各節は次の構成で進みます。
– 🎯 一言で
– 📖 解説(乙種ベース)
– 🟦 甲種プラスα(必要な節のみ)
– ⚡ 焦点ポイント
– 📝 過去問のひっかけ例
📑 この章の目次(全8節)
1-1. 供給方式の分類(低圧・中圧・高圧・中間圧)
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
低圧・中圧(A/B)・高圧・中間圧の4方式と適用条件の比較
📖 解説(乙種ベース)
製造所でつくったガスを、そのままの圧力で家庭に届けることはできない。かといって、はじめから家庭用の低い圧力で送っては遠くまで届かない。そこで供給方式は圧力で4方式に分けられる。低圧・中圧(A/B)・高圧、そして中間圧である。
構図は送電網とよく似ている。発電所から高い電圧で送り出し、電柱の変圧器で家庭用まで落とす——ガスも同じで、遠くへ大量に運ぶほど高い圧力で送り、需要地の手前で整圧器を使って落としていく。運ぶ距離と量が、方式を決める物差しになる。
まず低圧供給方式。製造所から需要家の使用圧力で直接供給する方式で、通常は低圧ガスホルダー圧力を利用し整圧器を通じて送出する。ここで数値が2つ出てくるので注意したい。ガス事業法では低圧とは0.1MPa未満のガス圧力をいうが、一般に低圧供給の最高圧力は供給約款に定める2.5kPa程度以下である。法令上の区分と実際の供給圧力は別物だ、と押さえておく。
供給量が増え、距離が延びると中圧供給方式に移る。製造所から中圧で送出し、供給区域内に配置した地区整圧器によって低圧に整圧して需要家に供給する方式である。中圧B(0.1MPa以上、0.3MPa未満)からは低圧に整圧して供給し、中圧A(0.3MPa以上、1MPa未満)からは中圧B・低圧に整圧して供給する。
ただし、圧力を落とさずに使う相手もいる。ビル冷暖房機・工業用ボイラー等のガス消費機器所要圧力に対応して中圧で直接供給するのが中圧ストレート供給だ。同じ考え方は高圧にもあり、発電所等のより高い圧力を必要とするガス消費機器には、高圧ストレート供給方式で高圧のまま届ける。
高圧供給方式は、最も長い階段を下りる方式である。製造所から高圧ガスを送出し、高圧整圧器→中圧A整圧器→中圧B→地区整圧器→低圧と段階的に減圧して需要家へ供給する。
4つ目の中間圧供給方式は位置づけが独特だ。低圧供給方式よりも若干高い圧力(10〜20kPa程度)で供給する方式で、低圧供給と中圧供給の中間にあたる。低圧導管のガス輸送効率を増大するために採用される場合がある。
| 方式 | 圧力 | 適している場合 |
|---|---|---|
| 低圧供給 | ガス事業法上は0.1MPa未満/供給約款上は2.5kPa程度以下 | 供給量が少なく、供給区域が狭い場合 |
| 中間圧供給 | 10〜20kPa程度 | 低圧導管のガス輸送効率を増大したい場合 |
| 中圧供給(B) | 0.1MPa以上、0.3MPa未満 | 供給量が多く、供給先までの距離が長い場合 |
| 中圧供給(A) | 0.3MPa以上、1MPa未満 | 同上(中圧B・低圧へ整圧して供給) |
| 高圧供給 | 高圧→中圧A→中圧B→低圧と段階的に減圧 | 供給区域が広く、大量のガスを遠距離に輸送する場合 |
方式が高圧側になるほど、設備の階段は長くなる。その代償が維持管理の負担だ。低圧供給が最も容易であり、中圧・高圧となるにつれ複雑になる。
🟦 甲種プラスα
甲種では「供給方式の分類(低圧・中圧・高圧・中間圧)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
低圧供給方式
中圧供給方式
高圧供給方式⚡ 焦点ポイント
低圧2.5kPa程度・中間圧10〜20kPa・中圧B 0.1MPa以上0.3MPa未満・中圧A 0.3MPa以上1MPa未満の数値を正確に覚える。「供給量が多く距離が長い→中圧採用」「大量を遠距離→高圧採用」の使い分けも頻出。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 低圧の最高圧力は「ガス事業法では0.1MPa未満」だが、供給約款上の低圧供給では「2.5kPa程度」という別の意味があるので注意。「中間圧供給方式」は中圧供給方式の一種ではなく、低圧と中圧の中間に位置する独立した分類。
1-2. 供給方式の選定(安定性・維持管理難易性・経済性)
💡 図の見方:供給方式は安定性と経済性の2軸で選ぶ、という枠組みを1枚にした図。安定性を高める手段3つ(バックアップ化・ループ連絡・ガスホルダーの適切な設置)はセットで問われる。経済性は建設費だけでも維持管理費だけでもなく合計で見る点、そして「経済性のみで選定する」という記述は誤りである点を確かめたい。
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
安定性と経済性の2観点から供給方式を選定する考え方
📖 解説(乙種ベース)
4つの方式のうち、どれを選ぶか。決め手は2つの観点、すなわち安定性と経済性である。傘を何本持って出るかに似ていて、備えを増やすほど安心だが荷物は重くなる。どこで折り合いをつけるかが、選定の中身になる。
第一の観点では、供給の安定を第一に考慮するが、維持管理の難易性も検討する。安定性を高める具体策は3つだ。供給設備のバックアップ化、導管をループ状に連絡すること、そしてガスホルダーを適切に設置することが有効である。いずれも「一か所が止まっても供給が途切れない」ための備えである。
ただし備えを増やすほど設備は複雑になる。維持管理の難易性は、低圧供給が最も簡単で、中圧・高圧供給となるにつれ複雑になる。安定性と手間は、そのまま裏表の関係にある。
第二の観点が経済性だ。建設費及び経費の比較検討を行い、長期的な供給見通しで供給方式を検討する。判断の基準は明快で、導管・整圧器・ガスホルダー・土地等の建設費と、設備の維持管理費等経費の合計が最小となるものを採用する。建設費だけでも維持費だけでもなく、合計で見るのがポイントになる。
この2軸を判断するために持ち込む材料が、ガス需要量・需要家数・供給区域の広さ・製造設備や供給設備の様式・規模・動力費・将来計画等である。今の需要だけでなく将来計画まで含めるところが、供給計画らしい視点だ。
🟦 甲種プラスα
甲種では「供給方式の選定(安定性・維持管理難易性・経済性)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
供給方式の選定:安定性の3手段と経済性は合計費用で見る⚡ 焦点ポイント
供給方式の選定は「安定性+経済性」の2軸。安定性のための手段として「バックアップ化」「ループ連絡」「ガスホルダー適切配置」を覚える。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「経済性のみで選定する」という記述は誤り。安定性も必ず考慮する。
2-1. 需要予測の3手法(ガス販売量実績・1戸当たりピーク・同時使用率)
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
供給計画の基礎となるガス需要量予測の3種類の推定方法と使用場面
📖 解説(乙種ベース)
供給計画とは、ガス需要の増減・供給区域の拡大等を予測し、常に安定した圧力で需要家に円滑に供給できるよう供給施設の増強または改廃を計画することをいう。やっかいなのは、季節・時刻等により需要が大きく変動することだ。だから設計には冬季最大日ガス需要量・同ピーク時ガス需要量等を把握する必要がある。平均ではなく「最も混む瞬間」を基準に据える、という考え方である。
ではその需要量をどう見積もるのか。推定方法は3種類あり、何を計画するかによって使い分ける。
推定手法①はガス販売量実績からの推定である。高・中圧の基幹路線、ガスホルダー等を計画する場合に使う。過去のガス販売量から地域別に翌年度以降の最大日ガス需要量・最大ピーク時ガス需要量等を推定する方法で、実績という確かな土台があるぶん、大きな設備の計画に向く。
では、まだ実績のない区域はどうするのか。そこで登場するのが推定手法②、1戸当たりピーク時平均消費量からの推定だ。ある区域に新たにガス供給を計画する場合の中低圧導管計画で用いる。計画区域の需要家件数・住宅商業区域等用途区分・燃料事情等類似した他地域のガス消費量を参考にして計画区域の1戸当たりのピーク時平均消費量を推定し、ピーク時平均総消費量=1戸当たりピーク時平均消費量 × 将来需要家件数で総量を算定する。
推定手法③はガス機器消費量から同時使用率を利用しての推定である。中低圧導管を計画する場合で、計画区域の需要家件数・ガス機器の種類と台数が推定できる場合に使う。ここで直感への裏切りが一つ。全戸の機器を単純に足し上げてはいけない。マンションで全世帯が同時に蛇口をひねることはないのと同じで、実際のピークは総和よりずっと小さくなるからだ。
| 推定手法 | 使用場面 |
|---|---|
| ①ガス販売量実績からの推定 | 高・中圧の基幹路線、ガスホルダー等を計画する場合 |
| ②1戸当たりピーク時平均消費量からの推定 | ある区域に新たにガス供給を計画する場合の中低圧導管計画 |
| ③ガス機器消費量から同時使用率を利用しての推定 | 中低圧導管を計画する場合(需要家件数・ガス機器の種類と台数が推定できる場合) |
大口需要家だけは別扱いになる。新規大口需要家は個別に需要家のガス消費機器を調査して把握する。既設需要家のピーク時ガス量は、月間ガス使用量から推定する方法や、時間当たりの使用量を計測できるメーターで実測する方法等がある。
🟦 甲種プラスα
甲種では「需要予測の3手法(ガス販売量実績・1戸当たりピーク・同時使用率)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
需要予測の3手法⚡ 焦点ポイント
「どの手法をどの計画に使うか」の組み合わせを整理して覚える。基幹路線・ガスホルダー→実績、中低圧導管→1戸当たりか同時使用率、大口→個別調査。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「同時使用率」は「ある区域内のピーク時ガス消費量÷区域内全需要家のガス機器消費量の総和」。分子・分母を逆にしないよう注意(常に≦1の値となる)。
2-2. 供給計画(導管計画3種類):基幹路線・導管網拡張・供給改善
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
3種類の導管計画(基幹路線計画・導管網拡張計画・供給改善計画)の目的と手法
📖 解説(乙種ベース)
需要の見通しが立ったら、次は導管をどう手当てするかだ。導管計画は目的別に3種類に分かれる。既設の背骨を太くする基幹路線計画、新しい需要家へ枝を伸ばす導管網拡張計画、そして今ある区域の圧力を立て直す供給改善計画である。
基幹路線計画は、需要増加に伴い既設基幹路線の能力が限界に達した場合に動き出す。製造所の送出管・供給所(ガスホルダー)の出入管等の増設及び大口径導管への入替えを計画するものだ。検討内容は、製造設備やガスホルダーへの建設計画・既設導管の能力等の総合的な供給計画に基づき、基幹路線建設の必要性・経路・仕様等を検討し、最も経済的な方法を選択する。
導管網拡張(営業拡張)計画は、新設の需要家にガスを供給するための導管計画で、計画地域の需要量の推定に基づき口径を決定する。ただし、ここに一つ加減がある。将来における需要量の増加・隣接地域への拡張等が考えられる場合には、推定需要量より余力を持った口径又は最高使用圧力の高い導管を計画する。子ども服をワンサイズ上で買うのと同じ発想で、後から入れ替える手間と費用を先回りして避けている。
供給改善計画は、中低圧導管の圧力保持・圧力改善のために行う。既設導管の大口径導管への入替、導管連絡によるループ化、整圧器の設置等を検討し、最も効果的な方法を選択する。太くする・つなぐ・圧力源を足す、の3方向だと整理すると忘れにくい。
導管と並んで立てられるのがガスホルダー計画である。最大日ガス需要量の推定に基づき、製造能力・導管網等を加味し、ガスホルダーの容量・圧力・設置場所等を計画することである。
🟦 甲種プラスα
甲種では「供給計画(導管計画3種類):基幹路線・導管網拡張・供給改善」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
導管計画3種類の使い分け(基幹路線・導管網拡張・供給改善)⚡ 焦点ポイント
「供給改善計画の3つの手段」→大口径導管への入替・ループ化・整圧器の設置、を必ずセットで覚える。安定供給確保のための施策(バックアップ化・ループ連絡・ガスホルダー適切配置)とも関連する。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「拡張計画では将来の需要増を見越して推定需要量より余力ある口径を計画することがある」が正文。「推定需要量ちょうどの口径で設計する」は誤りになりやすい。
2-3. ガスホルダーの機能と適正容量の計算(S×a=t/24×M+ΔH)
💡 図の見方:同じ導管網の絵を3枚並べ、計画の種類ごとに「どこに手を入れるか」だけを変えた図。背骨を太くする(基幹路線)・枝を伸ばす(網拡張)・つないで圧力を立て直す(供給改善)という3つの目的の違いを、変化した線の位置で見分ける。
重要度: 乙C / 🟦 甲B
🎯 一言で
ガスホルダーの3つの機能と適正容量計算式、公称容量と稼働容量の関係
📖 解説(乙種ベース)
ガスの製造は昼夜ほぼ一定のペースで進むのに、使う側は朝と夕方に山をつくる。この食い違いを埋める装置がガスホルダーである。夜のうちに充電しておき、必要な時間帯に放電するモバイルバッテリーだと考えると分かりやすい。役割は3つの機能に整理される。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| ①時間変動補給 | ガス需要の時間的変動に対して、製造が対応できないガス量を補給し、供給を確保する |
| ②ピーク時の輸送能力補完 | ガスホルダーを需要地近くに設置することにより、ピーク時に製造所からその需要地に至る導管の輸送能力以上に供給能力を高める |
| ③一時的支障への対応 | 停電・導管工事等の製造及び供給設備の一時的支障に対して、供給の安定性を確保する |
②はもう一段先まで効いてくるので、因果を追っておきたい。ピーク時のガス需要をガスホルダーで補えるので、送出量を減少させることができる。これにより送出管口径を小さく設計することが可能となり、供給の安定性も高くなる。需要地の近くに置くだけで上流の管が細くて済む——この連鎖がそのまま出題される。
では容量はどう決めるのか。ガスホルダーは、ガス送出量が製造量を上回る時間帯にはガスを送出し、下回る時間帯にはガスを受け入れる。ガス製造量を昼夜一定とし、昼間・時間当たり送出量が製造能力より多い時間(t時間)について需給バランスを組むと、最大送出量・最大製造能力・ガスホルダー稼働容量との関係は次のようになる。
左辺が「ピーク時間帯に送り出す量」、右辺が「その間の製造分+ホルダーから出す分」。足りない差分をΔHが埋めている、と読めば式の形が腑に落ちる。
最後に容量の呼び方で一つ引っかけがある。ガスホルダーの公称容量(H)は一般に稼働容量(ΔH)よりも20〜30%大きい。カタログ上の容量をそのまま使える量だと思い込むと、正誤問題でも計算でも足をすくわれる。
🟦 甲種プラスα
甲種では「ガスホルダーの機能と適正容量の計算(S×a=t/24×M+ΔH)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
ガスホルダーの役割(需要の波を吸収)⚡ 焦点ポイント
「ガスホルダーを需要地近くに設置するとピーク時の送出量を減らせる→送出管口径を小さく設計できる」という因果関係の流れを整理して覚える。適正容量の式はS×a=t/24×M+ΔHを正確に覚える。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「公称容量≒稼働容量」は誤り。公称容量は稼働容量より20〜30%大きい。
3-1. 低圧導管の口径決定と圧力解析(流量公式・末端所要圧力・高所補正)
重要度: ★ 乙A / 甲A
🎯 一言で
低圧導管流量公式Q=k√(1000HD⁵/SLg)の各変数の関係と計算・高所供給の圧力補正
📖 解説(乙種ベース)
低圧導管の口径は、勘ではなく式で決まる。どれだけのガスを、どれだけの圧力差で、どれだけの距離を流すのか——この3つが決まれば必要な太さが出る。その関係をまとめたのが低圧導管の流量公式である。
この式で覚えるべきは、値そのものより「どの変数がどう効くか」だ。全体が平方根の中に入っているため、変化はいつも緩やかに効いてくる。ただし口径Dだけは5乗で入っているので、ここだけ効き方が桁違いになる。ストローを少し太くしただけで一気に飲みやすくなる、あの感覚に近い。
| 比例・反比例の関係 | 具体例 |
|---|---|
| ①ガス流量Qは、起点圧力P₁と末端圧力P₂の差H(kPa)の平方根に比例する | 圧力差が2倍になると流量は√2倍になる |
| ②起点圧力と末端圧力が同じだけ上昇(下降)した場合、圧力差Hが変わらなければ流量は変化しない | — |
| ③ガス流量Qは、導管口径Dの5乗の平方根に比例する | 口径が2倍になると流量は√(2⁵)=√32≒5.66倍になる |
| ④ガス流量Qは、導管延長Lの平方根に反比例する | 延長が4倍になると流量は1/2倍になる |
| ⑤ガス流量Qは、ガス比重Sの平方根に反比例する | — |
特に注意したいのが②である。圧力そのものではなく差だけが効くので、起点と末端を一緒に持ち上げても流量は動かない。これは低圧だからこその性質で、次節の高・中圧ではこの前提が崩れる。出題者はこの2つを入れ替えてくる。
低圧導管の末端所要圧力
口径を決めるには、末端でどれだけの圧力が要るかを先に決めなければならない。低圧本支管の最低必要圧力は、供給契約で定めるガス栓出口の最低圧力に、供給管・内管及びガスメーター通過の際の圧力降下分を加えた値を用いる。ゴールで必要な圧力に、そこまでの目減り分を上乗せする考え方だ。
目減り分は余裕をもって見ておく。通常、供給管からガス栓までの圧力損失は到達圧力に余裕を持たせる必要がある。
高所供給の圧力補正
ここで一つ、直感に反する現象がある。空気よりも軽い都市ガスを高所へ供給する場合のガス圧力は、平地よりも高くなるのだ。高い場所へ運ぶのだから弱まりそうなものだが、逆になる。大気圧とガス比重との関係から影響を受けるためで、その上乗せ分は次の式で補正する。
式の形にも意味がある。(1 − S)が掛かっているので、空気より軽いガスほど補正は大きくなる。代入計算も出題されるため、空気密度1.3とg=9.8m/s²は手が覚えるまで使い込んでおきたい。
低圧導管の流量公式の変数(Q・H・D・L)⚡ 焦点ポイント
計算問題で「流量が2倍になった場合の圧力差は何倍か?」という逆算が頻出。Q∝√H なので Q²∝H → 流量2倍なら圧力差は4倍。高所補正の公式は代入計算問題も出る。数値(空気密度1.3、g=9.8)を正確に使うこと。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「起点・末端の圧力が同じだけ上昇しても流量は変化しない(低圧)」は正文だが、「高・中圧導管では変化する」ので混同に注意。「導管延長を4倍にすると流量は1/4になる」は誤り→正しくは1/√4=1/2。
3-2. 高・中圧導管の口径決定と圧力解析(流量公式・流量係数の選択)
重要度: ★ 乙C / 🟦 甲A
🎯 一言で
高・中圧導管流量公式Q=k√((P₁²-P₂²)D⁵/SLg²)と低圧との根本的な違い
📖 解説(乙種ベース)
高・中圧導管にも流量公式がある。形は低圧のものによく似ているが、中身は決定的に違う。圧力の入り方が「差」から「絶対圧力の2乗の差」に変わるのだ。ここが本節の急所である。
なぜ2乗の差になるのか。高い圧力ではガスがスポンジのように押し縮められ、同じ管でも詰め込める量が変わるからだ。低圧ではQ∝√H(ゲージ圧の差を使用)だったのに対し、高・中圧ではQ∝√(P₁²-P₂²)(絶対圧力の2乗の差を使用)となる。
この違いが、そのまま最頻出の正誤問題になる。低圧では起点・末端の圧力が同じだけ上昇しても、圧力差Hが変わらなければ流量は変化しない。ところが高・中圧は違う。中圧において起点圧力が0.1MPa上昇したとき末端圧力も0.1MPa上昇した場合、管内の流量は変化する(P₁²-P₂²が変化するため)。さらに、起点・終点の絶対圧力がどちらも2倍になった場合、ガス流量は2倍になる。
もう一つの論点が流量係数kの選び方である。kは一つではなく、何を基準に決めるかで3種類ある。
低圧と高・中圧の流量の違い(圧力差H vs P₁²-P₂²)| 流量係数 | 性格 |
|---|---|
| コックス | 係数52.31(定数) |
| ポリフロー | レイノルズ数Reの関数 |
| オリファント | 口径Dの関数 |
使い分けは管の条件で決まる。中圧Bはレイノルズ数が10⁶以下で、比較的小口径の導管が多いことからいずれを用いても実用上差しつかえない。一方、高圧・中圧Aでレイノルズ数が10⁶を越え、さらに大口径の導管の場合には、ポリフローまたはオリファントの係数を使うことが有効である。定数であるコックスでは、条件の変化を拾いきれないからだ。
末端所要圧力の考え方も低圧とは異なる。高・中圧導管では、この導管から供給する整圧器の設定最大二次圧に、整圧器の作動に必要な圧力降下分を加えた圧力以上とする。下流で待っているのが整圧器だからである。
🟦 甲種プラスα
甲種では「高・中圧導管の口径決定と圧力解析(流量公式・流量係数の選択)」の本文の概念をより深く理解した上で、論述問題への応用が問われます。本文の数値・原理をしっかり押さえてください。
⚡ 焦点ポイント
「中圧では起点圧力が上昇すると管内流量は変化する(低圧では変化しない)」という対比が最頻出の引っ掛け問題。流量係数の選択:中圧Bはどれでもよい、大口径高圧・中圧AはポリフローかオリファントのみOK、を整理する。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「高・中圧導管でも低圧と同様に起点・末端の圧力が同じだけ上昇しても流量は変わらない」→誤り。高・中圧では絶対圧力の2乗の差(P₁²-P₂²)が変化するため流量も変化する。
3-3. 導管網解析(静的解析・動的解析・負荷量の把握)
重要度: 乙C / 甲C
🎯 一言で
導管網解析の目的・作業手順・静的(定常)解析と動的(非定常)解析の使い分け
📖 解説(乙種ベース)
1本の管なら公式で足りるが、実際の導管網は網の目のように連絡している。どこをどれだけ流れているかは、計算してみないと分からない。導管網解析とは、導管の口径や需要量、整圧器の設定圧力をもとに計算し、導管内のガス圧力・ガス流量を把握する方法である。
作業は5段階で進む。①導管網解析の対象(解析範囲・解析対象時間帯等)及び作業方法を決める、②ネット図の作成、③負荷量の配分(ネット図上のノード=導管網中の分岐点や消費点となるものに配分する)、④計算、⑤計算結果の確認と実績対比。なお②と③は並行して行われる。
計算のしかたは2種類あり、違いは「時間を止めるかどうか」にある。写真と動画の関係に近い。
静的(定常)解析と動的(非定常)解析の対比| 種類 | 考え方 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 静的(定常)解析 | 導管内への流入・流出ガス量が時間的に変化しないと仮定することで、導管網の流量・圧力を定常状態と見なし、簡易に計算をすることができる。手法はハーディー・クロス法等 | 導管網の解析に広く用いられている |
| 動的(非定常)解析 | 刻々変化する導管網の状態(圧力・流量・温度)を時間とともに解析する手法。連続の式・運動方程式・エネルギー保存式を連立させて解き、圧力・流量等の時間変化を求める | 実態をよくシミュレーションしているということで、主に高圧導管の解析に使用されている |
実際の導管網では需要量が時々刻々と変化するのだから、動的解析の方が正しそうに見える。それでも広く用いられているのは静的解析だ——簡易に計算できるという実務上の利点が効くからである。「常に動的解析を行う」とする選択肢は、この一点で切れる。
最後は、解析に入れる負荷量の把握である。既設需要家については3通りある。需要家の月間のガス使用量からピーク時ガス量を推定する、需要家に1時間当たりの使用量を計測できるメーターを取り付けピーク時ガス量を実測する、各需要家で使われているガス器具を調査しピーク時ガス量を推定する、である。
新規需要家は相手によって手が変わる。一般需要家は、類似地域の使用実績から推定する方法と、一戸当たりの時ガス量と同時使用率から推定する方法。大口需要家は個別に需要家の消費機器を調査し把握する。需要予測の節で見た道具立てが、ここでも使われている。
⚡ 焦点ポイント
「導管網解析で広く用いられているのは静的(定常)解析=ハーディー・クロス法」は頻出。「動的解析は主に高圧導管の解析に使用」も覚えること。
📝 誤答パターン(過去問頻出+一般則)
- 【最頻出】 「導管網解析は常に動的(非定常)解析を行う」→誤り。実態に近いが計算が複雑なため、通常は静的(定常)解析=ハーディー・クロス法等が広く用いられている。
🔢 供給の重要数値・設備の整理
供給圧力の区分(法令):
– 高圧: 1.0 MPa 以上
– 中圧: 0.1〜1.0 MPa
– 低圧: 0.1 MPa 未満
– 中間圧: 10〜20kPa程度(低圧より少し高い圧力で輸送効率を上げる方式)
ガスホルダーの容量計算式: S × a = t/24 × M + ΔH
– S: 最大送出量
– a: 送出率(昼間送出率)
– t: 送出量が製造能力を上回る時間
– M: 最大製造能力
– ΔH: ガスホルダー稼働容量
圧力解析の主要式:
– 低圧導管: ポールの係数(0.707)・米花の係数
– 中高圧導管: コックス(52.31)・ポリフロー・オリファントの係数
供給科目では、設備名・型式・運転条件の数値・配管材料の組み合わせで誤答が作られます。本章で出てきた数値・設備名・工法を一覧で整理しておくと、選択肢の引っかけに気付きやすくなります。
🧮 計算例題(過去問を解き切る)
この章の内容が本試験でどう問われるか、実際の過去問で「立式→計算→答え」まで通しで確認しましょう。まず自分で解いてから「解き方をみる」を開くのがおすすめです。
A点からB点に低圧のガス150m³/hを供給する導管AB(口径15cm、延長600m)がある。このとき、A点の圧力1.7kPa、B点の圧力1.5kPaであった。今、B点の圧力1.5kPaを維持したままガスを300m³/hに増量して供給するとき、必要となるA点の圧力(kPa)として最も近い値はどれか。なお、AB間の高低差は考慮しないものとする。
(1) 1.9 (2) 2.0 (3) 2.1 (4) 2.2 (5) 2.3 [kPa]
▶ 解き方をみる(まず自分で立式してから!)
- 低圧の流量公式 Q=K√(1000HD⁵/(SLg)) で、同じ管・同じガスなら Q∝√H(流量は圧力損失の平方根に比例)
- 元の圧力損失: H₁=1.7−1.5=0.2kPa(流量150m³/h)
- 流量2倍(300m³/h)なら、2=√(H₂/0.2) → 両辺を2乗して 4=H₂/0.2
- H₂=0.8kPa
- A点圧力=B点圧力+損失=1.5+0.8=2.3kPa
✅ 答え: (5) 2.3kPa
⚠ よくあるミス: 「流量2倍→損失も2倍」と比例で計算してしまう(損失は流量の2乗に比例!)/2乗を忘れる
口径10cm、延長200mの低圧導管において、起点圧力と末端圧力との差が0.4kPaのときのガス流量は120m³/hであった。口径20cm、延長400mの低圧導管において、起点圧力と末端圧力との差が0.1kPaのときのガス流量(m³/h)として、最も近い値はどれか。なお、いずれも同一のガスを流すものとし、高低差は考慮しないものとする。
(1) 120 (2) 240 (3) 260 (4) 340 (5) 480 [m³/h]
▶ 解き方をみる(まず自分で立式してから!)
- 低圧の流量公式で同一ガスなら Q∝√(D⁵H/L)
- 基準: D=10cm・H=0.4kPa・L=200m で Q=120m³/h
- 対象: D=20cm(2倍)・H=0.1kPa(1/4)・L=400m(2倍)
- 比を取る: Q₂/Q₁=√((2⁵×1/4)÷2)=√(32×0.25÷2)=√4=2
- Q₂=120×2=240m³/h
✅ 答え: (2) 240m³/h
⚠ よくあるミス: 口径Dの5乗を忘れる(D⁵が最重要!口径2倍で32倍効く)/比の分母分子を逆にする
🗒️ 3分で復習(章末まとめ)
🎯 全節 一言まとめ
- 節1-1 供給方式の分類(低圧・中圧・高圧・中間圧): 低圧・中圧(A/B)・高圧・中間圧の4方式と適用条件の比較
- 節1-2 供給方式の選定(安定性・維持管理難易性・経済性): 安定性と経済性の2観点から供給方式を選定する考え方
- 節2-1 需要予測の3手法(ガス販売量実績・1戸当たりピーク・同時使用率): 供給計画の基礎となるガス需要量予測の3種類の推定方法と使用場面
- 節2-2 供給計画(導管計画3種類):基幹路線・導管網拡張・供給改善: 3種類の導管計画(基幹路線計画・導管網拡張計画・供給改善計画)の目的と手法
- 節2-3 ガスホルダーの機能と適正容量の計算(S×a=t/24×M+ΔH): ガスホルダーの3つの機能と適正容量計算式、公称容量と稼働容量の関係
- 節3-1 低圧導管の口径決定と圧力解析(流量公式・末端所要圧力・高所補正): 低圧導管流量公式Q=k√(1000HD⁵/SLg)の各変数の関係と計算・高所供給の圧力補正
- 節3-2 高・中圧導管の口径決定と圧力解析(流量公式・流量係数の選択): 高・中圧導管流量公式Q=k√((P₁²-P₂²)D⁵/SLg²)と低圧との根本的な違い
- 節3-3 導管網解析(静的解析・動的解析・負荷量の把握): 導管網解析の目的・作業手順・静的(定常)解析と動的(非定常)解析の使い分け
⚡ 全節 焦点ポイント
- 節1-1: 低圧2.5kPa程度・中間圧10〜20kPa・中圧B 0.1MPa以上0.3MPa未満・中圧A 0.3MPa以上1MPa未満の数値を正確に覚える。「供給量が多く距離が長い→中圧採用」「大量を遠距離→高圧採用」の使い分けも頻出。
- 節1-2: 供給方式の選定は「安定性+経済性」の2軸。安定性のための手段として「バックアップ化」「ループ連絡」「ガスホルダー適切配置」を覚える。
- 節2-1: 「どの手法をどの計画に使うか」の組み合わせを整理して覚える。基幹路線・ガスホルダー→実績、中低圧導管→1戸当たりか同時使用率、大口→個別調査。
- 節2-2: 「供給改善計画の3つの手段」→大口径導管への入替・ループ化・整圧器の設置、を必ずセットで覚える。安定供給確保のための施策(バックアップ化・ループ連絡・ガスホルダー適切配置)とも関連する。
- 節2-3: 「ガスホルダーを需要地近くに設置するとピーク時の送出量を減らせる→送出管口径を小さく設計できる」という因果関係の流れを整理して覚える。適正容量の式はS×a=t/24×M+ΔHを正確に覚える。
- 節3-1: 計算問題で「流量が2倍になった場合の圧力差は何倍か?」という逆算が頻出。Q∝√H なので Q²∝H → 流量2倍なら圧力差は4倍。高所補正の公式は代入計算問題も出る。数値(空気密度1.3、g=9.8)を正確に使うこと。
- 節3-2: 「中圧では起点圧力が上昇すると管内流量は変化する(低圧では変化しない)」という対比が最頻出の引っ掛け問題。流量係数の選択:中圧Bはどれでもよい、大口径高圧・中圧AはポリフローかオリファントのみOK、を整理する。
- 節3-3: 「導管網解析で広く用いられているのは静的(定常)解析=ハーディー・クロス法」は頻出。「動的解析は主に高圧導管の解析に使用」も覚えること。
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